≪FUJI BOXING≫ ~東京・大田区総合体育館~
◇WBA世界バンタム級タイトルマッチ 12回戦
チャンピオン 同級2位
ジェイミー・マクドネル(英国) vs 井上尚弥(大橋)
◇WBC世界Lフライ級タイトルマッチ 12回戦
チャンピオン 同級1位
拳四朗(BMB) vs ガニガン・ロペス(メキシコ)
いよいよ明日に迫ってきました、
世界バンタム級タイトルマッチ。
現在PFPで7位という評価を頂く”モンスター”井上尚弥の、
バンタム級に転級しての初戦であり、タイトル挑戦の試合です。
相手はWBAバンタム級でレギュラー王座のマクドネル。
決して侮れる相手ではありません。(まあ世界チャンピオンですから、侮りようがないですが。)
この試合、
井上尚弥にとっては「いよいよ世界への足掛かりをつかむ」大変に重要な試合。
「世界タイトルを長く防衛しているのに、世界への足掛かりって・・・・?」
と思われるかもしれませんが、
これが現在のボクシングの世界の現実。
階級が細分化し、しかも団体も各階級に4つもあり、
おまけにチャンピオンのほかに”暫定チャンピオン””スーパーチャンピオン”なるもののさえ作られ、
「いったいどのチャンピオンが本当のチャンピオンなの?」
と首をかしげる事態になっているのが世界のボクシング事情。
そこで繰り広げられる、
「〇〇階級制覇」や「防衛回数〇〇回」などは、
世界のボクシングファンには、
かつてほど意味を持たなくなってきています。
しかし日本では、
まだまだ旧態依然として「〇〇階級制覇」や「防衛回数〇〇回」などが錦の御旗のように、
崇め奉られているという現実があります。
ボクシングのファンならば、
そんなことよりも「世界の強豪とビッグマッチを戦ってほしい」という思いの方がずっと強く、
常にそうした「世界に出ていくボクサー」を応援しようとする空気があります。
しかし放映権を持つテレビ局にそのすべてを握られているといってもいい興行側(ジム側)は、
どうしても「テレビ映えする」「細く長く活躍する」「キャラが立っている」「テレビに都合のいい」
そんなチャンピオンが珍重され、
そのボクサーの持っている実力がテレビによって盛りに盛られ、
あたかも「世界に類を見ない強い〇〇階級制覇のチャンピオンが、史上最強の挑戦者の挑戦を受ける」
なんてあおられてきました。
実際は世界のボクシングファンの間で、
全く知られもしない島国の作られたチャンピオンが、
”経歴詐称”もどきでランキングを操作された誰も知らないボクサーの挑戦を受けるだけの「世界タイトルマッチ」が、
国民の人気を得ている……そんな感じであおられてきたのです。
そんなのに乗せられる方もどうかしている・・・・
そう言ってしまえばそれまでなのですが、
それでも普段ボクシングなんか見ない人にとって、
誰が本当に強いか、なんてことは知る由もない。
そうやって日本のボクシング界は、
10年近くにわたってテレビに牛耳られてきたという歴史があります。
まさに「ガラパゴス」という以外の何物でもなく、
ほくそ笑んでいるのはテレビ局のみ。
そんな感じだったと思います。
そんな中でも、
どうにかしてそんなしがらみの中でも、
「強い奴とビッグマッチをやり、自分をもっと高い所へ持っていきたい」
という気概を持ったボクサーも、
たくさんいました。
本人、ファンともどもビッグマッチ、あるいはアメリカのリングへの進出を強く求め続けた、
山中や内山などの素晴らしいボクサー、
実際に世界の舞台に上がり熱狂のうちに迎えられた西岡や三浦など、
日本ボクシング界の「でかく厚い壁」を打ち破ろうともがいてくれたボクサーもいましたが、
なかなかその重い扉を完全に開かすことはできませんでした。
しかしこの新しい時代。
スポーツ界でも、
本当に世界で勝負しているアスリートは、
どんな競技でもたくさんいて、
その彼らの活躍を、
日本のスポーツファンは「待ってました」とばかり見て、喝さいを送っています。
野球でもMLBにたくさんの選手が行くようになり、
勝負をかけてくれています。
サッカーはいち早く世界への扉を開き、
選手は「世界市場」においての自分の価値を、
常に意識するようになりました。
「世界で戦えるわけないだろ!」
と言われていたゴルフやテニスでも、
松山や錦織が、
最高のレベルで戦いを繰り広げています。
そしてその彼らの活躍が配信されてくると、
日本のファンたちはたとえそれが深夜や早朝であろうとも、
真剣に彼らのことを応援しています。
ボクシングも、
そうあらねばならない。。。。
そんなことを考えている時に現れたのが、
井上尚弥と村田諒太という稀代のスーパーボクサー。
村田はロンドン五輪で、
「ありえない」
と言われた重量級で見事に金メダルに輝き、
その勲章をもってプロ入り。
