The Alan Smithy Band

The band is on a mission.

Silence in Volvo

2012年05月16日 | ASB活動日誌
怒濤のドイツでのミッションを終え、翌日早朝にストックホルムへの移動を控えた私ひで氏は、夜のうちにドイツN市からハンブルグへ移動、空港近くのホテルに泊まった。空港近くと言っても歩いて行ける距離ではないので、シャトルバスに乗る必要がある。朝5時台のバスということで朝に弱い私ひで氏としてはやや緊張の夜となった。

ただミッション中というのはそういった緊張感もあってか、不思議と寝坊したことがない。
あの朝起きて時計を見て、声にならない息を吸いながらの「はーーー!」という叫びを上げて真っ青になる場面を想像するだけで、身の縮む思いがする。
特に飛行機での移動ということになるとなおさらだ。

起きたには起きたが、ややタイトな状況で、シャトルバスの時間の少し前にロビーに降りる。
バスはもう待機しており、私ひで氏以外にも数人の客がロビーに座っていた。
チェックアウトの精算をした時に、はたと気付いたがそういえば朝食が付いていたのだった。振り返るとロビーに用意されたビュッフェ。
外には出発寸前のバス。

もったいない、ということで外に持って行ける何かを。。。と思いとりあえずパンとヨーグルトを掴みとり、バスに乗り込んだ。

3日ぶりに戻ったハンブルグの空港にて無事チェックイン後ベンチに座って、掴んで来た朝食を食べようとしたが、ここでまずスプーンがない事に気付く。。。
いや、どうせホテルにはシルバーとしてのスプーンしかなく、プラスチック製のようなものはなかったのだから、あらかじめ気付いていたとしてもどうしようもなかった。。。と自分に言い聞かせる。見渡しても早朝すぎて周りの店も全く開いていない。
コンビニで店員がスプーン付け忘れていたらすんごい腹立つけど、自分で忘れるのもたいがいよのう。。。と思いながら、まあとりあえずと思いヨーグルトをオープンしてみると今度はその色に絶句。



慌てて蓋をおろして確かめると味はヘーゼルナッツ。。。ぱっと見、完全にパインをイメージして掴んでいたのでこの衝撃は立ち直れないほど大きかった。
そういう味あるんやね。。。へー。



そしてパンをほお張りつつ時折このヘーゼルナッツヨーグルトを飲み物のように直接口に流し込む動作を、横に座っていた老婦人に嫌悪の表情で見られながら機械的に繰り返した。見られると余計燃えて、最後はカップをくわえて両手をだらりと下げて上を向いてフィニッシュ。


そんな事をしている間にあっという間に搭乗時間がやってきて、
いよいよストックホルムへと飛んだ。約2時間のフライトはそれこそ一瞬のように感じられた。

到着ゲートを出たところにはたくさんの人が立っている。その中の多くは人や組織の名前を書いたサインを持っている。
すると、いた。「Hide Kashimoto」と書いたサインを持っている人が。ヒデユキ、なので微妙に違うがまあそれはいい。彼はタクシー運転手で、やはり北欧の人ってデカイなあ、と思わせる体躯で、愛想良く迎えてくれた。

早速停めてあったタクシーに乗り込む。車はやはりボルボであることに頷く。

ストックホルムは初めてか、と彼。

私は あ、そうだと思い「来る時にドラゴンタトゥーの女という映画を機内で見たが、あれを見て想像していたのとは全然違う」と言うと、
あれは同じスウェーデンでもずっと北の方が舞台になっている、と言い、そしてその映画を見た事をやけに喜んでくれた。

それがきっかけなのかどうか、彼はとても饒舌になり、色々な事を話し始めた。
そして突然、こんなことを言い出した。「今から言う日本語の意味を教えてくれないか」。と。

まあ、それなりに出くわす質問の一つである。

こういう聞かれ方をするとやや身構えるが、だいたいこの地でヒットした映画やドラマに出てくる日本語とかそういった類いのものが想像される。
「おしん」とはどういう意味だとか、そういうヤツだ。

ああ、もちろん、どうぞ。
と答えると、高速を運転中にも関わらず彼はためらいなく半身をこちらに、ゆっくりと向けた。
そしてはっきりとこういったのだ。

「いきじめ」

瞬間、時が止まったかのような感覚に襲われ、車内の静寂に圧倒された。
横に細長いスタイルのサングラスとも眼鏡とも付かないレンズの奥にある彼の鋭い眼光はこちらを突き刺したままだ。


いや、早く前向いて。


つづく。



















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