風の向こうに  

前半・子供時代を思い出して、ファンタジィー童話を書いています。
後半・日本が危ないと知り、やれることがあればと・・・。

夢と六小のティータイム

2010-04-30 14:13:23 | 夢の部屋

夢です。続きの物語の前に、ちょっとおつきあいください。

夢「ねえねえ、六小さん。六小さんと四小さんって、同じ精霊なのに、全然性格ってか

  何か違うよね。話し方も態度も。何で?」

六「何よ、それ。違っちゃおかしい?精霊ったっていろいろいるの。わたしと四小の

  姉さんが違ってても当たり前、むしろ、違わない方がおかしいの。そんなことも

  わからないで、よくわたしたちと通じることができるわね。」

夢「何よ、いいじゃないよ。わからないから聞いただけなのに。ほんっと、四小さんと

  全然ちがうんだから。四小さんだったらやさしく・・・・・」

六「夢ちゃん!もう!怒るよ、ほんとに。昔っから変わらないんだから、わたしと

  四小さんを比べるのは。いいかげんにしてよね、もう。」

夢「ふ・んだ。六小さん、わたしに四小さんの方が好きって言われるのが

  いやなんでしょ。そうなんでしょ?はっきり言いなさいよ。」

六「ウッ・・・・・・ふぇ~ん、夢ちゃんのいじわる~。四小の姉さんに言いつけてやる~。」

かくして、夢と六小、二人のバトルは夢の勝利に終わるのでした。おそまつ・・・・・・・

 六小心の声 「ううっ、今度こそ絶対勝ってやる。見てろ、夢!」

 

