第2回は、北海道、東北地区です。
≪選抜出場校の思い出 2≫
北海道代表 白樺学園 初出場
夏3回出場 甲子園通算 1勝3敗
近年ぐんぐんと力を伸ばし、今や北北海道では強豪の地位をゆるぎないものにしている白樺学園。そして昨秋、初めてセンバツにつながる全道大会を制し、選抜甲子園に初登場します。明治神宮大会でもその力を見せてくれた白樺学園の戦いに、注目が集まっています。これまで夏の甲子園に3度出場、1勝3敗の成績を残していますが、いずれの試合でも強い印象を残してくれるチームで、ワタシの心にも強く残るゲームばかりが思い浮びます。最初に出場したのは06年。何と開幕試合を引き当て、相手は名門の高知商。開幕試合という事で開会式のざわめきも残る中、白樺学園は初回から鋭い打撃で高知商に襲い掛かり、1,2,3回といずれも2点ずつを取り試合を優位に進めました。06年の事ですから、同じ北海道の駒大苫小牧がマー君を擁して甲子園3連覇を狙っていた年。ワタシは現地で観戦していましたが、「さすがは北海道のチーム」とうなっていたことを思い出します。中盤から後半、明らかに選手たちに「飛ばしすぎ」の疲れが見えたところを高知商に逆襲を食らって敗れ去りましたが、センセーショナルな甲子園デビューに、「白樺学園は、これから楽しみだな」と思ったものです。その後はなかなか甲子園まで届かない年が続いていましたが、次に姿を現したのが震災のあった11年夏。初戦は鳥取商との対決で、延長に入る激闘。この年の白樺学園は前回にもまして強力打線が活発で、この試合も現地観戦だったワタシ、「やっぱり白樺は凄いなあ」との感想を抱いたものです。そして次の智辯和歌山戦。この強豪に対して白樺学園は、序盤リードされるもひるむことなく追撃。序盤打ち込まれたエース小林が意地の満塁ホームランで追いついたシーンは、大会の名場面として記憶されるほどの感動の場面でした。最後は破れたものの、「白樺学園ここにあり」を強く印象付けてくれました。3度目の出場時の下関商戦も延長の激闘。こう見ていくと、白樺学園は甲子園の4試合すべてが激闘。まさに「北の激闘王」と呼んでもいいような、そんなチームですね。今年果たしてどんなチームで登場するのか。秋の段階では、強打だけではない投手を中心とした守りも安定しているチームでしたが、もう一段チームの底上げが出来れば、久しぶりに頂点を狙える可能性もあると思っています。期待は大ですね。
東北代表 仙台育英 13回目(3年ぶり) 準優勝1回
夏28度出場 準優勝2回 甲子園通算48勝40敗
近年非常に充実した戦力を誇っている仙台育英。選抜は3年ぶりですが、夏は3年連続で出場し、3年前には”絶対王者”大阪桐蔭をサヨナラで下し、昨年は素晴らしい打線と安定した複数枚の投手陣で8強まで進出しました。すでに「出るだけ」はおろか「8強ぐらい」では全く満足することはなく、常に全国制覇を視野に入れながらの戦いを見せてくれているこの仙台育英。須江監督に代わってから、特に系列中学からの選手を【6年一貫】で育て上げることで実力を伸ばす新機軸を打ち出しており、いよいよ機は熟したと思わせてくれる最近の戦いぶりです。今年も戦力は充実。あの2015年の夏準優勝時よりも戦力は上ともみられており、「近畿一択」と予想されるこの選抜で、あっと驚く結果を見せてくれるかもしれません。その仙台育英についての思い出は、3年前に書いた記事をご参照ください。
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仙台育英といえば、昭和50年代からずっと宮城県では東北高校と2強時代を築き、いまだにその図式は崩れていません。そして平成に入ってからはすっかり強豪として甲子園常連となり、長く”東北の雄”として東北勢初の大旗を狙ってきている学校です。現在、これだけ強豪校をそろえて甲子園で毎年大活躍するのに、東北勢はまだ甲子園で優勝を経験したことはありません。あの沖縄、北海道、北陸など、優勝未経験の地域で『初優勝』が続々と生まれているここ20年。東北勢も何度も何度も初優勝に手をかけながら、最高成績は『準優勝』にとどまり続けています。しかし近年、3季連続甲子園準優勝という金字塔を立てた八戸学院光星や、菊池・大谷といったプロ野球の大選手を生んだ花巻東、ダルビッシュ等を擁して伝統のストライプが甲子園を所狭しと駆け回る東北、そして10年連続甲子園出場という途方もない記録を引っ提げて毎年優勝争いに顔を出すようになった聖光学院など、多士済々の強豪校が東北勢の『その時』をわが手に……と挑み続けています。しかしながら、そのどの学校よりも『優勝に一番近い』と言われ続けているのが、この仙台育英。何しろ平成に入ってからだけで、3度もの決勝進出を果たしているのですから。そしてその3度のいずれもが、『あと一歩』まで優勝校を追い詰めながらの惜敗・・・・・とあっては、ファンとしては期待はいやがうえにも盛り上がるというもの。その仙台育英の3度の準優勝。どのチームも素晴らしかったのですが、やはりワタシが一番思い出に残っているのは、エースで4番の大越が獅子奮迅の活躍をした、平成元年夏の準優勝でしょう。