思いつくまま、気の向くままの連載記事、
今年もめでたく最終回までたどり着くことができました。
最後はもちろん『21世紀枠校編』です。
甲子園出場はなかなか届かないものの、
野球、勉強、そして地域活動などの取り組みのすぐれた学校を選抜する21世紀枠。
これまで甲子園にはほとんど縁のなかった学校ですから、
その学校の地元でもない限り、
なかなか思い浮かぶこともないのが現状。
それでも「今年のスペシャル校」として甲子園にまさに「招待」された学校として、
『まだ見ぬ学校たち』の戦いぶりは毎年の楽しみでもあります。
≪選抜出場校 思い出編9≫
21世紀枠 石岡一(関東・茨城) 初出場
夏出場なし
21世紀枠のまず1校目は茨城の石岡一。県立の中堅校として、常に県8強を狙う戦いを続けてきて、近年はその壁を突破することを多くなってきている注目の学校です。2016年、17年は連続で春の関東大会にも進出。常総学院、霞ケ浦、藤代、明秀日立、土浦日大などの県内強豪校のスキを狙って甲子園を虎視眈々と狙っていましたが、ついに21世紀枠で聖地への切符をつかみ取りました。関東の学校は、もともとの出場枠が多かったこともあり21世紀枠とはあまり縁がありませんでしたが、導入6年目の06年に真岡工が初めてその栄冠をつかみ取りました。そしてそれから3年連続、都留、安房が選ばれ、両校は甲子園でも印象に残る戦いを見せてくれました。特に安房は初戦を突破。地元を大いに沸かせてくれたものです。14年には東京の小山台が選ばれましたが、これを除く関東勢としては19年目でようやく4校目の進出。3回の北海道や11回選出の東北、9回の四国などと比べて、正直「少ないなあ」と思わないでもありません。しかしながら、選考過程や基準をつまびらかにしない選考委員会ですが、よく言われているのは「その高野連がいかにこの21世紀枠に情熱をもってプレゼンするか」が選出に大きな影響を及ぼすという事です。そういえば最初の8年間は1校も選ばれなかった近畿が、その後情熱を持ったのかどうか、何と11年間で7校も選ばれることになったという事からもわかります。関東の高野連、特に言われるのは神奈川の高野連は、この21世紀枠の選出にまったく興味がないのだそう。数年前「21世紀枠ピッタリ」の県相模原が秋季大会で快進撃を見せたのに、県の推薦校にすら選ばなかったという事もありました。いろいろなことで、本当に素晴らしいと感じることの多い神奈川県の高野連ですが、こと21世紀枠のことになると「情熱なし」と言わざるを得ませんね。そんな「語られない事情」が大きく左右するのが、21世紀枠ってもんかもしれません。
21世紀枠 富岡西(四国・徳島) 初出場
夏出場なし
今年初めての出場を果たした富岡西。秋季大会の成績を見ると、堂々の四国大会4強進出。はっきり言って、一般枠で選ばれても何ら不思議ではないほどのチームではあります。ここ3,4年、一つ殻を破ったかな?と思うほど戦績も上がってきたこのチームですが、それまでは長い間徳島の強豪に頭を押さえつけられ、なかなか浮上できない歴史が長かったチームです。徳島県といえばいまだ私立校が甲子園をつかむことがないという非常にレアな県。全国的には、かつて公立王国と呼ばれた地域でも現在は私立優勢の波にのまれて・・・というところが多い中、まさに「孤塁を守っている」と言える地域という事が言えるのではないでしょうか。徳島商に始まり鳴門、池田、鳴門渦潮、小松島など全国の大会で名前を残してきたチームも多く、参加校は少ないながら野球熱の非常に高い地域だというのは間違いないでしょう。この富岡西は01年、08年と2度四国の21世紀枠推薦区に選ばれて、甲子園を掴みかかる寸前までいったことはありますが、その時は惜しくも聖地に立つことはできず。今回まさに”3度目の正直”で歓喜の瞬間を迎えました。徳島の21世紀枠といえば、10年、11年に川島、城南が2年連続で選出されたことがあります。川島は初戦、神宮大会優勝の大垣日大を向こうに回して、粘って粘って延長で惜しくもサヨナラ負け。城南は強豪の報徳と相対して、注目の好投手・田村を打ち崩してうれしい1勝を手にしました。「徳島の21世紀枠」は何かやるぞ!そんな気にさせてくれる、かつての学校の活躍ですが、富岡西にも大いに期待が持てそうですね。まあ実力的には、21世紀枠なんて言う冠をかぶせなくても、十分に四国の顔になる可能性を秘めるぐらいのチームですからね。戦いがとても楽しみな『四国の新顔』です。