なぁ~んてこと言ってるけどね。六小さん、夢は、本当はあなたのことが

だぁ~い好きなんです。でも、四小さんもだぁ~い好きなの。夢の心は複雑です。


風の向こうに(第三部)六小編 其の拾八

2010-04-29 23:01:15 | 大人の童話

台の上に置いたアルバムには、開校・三周年記念式典、一周年・三周年記念

運動会等、当時のいろいろな学校の様子を写した写真がありました。その中には、

夢が見覚えのあるものもあります。それは、『開校記念誌』に載っている各学年

各クラスの写真でした。撮ったのは、そう、確か、新校舎に移って間もない

昭和四十一年の九月末頃のことだったと思います。夢は、「すみません。ちょっと

写真を撮らせて下さい。」と言って教室に来た人が、教室の後ろから何枚か写真を

撮っていったことを覚えています。当時は、『何、撮ってるんだろう。』ぐらいにしか

思わなかったのですが、今になってその訳がわかりました。夢はアルバムの写真を

見て、『ああ、あの時の、開校記念誌に載ってるやつだ。』と、なぜかうれしくなり

知らないうちに顔が微笑んでいました。資料室には、他にも懐かしいものが多く

ありました。当時使っていた教科書・校歌制定の時に児童ももらった校歌の楽譜・

各周年記念誌・当時の学校周囲地域の写真等です。夢が、懐かしさからそれらを

夢中になって見ていると、急に六小の大きな声がしました。

「何、ずっと見てんのよ。さっさと見ちゃってよ。わたしと話す時間がなくなるじゃない。」

六小はどうやら、夢がいつまでも自分をほったらかしにして、一人で昔を懐かしんで

いることに不満のようです。夢は、急に大きな声で話しかけてくる六小に、

『相変わらずだな。』と思いながら、

「はいはい、わかったわよ。今、行くから。」

と言って、六小の言葉を軽く受け流していました。


風の向こうに(第三部)六小編 其の拾七

2010-04-28 23:21:33 | 大人の童話

六小としばらく懐かしい昔話をした夢は、いったん六小と別れて、資料室に行くため

来校者用の昇降口から校舎の中へ入っていきました。校舎内は、夢がいた頃と

さほど変わっていません。変わった所といえば、耐震補強がされたこと、児童数の

減少で空き教室があることぐらいでしょうか。そうそう、給食当番の時に、扉を

開け閉めして動かした給食用エレベーターは、まだあるのかどうか確認

できませんでした。夢は副校長先生に、資料室のある三階に案内されました。

階段も、おどり場の掲示板も当時のままでした。階段の壁に付けられた手すりは

変わっていましたが。資料室前の廊下で、夢は、遠くに見える廊下の突き当たりを、

眼を凝らしてじっと見つめました。そう、4年生の時にいじめにあって、一人泣いて

いたつらい思い出の場所です。先生の声に、はっと我にかえった夢は、先生の後に

ついて室の中に入りました。入ると、夢はまっ先に、「開校の頃」と題されたボードに

貼ってある写真の方へ歩み寄りました。そこには、夢が子どもの頃実際に見た

校舎と時計台・開校記念に全校で描いた人文字を撮った、六小上空からの

航空写真・四小校庭で行われたお別れ会など、懐かしい写真が何枚か飾って

ありました。その他には、当時、来校者用昇降口に飾ってあった『第六小学校

完成予想図』・開校記念品として児童ももらった手拭い等、夢にとっては、思い出の

深いものが多く展示されています。あ、そうそう、夢の頃よりちょっと小さくなって

がっかりした校門、「校名表札」とともに当時の門柱の写真も展示されていました。

 

 

 

 

 

 

 


風の向こうに(第三部)六小編 其の拾六

2010-04-26 21:57:52 | 大人の童話

少しして、六小は改めて言いました。

「おかえり、夢ちゃん。会えてうれしい。」

夢も言いました。

「ただいま、六小さん。わたしも。」

「どうしてた?」

「うん、いろいろあった。」

「そっか、わたしも。でも、会えて本当によかった。うれしい。」

そして次の瞬間、六小は、今まで大きく輝いていた光を小さくして、下を向いて

ちょっと寂しそうに夢にたずねました。

「わたし、変わっちゃったでしょ?」

夢が、「そんなことないよ。」というように微笑みながら答えます。

「うん。でも、六小さんは六小さんでしょ。」

その言葉を聞いた六小はうれしかったのか、いったん小さくした光を、また

パァーッと大きくして、

「本当?本当にそう思ってくれる?」

と、何回も夢に訊いてきました。

「うん、本当よ。」

六小は、ほっとしたように言いました。

「ああ、よかった。夢ちゃんに、そう言ってもらえて。本当は、昔のまんまの姿で

会いたかったんだけどさ。」

「いいよ、もう。いろいろあったんでしょ。」

「う・ん。」

「六小さんが、こうして元気でいてくれるだけでいい。」

夢は、昔のままで会えなかった、と落ち込む六小を元気づけようと、笑顔で六小に

言いました。

「クスン・・・・・ありがとう。」

六小も、夢に言われて少し元気になったようです。最後は、笑顔になりました。

夢と六小の話は、いつまでもつきません。

 


風の向こうに(第三部)六小編 其の拾五

2010-04-25 15:00:56 | 大人の童話

「何しに来たの?今頃。会いに来てねって言ったでしょ。夢ちゃんも、会いに

来るって言ってたのに。今頃になって、やっと会いに来るなんて。36年もたってから

来るなんて。今まで何やってたのよ。」

六小は、夢が急に来て驚いたのとうれしいのとで、頭が混乱していました。本当は

すごくうれしいのに、夢に向かって半分怒ったような顔になっています。それだけ、

夢が会いに来てくれるのを、首をながくして待っていたのです。夢は微笑みながら

六小に優しく言いました。

「待たせてごめんね。」

「も・う、夢ちゃんのバカ!いつまで待たせんのよ。わたし、ずっと・・・ずっと・・・

待ってたんだから、も・・・う。・・・・ウッ・・・・ウッ。」

いつのまにか、六小は泣き声になっています。夢が、クスッと笑って言いました。

「フフッ・・・六小さんたら、あの時から泣き虫だね。」

「だって・・・・だって・・・・いいじゃないの。ウワ~~ン・・・・・」

と、突然六小が言いました。

「夢ちゃん、にらめっこしよう。夢ちゃんが勝ったら、わたしに会いに来るのが

こんなに遅くなったこと、許してあげる。」

「え、また。」

「うん。」

六小は、にっと笑いました。夢は思い出していました。卒業まであと二ヶ月という

あの日、六小に「卒業文集に四小さんのことを書いていい?」と聞いた時、

「にらめっこで、夢ちゃんが勝ったら許してあげる。」と言われたことを。夢は

答えました。

「よし、いいよ。負けないから、っていうか、負けてもいいけど。」

「何よ、それ。」

「ウフフフ・・・・・アハハハ・・・・・」

二人は、いっしょになって笑いだしてしまいました。

「あ~あ、にらめっこする前に笑っちゃったね。」

六小が笑いながら言います。

「うん、そうね。」

夢が返します。

「まっ、いいか。」

「うん、まっ、いいんじゃない。」

「何、それ。」

「ウフフフ、アハハハ・・・・・」

二人は、またいっしょに笑っていました。