エース大越はまさにマウンド上でも気合の塊のような選手で、相手をにらみつけながらの『ちぎっては投げ』は見ているものすべてを”大越ワールド”に引き込んでいくような凄みを持っていました。 準々決勝ではあの元木・種田・宮田らを擁して『最強』の呼び声高かった上宮に対して、大越が選抜のリベンジとばかり熱投。見事に春の雪辱をした仙台育英が、このまま初の東北勢の優勝だと日本国中が湧きかえっていました。決勝は安定した戦いでここまで勝ち上がってきた帝京との対戦になりましたが、仙台育英は常に主導権を握り、ずっと押しに押す・・・・・という試合展開でした。しかし≪1点≫がどうしても遠い展開。その1点が取れず、連投の大越が延長に入ってついに捕まって、優勝に一歩届きませんでした。『東北勢が優勝旗に手をかけた・・・・・』と形容される戦い、古くはあの『延長18回引き分け再試合』の太田擁する三沢高校、そして『コバルトブルー旋風』の田村投手の磐城高校、菊池投手の花巻東高校、それらと並んで、この大越投手の仙台育英高校が上がります。
いずれも『あと1点』が取れずに涙をのんだ、そんな試合ぶりでした。しかしそれがまた、『東北勢らしい戦いぶりだ』という高校野球ファンの共感を呼んで、より以上の拍手を甲子園で受けることになるんですね。
さて仙台育英。近年は【好投手】だけではなく、【全国屈指の強力打線】をも引っ提げて甲子園に乗り込んでくるようになっており、『東北勢の悲願』はまさに『手を伸ばせばすぐそこ』にあるというところまで来ています。今年のチームも、堂々の優勝候補だと思います。仙台育英関係者としては、『どこでもいいから、東北に優勝旗を・・・・・』なんて言うコメントとは裏腹に、『他校に先を越されてなるものか・・・・』という本音、当然強く持っていると思います。果たして、悲願はいつ達成されるのか。他の部活動も常に全国レベルで戦う仙台育英高校。注目度が最も高い高校野球で、栄冠に輝くのは、いつのことでしょう。
東北代表 鶴岡東(山形) 2度目(41年ぶり)
夏6度出場 甲子園通算 4勝7敗
昨夏甲子園で見事な戦いぶりを見せ2勝を挙げた鶴岡東。初戦は四国の強豪高松商、2回戦は選抜準優勝の習志野を力で押し切り、存在感を見せつけました。その鶴岡東が近年台頭してきたのは00年代後半ぐらいから。10年代に入って甲子園を手繰り寄せ夏4度の出場を果たしていますが、この学校を語る時には、その前の黄金期、70年代終盤から80年代の、鶴商学園時代を語らなければならないでしょう。鶴商学園という耳慣れない学校が甲子園初出場を果たしたのは78年の夏。初戦で日田林工と当たった鶴商学園は、2年生エースの君島投手を立てて奮闘しましたが打線が振るわずに完封負け、0-3で初めての大舞台を去りました。君島投手は県大会で肩を痛めていたという事で、本来の本格派としての投球を封印しコーナーを狙った丁寧な投球をしていたという印象がありますが、確かこの試合、彼は70球そこそこという「超省エネ投球」であっという間に去って行ったという新聞記事があったのを記憶しています。その君島投手が再度姿を見せてくれたのが翌79年の選抜。この年は近畿勢にすごいチームが揃っていて、半ば近畿大会のようになるだろうという戦前の予想の通り、4強には近畿勢4校がズラッと肩を並べました。優勝の箕島は春夏連覇の偉業を達成するチーム、準優勝の浪商は牛島-香川の黄金バッテリー、4強敗退のPLは前年夏の覇者で、小早川を擁して夏春連覇を狙っていました。もう一つの4強東洋大姫路の主将は、昨夏履正社で悲願の全国制覇を達成した岡田監督。こう見ただけで、どれだけすごいメンツが揃っていたかわかろうというもの。ほかにも8強進出で気を吐いたアンダースロー田中投手の尼崎北もいました。そんな中で、鶴商学園の初戦の相手は天理。これもまた、近畿の強豪チームです。ご多分に漏れず「強打」が看板のチームで、予想では天理の快勝。しかし君島投手は、そんな強豪を向こうに回してひるまず好投。圧倒的な球威こそないものの、前年の夏よりさらに磨きのかかったコントロールで凡打の山を築いて、結局昨夏に続いての無四球試合で、5-2と完勝するのでした。この時代、あの強かった近畿の名門・強豪を相手にして、東北の新興校が勝つという事は、一つのニュースでもありました。ワタシもよく覚えています。2回戦ではあの池田と激突し、2本のホームランを浴びて0-5と敗退しますが、何か爽やかな春風を吹かせて甲子園を去って行ったという思い出のチームです。翌々年の81年には夏に2回目の出場を果たしますが、その時は主将が選手宣誓をやったんではなかったかなあ。。。。。当時の事ですから、宣誓の文言も決まっていて「高校野球精神にのっとり、正々堂々と戦うことを誓います」っていう宣誓ですがね。試合は初戦で敗れましたが、敗れた相手が滋賀の近江高校。あの名門の近江の、甲子園のデビュー戦でした。さて、そんな鶴商学園のDNAを継いだ選手たち、この春もまた、何かをやってくれるかな?
(つづく)