21世紀枠 熊本西(九州・熊本) 初出場
夏1回出場 甲子園通算1勝1敗
21世紀枠のしんがりは熊本西高校。近年では全く県大会でも戦績を上げられず、勝ち数と負け数が拮抗するぐらいの感じでしたが、かつて1度だけ甲子園にやってきたことのある学校です。時は1985年。知り合いがこの学校の出身だったので、いたく感激していたのを思い出します。その前も決して「野球強豪校」ではなかったこの学校、その知り合いも熊本工や九州学院、鎮西などその当時も強豪として鳴らした学校を破っての甲子園に「本当に信じられないことが本当に起こった」と何度も言っていました。甲子園でも初戦で名門の磐城に対して、試合展開は押されていたもののキッチリとかって初陣を飾るというなかなかの試合をして、うならせてくれましたね。2回戦に当たったのは東農大二。実はその時の東農大二。選手の中に、あの痛ましい日航機墜落事故で、自分を応援に来る道中だったお父さんを亡くしてしまった選手がいたという事を記憶しています。もちろんそのことは大々的に報道されていましたので、何かこの試合、いつもの雰囲気とは違う何とも言えないざわついた雰囲気の中、プレーが行われたという印象が自分の中に残っています。そして東農大二が実力を存分に見せて圧勝したのでした。熊本西の甲子園は、今年までは後にも先にもこれ1回きり。こういう学校、全国にいくつもあります。「あの夏」と呼べる夏に、ただ1回の甲子園をつかみ取った・・・・・という学校。その後は挑めども挑めども、甲子園は遠く、いつしかその記憶も薄れ・・・・というのが、ワタシが思い出すだけでも何校も思い浮かべる事ができます。それだけ甲子園出場は難しい、ましてや2度目となるともっと困難を伴う、という事なのでしょう。野球強豪校への道は、本当にいばらの道なんですね。しかしこの熊本西は、34年という歳月を経て、「あの日」以来の「この日」がやってくるんですね。「あの日」を経験したOB、OGたちも、どれほど喜んでいることでしょうか。当時と同じ縦じまのユニフォームを着て、ノビノビと選手たちが甲子園で跳ね回る姿、まぶしすぎますね。
ということで、今年は9回にわたった連載、
今日で終わりにします。
実は「今年はやめとこう」
なんて思っていたんですが、
結局書いちゃいました。
しかし4年目になると、
「すでに書いたよ~」
という学校が増えてきているので、
来年書くかどうかは、まだ決めていません。
まあ、2月~3月初旬というのは書くネタの少ないヒマな時期ですから、
結局来年も同じように書いちゃってるのかな?
さて、
選抜まではあと2週間と少し。
今週末からはいよいよ練習試合も解禁となって、
出場各校のある程度の「今の素の実力」がつまびらかになってくる時期でもあります。
いったい「冬トレ」でどの学校が「驚異の伸び」を見せたのか?
あの選手は?この選手は?
興味のタネは尽きることがありませんね。
オープン戦がたけなわのプロ野球でも、
実戦を開始してみたら、いいと思っていた選手が・・・・・
なんてことは枚挙にいとまがありません。
結局野球は「試合」ですから、
自分のやってきたことをどれだけ実戦で出すことができるのか?という事が求められます。
そのあたりから考えると、
単に「投打の力」とかだけではなく、
総合的な『野球力』に長けたチームが、
今年も勝ちあがっていくのではないかと思ったりしています。
特に実戦経験がまだ十分でない春の選抜は、
その傾向が強いと思います。
さて、
そのあたりはしっかりと分析しながら、
選抜の展望などもいま頭の中で練っているところです。
今年も長いことお付き合いいただいて、
ありがとうございました。
(おわり)