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16年目突入。ビッグイベントに心躍らせながら、草の根のスポーツの面白さにも目覚めている今日この頃です。

第101回全国高校野球選手権大会を振り返る

2019年08月26日 | 高校野球

今年も甲子園は盛り上がりましたね。
履正社の悲願の初優勝で幕を下ろした今年の大会を、
振り返ってみたいと思います。

今年は昨年の100回大会のポスト年となり、
果たして盛り上がりがどうなるのか、
ワタシは興味津々でした。

昨年は大阪桐蔭という絶対王者が存在して春夏連覇に挑むという、
大会前から話題性が大いにあったのに加え、
大会の途中からは「現れた大ヒーロー」金足農業と吉田投手が話題をさらいました。

どこを切っても、
最初から最後まで「面白すぎる大会」の要素が満載の、
どのファンの胸にも残る素晴らしい大会となりました。

そして今年。
予選段階で話題をさらったのは、
大船渡高校の佐々木投手。
春の段階で日本最速に迫る163キロという球速を叩き出したこのピッチャーに、
マスコミは群がりました。

しかし佐々木投手と大船渡の監督は、
マスコミやファンが望むように動くことはありませんでした。
将来に禍根を残す連投、熱投の連続は回避され、
その結果佐々木投手擁する大船渡は、
予選で敗れ去り甲子園に顔を見せることはありませんでした。
そのことが内外に大いなる議論を巻き起こし、
騒がしいままに今年の甲子園は開幕した夏となりました。


1.履正社見事な初優勝

履正社の優勝は見事。いいチームを作り上げました。岡田監督が「これまでのチームの中で、このチームの力が突出していたわけではない」と言う通り、これまでの履正社のチームで最強だったとは言えないと、ワタシも思います。16年の寺島を擁した投打に傑出したチームや、翌年選抜で決勝に進出した強打のチームなど、過去に大型チームがいくつもあり、今年のチームがその当時より投打に上回っていたわけではなく、その証拠に秋春の近畿大会や選抜では結果を残すことはできませんでした。しかしこの夏、このチームは本当に強かった。そして欲しかった結果を見事に残しました。その要因はなんでしょうか。ワタシが思うに、今年の履正社は、これまで掴むことができなかった、「時の勢い」をチームとして掴むことができたことが大きかったのではと思います。どんなに戦力が充実していても、それだけで全国の頂点まで駆け上がることはできない群雄割拠な厳しい戦いこそが高校野球の本質。力を持ったチームが運や勢い、まさに「時が彼らを後押しした」状態になって初めて、栄冠をつかめるのだと思います。
今年の履正社、まずはライバルでありどうしても越えられない壁であった大阪桐蔭が、春夏連覇の翌年ということで今年のチームの各選手に経験値の蓄積がなかったこと、そしてそれでも強かった大阪桐蔭が、府大会で履正社と激突する前に敗れ去ったという、ここ数年ではあり得なかったことが現実に起こったことで府大会を勝ち抜けたということ、大きかったと思います。
そして甲子園でも、次から次に好投手との対戦があって息つく暇もありませんでしたが、その好投手たちを力で上回り自信を得ると、あとは決勝まで無人の野をいくが如くの快進撃を見せました。途中、近江、智辯和歌山などの、「当たったら嫌だな」という力を持った近畿勢との対戦を避けて上位まで勝ち上がれたのはラッキーでした。
そして準決勝では明石商・中森、決勝では星稜・奥川と大会を代表する好投手を攻略。しかし両投手ともに、大会終盤になって疲れから100%の力を出せた試合ではなかったことも幸運でした。 いずれの投手との対戦も、力でねじ伏せた感じですが、履正社のチームの状態がわずかに両投手を上回っていたと思います。いずれにしても、見事に悲願を達成しました。
長年の悲願を達成する時って、こういうものかもしれませんね。
思えば西谷監督の大阪桐蔭も、中村、西岡、辻内・平田、そして中田と本当に惚れ惚れするような大型チームの時は栄冠に届かず、やや小粒と言われた08年のチームが初優勝でしたからね。
しかし悲願の扉が一度開くと、その後の大阪桐蔭の快進撃を見るまでもなく、それからは「王国」を築いていけるチャンスが広がっていくと思います。履正社の本当のスタートは、ここからであるような気がしています。これからの彼らの戦いに、これまで以上に大きな期待を寄せています。