そして端から「世界最高峰の戦い」にどうしたら自分も参戦できるのかということを、
常に考えて自分を高めてきました。
その結果昨年、
ついに「日本人では勝負にならない」と言われた”世界最激戦区”のミドル級で、
見事に世界チャンピオンとなりました。
しかし彼は、
この世界チャンプという称号が『世界No1ボクサーと同義ではない』と常に語り、
勝ったリングの上で「僕より強いこの階級のボクサーはいる。その彼らに対峙できるように、高みを目指す」と宣言しています。
彼の究極の目標は、
世界のスーパースターであるGGGことゲンジー・ゴロフキンと世界タイトルマッチを行いということ。
それもできれば、東京ドーム並みの大きな会場で。
それが実現するまで、
彼はそのたぐいまれなる集中力を、
切らさないと思っています。
そして井上尚弥。
世界的には人気のない軽量級の選手でありながら、
スーパーフライ級の挑戦者として臨んだ世界タイトルマッチで、
『世界タイトルマッチ28戦ほぼ全勝、かつて一度もダウンを喫したことがない』
というレジェンド、オマール・ナルバエスをなんと2Rでノックアウト。
その衝撃から世界で広く、
「あのイノウエというボクサーは、いったい何者だ?」
と知られるようになりました。
その後はタイトル防衛は続けているものの、
自身の度重なるケガ(主にパンチが強すぎるゆえの・・・・・という強打者の宿命)、
そしてあまりに強すぎるがゆえにビッグマッチを相手に受けてもらえないというフラストレーション、
そんなものに泣かされてきました。
昨年はスーパーフライ級でビッグマッチ(興行)が成立しそうになるも、
これもまた土壇場で相手に逃げを食らって実現せず。
折から体重の増加に伴って減量にも苦しんでいたため、
昨年いっぱいでスーパーフライ級に見切りをつけ、
彼本来の階級(体重などより見た)であるバンタム級に階級を上げてきました。
バンタム級といえば「黄金のバンタム」と言われ、
「日本人のための階級」という感じすらある階級です。
古くはファイティング原田、辰吉丈一郎、
そして長谷川穂積や山中慎介など、
幾多の名チャンピオンを生んできました。
そのバンタム級に、
今度は「怪物」の名前が刻まれるということです。
バンタム級に上げてすぐ、
WBAのレギュラー王者であるマクドエルに対戦オファーをしたところ、
まさかの快諾。
そして明日の対戦となったわけです。
これだけでも井上尚弥の心に久々に火がついていたのに、
さらにビッグニュースが。
それは数日前に書いたとおりの、
WBSSという「バンタム級最強王者決定戦」への参加のオファー。
「この階級で、いったい誰が一番強いのか?」
をトーナメント戦で決めてしまおうという壮大な興行で、
まさにこれこそが「世界中のボクシングファンが本当に見たいもの」です。
明日のタイトルマッチで井上が世界タイトルを取れば、
『チャンピオン全員参戦』のこのトーナメントに、
井上も大手を振って参戦できるというものです。
そしてそこで、
各団体の世界王者と、
まさにガチンコでこぶしを交えるというわけ。
もちろんこれは、
世界中に放映され、
世界のボクシングファンがくまなくこのトーナメントを見るということで、
井上尚弥の名前と実力が、
まさに全世界に浸透していくということなのです。
これまでのように、
「ファイトマネーのほとんどは放送局からもらっているから、放送局の意向を忖度して対戦相手は弱いやつに・・・・・・」
なんてこと、
一切考えなくていいわけです。
だってこのWBSS、
昨年行われたときは優勝賞金10億だって!!!
桁違いですよ。
というか、
全世界のファンが井上尚弥のファイトに熱狂し始めれば、
それこそパッキャオ、メイウェザー、
古くはアリやタイソンなど、
そんな彼らの域まで井上尚弥が上がっていくことだって、
決して夢ではないと思っています。
だって何しろ、
モノが違うもの。
「日本ボクシング界が生んだ最高傑作」
であるとワタシは、
一点の曇りもなく思っています。
それほど彼は、すごいですよ。
大谷翔平並み、
いや、それ以上の『逸材中の逸材』だと思っています。
いや~。
井上のことになると、
やっぱり熱くなっちゃいます。
ビッグマッチに至る第一歩、
それがまさに明日のタイトルマッチなんだと思っています。
スカッと一発、
KOしちゃってください。
この目で見届けますから。
*ところで、マクドネルさん、身長が高いのに昨日の予備検診ではさほど体が絞れていなかったようで、
一斉に「体重超過にならないだろうな~」なんて疑惑を呈されています。
まあ、ネリのことやら比嘉のことやら、今年の春は体重超過についていろいろありましたからねえ、日本のボクシング界。
でも、大丈夫だと思いますよ。というか、あっちゃなんね~よ、そんなこと。