≪第103回全国高校野球選手権大会≫
- 予選展望4 東海地区 -
【静岡】(参加108チーム)
「春勝ったチームは夏勝てない」のジンクスは生きているか? 県連覇の藤枝明誠、春東海制覇の掛川西が中心。
◎ 藤枝明誠 掛川西
〇 静岡 加藤学園
△ 常葉菊川 浜松工
▲ 浜松商 聖隷クリストファー 磐田東 三島南
静岡県の高校野球界に残る最大のジンクスは「春優勝したチームは夏甲子園に行けない」だ。このジンクス、この2年ぶりの夏も果たして生きているのかどうか。県の高校野球界は、今年は藤枝明誠を中心に回ってきた。秋春の県大会を連覇し、この夏はジンクス破りに挑戦する。県内では投も打も屈指のレベルにあり、普通に戦えることができれば優勝争いの中心に座るのは間違いない。昨年のチームは秋東海大会4強ながら甲子園を逃し、雪辱を期した夏は大会が開催されないという悔しさに満ちた1年を過ごした。その悔しさを晴らすこの夏、本命であることは間違いがない。追っていく春の県準V校である掛川西は、その後東海大会を制覇。それも投手力を前面に出した非常に強い勝ち方で、一気に評価を上げた。沢山・榊原の左右の2本柱は容易に相手に点を与えない安定感抜群の陣容。打線はまだ線が細いものの、東海大会で見せたような好機を確実にものにする野球ができれば十分。藤枝明誠の強力なライバルに浮上した。その掛川西の強力投手陣に対して春の大会で唯一3点以上奪った強力打線が健在なのは名門の静岡だ。敗れたその試合では投手陣が大乱調。しかしここさえ整備できれば2強に全く劣らない戦いができそうで、伝統の夏に強い戦いぶりからも、本命に近いところまで浮上する。この3校が優勝に最も近いところにいるとみられる大会だが、毎年波乱が演出されるのも静岡大会の特徴。昨年交流試合で初めて甲子園の土を踏んだ加藤学園は、その感激を今年も味わおうと戦力を整えつつある。昨年より戦力は若干落ちるといわれるものの、しっかりと勝ち切る野球をするのが特徴のチームでもあり、期待できる夏になりそうだ。昨年の独自大会を制した聖隷クリストファーも”連覇”に向けて準備万端。伝統校の常葉菊川は春までは潜航していたが、今年も「急浮上」に狙いを定める。センバツに出場した三島南は、エース前田の出来次第。秋春ともに8強に進出した磐田東は、この壁を破り一気に聖地進出を狙う。
【愛知】(参加179チーム)
全国最多の出場校に、全国屈指の強豪が集う激戦大会。中京大中京中心に、私学4強が覇権を争う。
◎ 中京大中京
〇 愛工大名電 東邦 享栄
△ 栄徳 星城
▲ 中部大春日丘 愛産大三河 至学館 刈谷
3年前に神奈川を抜いて全国最多の出場校を誇る大会となった愛知県大会。ただ出場校が多いというだけではなく、全国でも上位を狙える強豪の集う大会でもあり、上位の激戦は全国の注目の的でもある。2年前の前回は東邦が春のセンバツを制覇、昨年は中京大中京が明治神宮大会を制覇。今年のセンバツでは中京大中京が4強に進出した。毎年のように全国制覇を争うチームを輩出させている現在、全国最多の勝利数を誇る愛知県の高校野球界は、その長い歴史の中で何度目かのピークを迎えているといえよう。今年の中心に座るのは中京大中京。その中京大中京は、選抜の激戦で故障を発症させたエース畔柳の回復次第だろう。春は完全に休養させたが、ここにきて急ピッチで回復してきているという情報もあり、この”ドラ1候補”の投球次第で県大会の景色はガラッと変わる。その中京大中京は打線も一級品。十分に打ち勝てる力を持つだけに、厳しい夏の大会でも、頭一つリードか。畔柳が休養している間に春を制覇、一気に加速してきたのが愛工大名電。エース野崎、2番手の寺島の強力投手陣に、隠し玉も用意されており、投手陣の質・量では中京大中京に引けはとらない。打線も強力で、横綱級の戦力を有している。そしてそこに割って入るのが、元中京大中京の大藤監督率いる伝統校の享栄。春は県大会、東海大会で連続の準V。その力を見せつけた。チームは肥田・竹山・菊田とドラフト候補をずらりと並べた超豪華投手陣が中心だ。全国制覇の経験もある大藤監督が自信を持っているこの戦力で、26年ぶりの甲子園を視野に入れている。そしてこの3校に後れをとれないと腕を撫すのが一昨年選抜制覇の東邦。監督が代わり実績を残していないが、春は優勝した愛工大名電と互角の激戦を演じた。エース知崎は夏向きのまとまった好投手。そして伝統の強力打線が投手を支える。この4校のいずれもが、全国の舞台で頂点を狙えるぐらいの力を持ったチームと言えるので、まずはこの4強の争いで決着がつくと思われるが、そのほかでは春4強入りの栄徳、星城がどう絡んでくるのかも楽しみ。栄徳は投手力、星城は打力に特徴を持ち一波乱を狙っている。甲子園経験もある至学館、愛産大三河や2年生中心の中部大春日丘などが上位校のスキを狙っている。注目される球児としては、刈谷の150キロエース・遠藤が上がる。
【岐阜】(参加67チーム)
鍛治舎マジックで、県岐阜商がトップ快走。岐阜一・阪口、中京・小田らのスーパー球児が打破するか!