2.今年の「心に残る試合」NO1は、星稜vs智辯和歌山

今年甲子園で行われた48試合の中で、なんといっても心に残ったのは、三回戦の星稜vs智辯和歌山の激闘でしょう。両チームの素晴らしい戦いには、本当に心からの拍手を送りました。そしてこの試合で最も心に残っているのは、やはり星稜・奥川投手の超絶すぎるピッチングです。何度も言いますが、単独の試合ということで見た場合、この試合の奥川投手のピッチングは、これまでの高校野球の数多の好投手と比較しても、最高だったと思います。あれだけの投球は、プロでもなかなかお目にかかれないほどの素晴らしさで、試合中ずっとため息が出っぱなしでした。強打の智辯和歌山は、今年のチームに限って言えば、投打にバランス感が抜群で、この星稜戦を越えることができれば優勝に一番近いチームだと思っていました。(実は今でもそう思っています。)その智辯和歌山に対して、奥川の奮闘ぶり、内外角に寸分の狂いもなく配される150キロを超えた速球と鋭い曲がりのスライダー、そしてこの日解禁したというスプリットも効果的でした。さらに彼は、ピンチになるとギアを上げて「相手を寄せ付けない」という投球が出来て、更にマウンドを降りたフィールディングもほぼ完璧。あの智辯和歌山があそこまで抑えられる投球は、本当にどこのチームも攻略できないだろうなぁという、素晴らしいものでした。あの試合が、心技体とも最高潮の時だったのでしょうね。智辯和歌山にとっては、〝その日〟の奥川投手に当たってしまったというのが不運というしかありませんでした。頂点に立つために必要な運がなかったとしか言いようがなかったですが、本当に今年の智辯和歌山は、もう1つの大会の華だったことは間違いありません。しのぎ合いの中、最後はサヨナラ3ランでの決着。あれだけの激闘の決着は、一瞬でした。そしてその一瞬こそが、いつまでも心に残るものになりました。

 

3.投手複数制はすでに勝ち残るための必須の要素。

近年言われ続けている投手への投球制限、並びに休養の問題。今年は佐々木投手擁する大船渡高校がこのことに一石を投じてくれましたが、いずれにしてもこの夏の過酷な条件の中の試合で、これまでのように「エースで心中」は全く成り立たないということが明らかになってきています。やはり勝つための要素は、「先発できる投手が最低2枚」必要で、その他にスクランブルで登板できる投手を1枚、ないしは2枚用意できるぐらいの投手層を持ったチームでないと、勝ち上がっていくことはできません。しかしながら、1試合での投球制限は、非常に難しい問題をはらんでいるといわざるを得ません。上で触れた星稜vs智辯和歌山戦で、奥川投手を延長に入ってから降ろす決断ができる指揮官は、ほとんどいないのではないでしょうか。「どんな時でも、勝利を目指す」ということが前提の「スポーツの勝負」において、試合途中で制限がかかるということの難しさは、本当に大きいと思います。このことについては、思うところもあるので、また別の記事にて。いずれにしても、大会を勝ち抜いていくうえでは、地方予選で5~8試合、甲子園では5~6試合を行わなければなりません。昨年の吉田君のような例は稀有で、これからはやはり、複数の投手を作る、要するに高校野球でも、チームは「投手」ではなく「投手陣」を作らなければ、勝ち上がっていくということはないということでしょうね、これからは。投手に限らず、全国で戦うことを目標にするチームは、ベンチ入りの18人をすべて使って戦う「総合力の野球」こそが求められてくるのではと思います。疲労ということでは、投手だけがとりあげられますが、決してそうではなく、地方大会でも甲子園でも、野手が疲れから全くバットが振れない状態になるということも、まま見受けられます。1試合だけなら目立たない「選手層」も、勝ち進むにしたがってその違いがチームごとに顕著になってきます。勝ち進むということだけにフォーカスすると、今や高校野球も「汗と涙のがんばり」が主体というよりも、チームマネジメントこそが大切になってくる。。。。。そんな時代のような気がしますね。

4.今や地域性なんて、話題にするのもバカバカしい

今年もいろいろな地域の学校の活躍が、甲子園を賑わわせました。星稜は決勝で惜しくも敗れましたが、北陸勢として初めての優勝に大手をかけましたし、相変わらず東北勢の活躍も目立ちました。今や全国津々浦々、野球は地域性には関係なく、学童の時代からチームが作られて活動しています。学童野球の世界なんか見ても、まったくどこの地域のチームが活躍するのか、予測することも難しいぐらいレベルは均一化してきているように感じます。星稜にしても、8強まで勝ち進んだ仙台育英にしても、系列中学の軟式野球部を強化し、それを有機的に高校野球部に結び付けていくことで、見事な結果を出しています。その子供たちのほとんどは、地元出身の選手ばかりで、一つの新たな高校野球強化の流れということも言えるでしょう。高知中学や大分の明豊、大分ら、その他でもこのような強化を行っているチームが多く、注目してもいい流れですね。一方でやはり好選手を全国レベルで集めてチーム作りをしている学校も多く、いろいろな強化の方法を模索している学校が多いですね。今やだれも口にしないのが、地域性によるレベルの違いといったところ。今やどこの地域のチームでも、臆することなく強豪に当たっていきますので、見ていてすがすがしい試合も多いです。今大会でも、強化がなかなか難しいといわれる北北海道代表の旭川大は、準優勝した星稜に対して0-1と最後まで食い下がる見事な戦いぶりを見せてくれました。これからもどんどん、その傾向は強まっていくでしょうね。今や東北勢は、抽選会で当たると相手チームにいや~な顔をされることばかりですもんね。それだけ実力が上がっているということです。


