夢がうれしそうに言うのを聞いて六小も言いました。
「へぇー、そうなんだ。わかったんだ。よかったね、夢ちゃん。」
「うん。」
六小は、夢が6年の時、自分のチャイムをほめてくれたのを思い出し、夢に
言いました。
「夢ちゃん、昔、わたしのチャイムのことを、いいってほめてくれたよね。」
「うん。」
「わたし、自分では、いいかどうかよくわからなかったんだけど、夢ちゃんにほめて
もらえてすごくうれしかった。そのことだけはよく覚えてる。」
夢がにこっと笑って、
「うん、あの時の六小さんたら、ふーん、ふーんとしか言わなくて、わたし、
おかしかった。」
と言うと、六小は、
「うん、だってわからなかったんだもの。でも、ほんとよかった。夢ちゃんの長い間の
疑問がわかって。」
と、自分の疑問が解決したかのように喜んで言いました。
「うん、ありがとう。」
「今日は、もう遅くなっちゃったね。」
六小が言うと、
「そうね。ごめんね、六小さん。あまり、お話できなかったね。」
と、夢は、資料を見るのに夢中になって、六小と話せなかったことを謝りました。
「う・ん、まあ、いいよ、今日は。そのかわり、また来てくれる?夢ちゃん。」
「うん、もちろん。」
「その時は、いっぱいお話しようね。」
「うん。」
夢と六小は、それからしばらく、お互いに見つめあっていました。やがて、夢は
「またね。」というように視線をそらし、長年の疑問がとけた思いからか、晴れ晴れと
した表情で六小から離れていきました。六小は、夢のその姿にひときわ大きな光を
放って見送りながら、「また来てね。絶対・・・来てね。」と、小さく呟いていました。