◎ 県岐阜商
〇 中京 岐阜一
△ 大垣日大 大垣商 市岐阜商
▲ 岐阜城北 関商工 美濃加茂 帝京大可児
鍛治舎監督が県岐阜商に就任して2年。予想されたとおり、県内の戦力図は、すっかり彼の色に染まってしまった。県岐阜商は昨年、今年と選抜に連続出場。そのエース野崎がマウンドに君臨し、相手に容易に得点は許さない。もともと投手育成力、特に左腕の育成にたけた鍛治舎監督に鍛えられただけあり、野崎はマウンドで見事な投球術を披露する。その野崎を援護する打線も鋭さを増し、今年は甲子園での上位進出、あわよくば全国制覇を狙う陣容を整えているといってもいいであろう。その県岐阜商を追うのは、スーパー球児が引っ張る2チーム。まずは注目され続けている岐阜一の阪口。秋のドラフトではドラ1もありうると言われるこの逸材は、マウンドからでも打席からでも、すさまじいオーラを発するまさにスーパー球児だ。その阪口のこの夏の狙いは一つ、打倒・県岐阜商しかない。そして一昨年夏、甲子園でセンセーションを巻き起こした中京のエース・小田の存在も忘れるわけにはいかない。中京は春県大会で優勝したものの、県岐阜商、そして阪口との対戦はなかったので、橋本監督はその手綱を全く緩めていない。課題は小田以外の投手に安定感がないこと。打線の破壊力はあるが、投手陣が機能せず小田に負担がかかるようだと、ライバルを乗り越えていくのが難しくなるかもしれない。この3強での優勝争いになることが予想されるが、全国最高齢(?)の大ベテラン、阪口監督が采配を振るう大垣日大がどう絡んでくるか。甲子園に登場するときは制球力の高いキレのある投手がマウンドを守るチームなので、今年のエース・三松がどこまで夏に向けて力を上げてきたか。大垣商も久々の甲子園を狙えば、岐阜城北、関商工など近年の甲子園経験校も狙いをしっかりと定めている。
【三重】(参加60チーム)
新しい名門・津田学園が一歩抜け出したか。全員野球の津商、北村軸の松坂商など公立勢が追いかける。
◎ 津田学園
〇 津商 松坂商 海星
△ 三重 いなべ総合
▲ 菰野 近大高専 宇治山田商
予想の上位には、例年通りの各校の名前が並ぶ。しかしこの中で近年ぐっと力を伸ばして頭一つリードするのが津田学園だ。一昨年は好投手・前を擁して全国の舞台でも暴れまわった津田学園。新たな伝統を築くべく、今年の甲子園出場も外せない。久保田・上野らで構成する投手陣は相変わらず質が高く県内では屈指。打線もよく鍛えられており、得点力は高い。絶対の候補ではないが、結局は力の差で逃げ切りそうな気もするが。。。。一方2度目の聖地を狙うのは津商。初出場の時にあの智辯和歌山を破った試合は記憶に新しく、全員野球で蟻のように群がり相手を倒す迫力はすさまじかった。今年もタフなエース出口を全員で支えて春の県大会を制覇。三重、宇治山田商、海星、津田学園と、県内の強豪校を総なめにした。前回の甲子園出場時も春の勢いをそのまま夏にもって来ての栄冠だったので、今年もそのリズムで夏の頂点まで突っ走りたい。松坂商は新チームになってから秋は準V、春は4強と着実な歩みを見せる。その中心は捕手で4番、おまけにクローザーも務める北村。北村の出来次第では、50年ぶりの名門の復活も十分に期待できそうだ。公立勢に押され気味だが、伝統の私立勢、海星と三重もまずまずのチームで甲子園を狙う。海星は「機動破壊の創始者」前健大高崎の葛原コーチの就任で走るチームに変貌。三重県に新しい風を吹かせている。三重は秋は優勝してセンバツも視野に入れていたが春は県大会初戦で敗れノーシード。復活を期す。菰野、いなべ総合、近大高専や宇治山田商など、ずっと上位を争ってきた強豪は、今年も侮れないチームを作ってきそうだ。