5.懐かしい「伝統校」がたくさん顔をそろえてくれて、うれしい大会に。

今年の甲子園は、オールドファンにとってもうれしい大会となりました。昨年は金足農の戦いぶりが本当にうれしく思いながら見ていたのですが、今年はたくさんの伝統のユニフォームが甲子園に勢ぞろいして、開会式を見ているだけで何か感慨深いものがありました。広島商、熊本工、米子東、高松商、静岡、習志野、中京学院大中京(のCHUKYOのユニ)らがずらっと勢ぞろいした姿は、圧巻でした。各校ともに、伝統を残しながらもそこにパワーとかスピードを肉付けして、いい戦いをしてくれたのもうれしかった。上に上げた各伝統校、一つとして「何もできず」という戦い方はなく、甲子園に新たな足跡を残していってくれました。個人的には、熊本工の戦いぶりには、グッと来てしまいました。勝った試合も負けた試合も、深く心に残っています。一方で今年は、初出場校が非常に少なく、わずか3校にとどまりました。しかしながら、その3校はいずれも地域で頑張る公立のチームで、愛知の誉や長野の飯山は、県予選が始まる前は全くといって良いほど注目されていなかった学校。まさに『無印良品』となって、この大舞台までコマを進めてきたということで、その奮闘にはあっぱれです。こういう新しい学校と伝統を持った学校、これらが混然一体となるというのも、甲子園の楽しさではありますね。いずれの学校も、ここがまた新たなスタート地点。頑張ってまた、再会したいですね。


6.そして大会MVPは。。。。

勝手に、極私的に選んだ今大会の総括です。

大会MVP  チーム; 履正社
      個人 ; 奥川恭伸(星稜)

最高試合  星稜 vs 智辯和歌山

最高の場面 ;
星稜・福本が智辯和歌山戦で放ったサヨナラホームラン

敢闘賞 ; 中京学院大中京・小田選手

ベストパフォーマンス; 明石商・狭間監督のガッツポーズとインタビュー


来年は直前まで行われる東京オリンピックの影響を色濃く受けそうな、この夏の甲子園。
日程もいつもとは変わっていて、
なかなかいつもの様な大会にはならないかもしれません。

しかしそれは、
あくまでも外で見ている人間の言う言葉。
来年高校3年生になる多くの高校球児にとっては、
「一生に一度の、オレ達の大会」
であることは間違いありません。

彼らにとっては、
来年の夏こそ「一生に一度の、目指すべき夏」であり、
そのために今も暑い中、
自分を鍛えに鍛えているところだと思います。
来るべき来年の夏こそ、
俺たちも履正社に、奥川になるために。。。。。。。。。

高校野球オヤジにとっては、
高校野球の因縁とかジンクス、
あるいは「あの時の再会」など、
高校野球をタテに並べて、
日本史のように見るのが無上の楽しみです。
毎年毎年、
そこに新たな発見や新たなコーフンがたくさんあるからです。

しかしやっている高校球児にとって、
「この夏」も「あの夏」も、
自分たちにとっては「一度しかない特別な夏」。
その夏に向かって、
どうぞ頑張ってほしい、輝いてほしい。。。。。。
そう念願せざるを得ません。

18歳のキミにはまだわからないかもしれないけど、
テレビにだって雑誌にだって、
30代、40代、50代、60代、70代・・・・・
み~んなが「自分だけのあの暑かった夏」をいつまでも語っていますよ。

そんなものなんだと思います、
日本人にとっての高校野球、甲子園というものは。

ワタシはこの高校野球を、
『スポーツ文化の究極』だと思っていて、
この夏の甲子園大会を『世界最高のトーナメント大会』だと思っています。
そんな高校野球に幸あれ。

というところで、
今大会のお開きにしたいと思います。


あ~今年も、
本当によかった~




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2 コメント

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Unknown (名乗る程ではありませぬ)
2019-09-05 14:50:01
はじめまして。何年か前のブログを拝読させて頂き以後気になってました。あなた様が、ファンでもある京都の某監督の学校も今夏はベスト4まで勝ち進みました。
第102回楽しみにお待ち下さい!
突然失礼いたしました。
返信する
今後にますます期待です。 (まめちち)
2019-09-05 15:08:38
名乗る程ではありませぬ様、コメントありがとうございます。
そうですね、京都共栄高校、素晴らしい快進撃で4強まで進出しましたね。強豪ひしめく京都大会で、しっかりとその存在感をアピールしてくれました。
ワタシもこの快進撃が気になって、たびたび動画配信サービスでチェックしていました。いい時代になったものです。神前監督の采配を振るう姿、本当に変わらず若々しく、今後に大いに期待が持てるとの意を強くしました。
今大会は、公立校の復活が話題となりました。明石商の素晴らしい戦いぶりだけではなく、広島商や高松商、熊本工などの名門の復活も、ファンとしては嬉しいものです。神前監督の甲子園での雄姿が見られるのも、もう少しの辛抱だと思っています。
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