現役世界チャンピオン・長谷川穂積が引退を発表しました。
9月に感動的な試合で世界3階級制覇を達成。
我々ファンに、
震えるほどの感動を与えた試合を最後の試合として記憶に残し、
静かにリングを去っていくことを決断しました。
稀代の世界チャンプは引退する理由を、こう語りました。
「引退理由は自分に証明することがなくなった。もう一つは心と体を一致させて世界戦をして世界王者になる目標を達成し、戦う理由もなくなった。前回以上の気持ちを作るのが難しくなった。自分の思っていた以上の足跡を残せたボクシング人生だった」
見事な、
本当に見事すぎる引退でした。
私たちボクシングファンをその強さで熱狂の渦に巻き込み、
そして壮絶なKO負けで最初に世界チャンプから陥落した後は、
ボクサーとしての、そして男としての生きざまを見せ続けてくれました。
2度目の陥落後、
2014年にキコ・マルティネスにKOで敗れた王座奪回がならなかった時は、
本当にこれで最後だと思いましたが、
そこから「まだ燃え尽きていない」と這い上がり、
今年9月の、あの感動のKO勝利での3階級制覇に結び付けました。
WBCバンタム級で10度の防衛を果たしている間は、
がんでの闘病の母親と一緒に戦う姿を見せてくれましたし、
2階級制覇を達成したあのブルゴス戦、
そして壮絶なKOで散ったゴンザレス戦も忘れることはできません。
ワタシが長谷川を知ったのは、
2005年の西武キャンプに長谷川が参加した時以来。
もともとボクシングファンであったので名前は知っていましたが、
長谷川を意識したのはこの時以来です。
確か同い年(?)の松坂とその時以来親交を深くして、
よくコラボしていたのを思い出します。
その頃はかなりヘビーな西武ファンだったワタシ。
長谷川穂積という名前は、
深く脳裏に刻み込まれました。
そしてあの”レジェンド王者”ウィラポンを破ったのは衝撃でした。
ウィラポンと言えば、
辰吉丈一郎を衝撃のKOで破ったシーンばかりが思い出され、
「とても勝てないだろう」
と思っていたので、本当にびっくりしました。
その頃の長谷川と言えば、
「ボクサータイプ」と言えるアウトボクシングを得意とするボクサーという評価でした。
強打者というイメージはあまりなかったのですが、
ウィラポンとの試合を見て「こんなにうまいボクサーだったんだ」と本当に感心しました。
そして「彼は長期に防衛するんじゃないか?」と思った通り、
長谷川は防衛を重ねるごとにその強さを盤石なものにしていって、
「日本が誇るエースボクサー」
として防衛を重ねてくれました。
結局10度もの防衛記録を達成するのですが、
何といっても衝撃的だったのはウィラポンとの再選となった2度目の防衛戦。
衝撃のKOシーンは、
『長谷川は本当にものすごい!!』
ということを満天下に知らしめました。
このKOシーンを見て以来、
ワタシはもう長谷川の虜。
6・7・8・9・10度目の防衛戦は、
もう世界戦なのに「まったく相手にならない」戦いで序盤のKO勝ちを続け、
本当に強さを盤石なものにしていました。
しかし「向かうところ敵なし」で迎えた11度目の防衛戦。
これはWBO王者、強打のモンティエルを迎えての”統一王座戦”。
異様な熱気をはらんだこの武道館での戦い、
誰もが息を飲んで見守る『真剣での斬り合い』のような殺気立った中、
長谷川は4R終了間際、
モンティエルの猛攻を受けてまさかのKO負け。
その瞬間、
武道館はまさかのその光景を受け入れることができない大観衆の中、
まさに「水を打った」ようなシーンとした空気の中で、
わずか数人のモンティエル関係者の雄たけびがむなしく響いていました。
もうその試合から6年半もたつのですが、
今でもその瞬間の会場の”空気”だけは、
はっきりと思い浮かべることができます。
それぐらい衝撃的なシーンでした。
日本ボクシング界にとって、
こんな衝撃的なシーンは、
不滅のカンムリワシ・具志堅用高が14度目の防衛戦で世界タイトルを逃しKO負けしたシーン以来だったのではないでしょうか。
その陥落から半年後。
2階級階級を上げて臨んだWBC世界フェザー級王座決定戦でブルゴスと対戦した長谷川は、
2階級上げたとは思えない、無謀とも思えるような打ち合いに出て、
はた目から見ても「体格が全然違う(大きい)」ブルゴスに打ち勝って2階級制覇を達成。
しかしながら、
そんな戦い方に大きなリスクを感じていたファンの心配が現実になり、
2011年4月の初防衛戦で、
ジョニー・ゴンザレスの強打に沈み陥落。
『これで長谷川は引退だろう』
と多くのファンは感じたものでした。
2012年にノンタイトル戦で長谷川の試合を観戦したワタシは、
はっきりと彼のボクシングがチャンピオンの時とは違うという思いを抱き、
『やっぱりここで引退を決断してほしい』
という思いを抱いたものでした。
しかし『まだまだ自分の中にくすぶっているものがある』ということで現役を続行した長谷川。
その後は自分の本拠地である関西を主戦場に試合を行っていたため、
ワタシはこれ以降観戦の機会には恵まれませんでしたが、
映像で常に自分の中でのスーパーチャンプ・長谷川の試合を、
ハラハラしながら見ていました。
10度の防衛を続けているときには”ワクワク”しながら見ていた長谷川の試合、
壮烈なKO負けを何試合か見てしまったため、
いつも『今日はKO負けしないでほしい。そして、間違っても壊れないでくれよ』と祈るような気持ちで、
ある時はリング上の試合を正視できないような気分の中での観戦で、
長谷川の試合はワタシにとっても『苦しい』という感覚で見る試合となっていました。
スーパーバンタム級に転向後、
2014年の4月に挑んだ世界タイトルマッチ、キコ・マルティネス戦は、
本当に苦しく、衝撃的な経験でした。
KO負けしたラウンドは、
あまりの衝撃的な被弾に『もうやめてくれ』と真剣に祈ったほど、
苦しい体験でした。
『さすがにもう、引退を決断してくれるだろう』
という”期待”もむなしく、
長谷川は現役続行を決断。
しかし、
『もう世界戦のチャンスは巡ってこないだろう』
と思っていました。
マスコミの扱いも、
ある意味「あの人は今」といったもの。
時代は、内山、山中、井上、八重樫らのチャンプに移っていました。
しかし『最後に人花を咲かせる』
『俺は強いんだということを証明したる』
という長谷川の強い意志が、
最後の人花を咲かせてくれることになるのです。
『負けたら終わり(引退)』
の2015年に行われた”世界前哨戦”の2試合、
いずれも『長谷川圧倒的不利』の下馬評でしたが、
そのサバイバル戦に長谷川は連勝。
両試合とも、
『リスクをとっても強打で粉砕』
という戦い方から、
『アウトボクシングを中心に、ポイントを奪う』戦い方に回帰。
ファンはこの戦い方の変化に若干の期待感を抱きながらも、
『長谷川が世界チャンピオンに返り咲くことはまずないだろう』というのがその評価。
そして、
『本当に最後の最後』
と言われた世界挑戦を迎えました。
チャンピオン、ウーゴ・ルイスを迎えたWBC世界スーパーバンタム級タイトルマッチは、
壮絶な打ち合いとなり、
長谷川は『伝説のラウンド』となった第9ラウンドの壮絶な打ち合いを制してTKO勝ち。
これほどすさまじい打ち合いはみたことがないというほどのすごいラウンドでした。
長谷川は3階級制覇を達成。
そしてこの試合を最後に、
現役を引退することを発表しました。
先のプロ野球シーズンで黒田が引退。
その引き際の鮮やかさや男気が賞賛されましたが、
この長谷川の引退も、
黒田に匹敵するほどの『男の引き際』という感じですね。
長谷川チャンプ!!!
本当にありがとう!!
そしてお疲れさま。
彼の戦いすべてが、
金色の枠をまとって額に入ったような、
特別な存在となりました。
わがコレクションにある彼の防衛戦の数々、
ゆっくりとまた鑑賞してみようかなあ・・・・なんて思っています。
見事な引き際です。
ワタシはこの引退に際して、
『もうちょっと』というような『もったいない感』は一切ありません。
やり切った男の、見事な引き際
それしかありません。
日本の歴史に残る名ボクサーの、見事なボクシング人生に、乾杯!
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