≪第98回全国高校野球選手権大会≫
- 予選展望10 北海道・東北地区 -
【北北海道】(参加校102校)
強打の白樺学園が本命の座がっちりも、10校以上が入り乱れて大バトルになる可能性も。
◎ 白樺学園
〇 旭川実 旭川西 武修館
△ 遠軽 釧路江南 旭川龍谷
▲ 稚内大谷 旭川大 クラーク 帯広大谷
昨夏に続いて連覇を狙う白樺学園がトップを快走。春の全道大会で北照、駒大苫小牧の強豪2校を立て続けに破って戦力の充実を印象付けた。昨夏以上の破壊力を持つ打線の迫力は大会NO1で、橋本・牧野の左右の二枚看板を誇る投手力にも穴はない。守りも堅実で、例年以上に本命の充実度は高い。旭川勢が鋭く追いかける。旭川実はエース陣が投打の大黒柱。投げては140キロ以上の速球を誇り、打っても40ホーマーをかっ飛ばす二刀流選手。昨夏は決勝で涙を呑んでいるだけに、今年にかける思いは強い。旭川西は初出場を狙い強打に磨きをかける。やや不安の残る投手陣の底上げができれば、代表への道はぐっと開ける。旭川龍谷も名門復活を狙う。今年は3本の投手が揃い、長い大会を乗り切る準備が整った。夏初出場を狙う遠軽は、強打で優勝を奪い取りたい。70年代の黄金時代復活を狙う釧路江南も春の全道8強の実績を引っ提げて甲子園を狙う。一昨年出場の武修館は、バランスのいいチームで波に乗れば上位進出の実力は十分。稚内大谷、旭川大などの名門も復活を狙う。稚内大谷は、上位には何度も出場しながら甲子園の土を踏んでいないだけに、今年こそはの思いも強い。クラーク国際は通信制。好選手をそろえ、指揮官の佐々木監督は駒大苫小牧時代に何度も甲子園を踏んだ名将だ。
【南北海道】(参加119校)
札幌一がややリードも、駒大苫小牧、東海大札幌の実力校に、札幌大谷や北海道栄も鋭く追う。
◎ 札幌一
〇 駒大苫小牧 東海大札幌
△ 札幌大谷 北海道栄 北照 札幌日大
▲ 北海 立命館慶祥 函館大有斗 札幌清田
今年も実力校が数多く、レベルの高い戦いになりそうだ。まずは選抜出場の札幌一。エース上出は選抜以降調子を落としていたが、持っているものは高く、コンディションが整えば実力的には道内一だ。打線の力もあるため、どっしりと腰を据えて戦うことができれば春夏連続出場に手が届くレベルのチームだ。しかし全く予断を許さない大会になりそうな予感。というのも、追ってくる各校にもチームとしての高い力を感じることができるからだ。一番手は駒大苫小牧。夏は五連覇を飾った07年以来の出場を狙う。かつてのような強打+剛腕という他校を寄せ付けない戦力を誇るわけではないが、栄光を知る佐々木監督の下、かなり力をつけて全国レベルに近づくチームとなってきた。昨選抜準優勝の東海大札幌は、新校名で戦う初めての夏。投手陣の層が厚く、勝つときのパターンである『安定した投手陣を堅守で支える』戦いを狙う。札幌大谷は、初の全道制覇を飾った春季大会で、すっかり自信をつけた模様。その勢いを夏の本番まで維持できるか。チームはバランスの取れた攻守が売り物だ。同じく春季大会準優勝の北海道栄も自信をつけた一校だ。打線が左腕エースの金沢を支えて、強豪に挑みたい。北海、北照の両強豪は今季音なしだが、勝負の夏には怖い存在だ。何しろ過去6年で、北照、北海ともに2度ずつの甲子園出場。夏には抜群の強さを誇っている。札幌日大や立命館慶祥、函館大有斗は今あのところあと一歩の壁が破れない状況だけに、殻を破るきっかけさえあれば浮上も。札幌清田は選抜21世紀枠候補校。つかみ取れなかった甲子園を、勝ち抜いて自分の手におさめるつもりだ。
【青森】(参加68校)
宿命のライバル、八戸学院光星と青森山田のガチンコ対決が濃厚。しかし後続陣に、チャンスがないわけではない。
◎ 八戸学院光星 青森山田
〇 聖愛 八戸西
△ 八戸工大一 青森北
▲ 弘前工 五所川原工 大湊
2強の八戸学院光星と青森山田が久々に選抜にアベック出場。夏もこの2校の”宿命の対決”が濃厚だが、春季大会ではいずれも早い段階で敗退。その間隙をぬって、八戸工大一や聖愛といった実力校が実績をつけて、両強豪を鋭く追いかける大会となりそうだ。本命は八戸学院光星。今年のチームも打線の破壊力は例年通り。そして全国レベルを誇る投手陣は、エース桜井と和田、戸田ら安心できる投手が次々台頭して層が厚くなった。選抜で久しぶりの甲子園の土を踏んだ青森山田。夏は6連覇を飾った09年以降6年間出場がなく、その間に全国での実績でライバルの八戸学院光星に大きく後れを取った。しかし”東北勢初の甲子園制覇”の栄誉はかろうじて残っており、長く東北勢を引っ張る存在だった青森山田にとっては、今年は復活の甲子園切符を取り、深紅の大旗を何としても取りに行きたい。戦力的には、十分に全国レベルと言える。エース堀岡は140キロ台中盤の速球を投げ、安定感もかなりのもの。打線も三森・金沢の中軸の破壊力は全国レベル。ライバル光星との戦いを制し、今年はなんとしても甲子園の土を踏む。しかし両校一辺倒の大会にはなりそうもない。近年代表を射止めた経験もある2校、聖愛と八戸工大一の戦力も充実している。聖愛は地元にこだわるチーム作りで2強越えを狙っている。打線の破壊力はかなりのもので、パターンが確立している必勝継投の威力もかなりのものだ。八戸工大一は青森では『元祖私学の雄』だ。エース種市の145キロ越えの速球は上位陣には脅威。そのすべてに競り勝ち春の県大会を制したのは効率の八戸西。本格派のエース竹本の右腕と、粘り強い野球ができるところが売りで、夏も同じ戦い方ができるか。いずれにしても近年にないレベルの高い戦いで、終盤戦の戦いはすべての試合から目が離せない。
【秋田】(参加49校)
秋田商が夏に向けて開き直って躍進を狙う。実力では古豪・能代。明桜は実力派監督就任でどう夏を戦う?
◎ 能代 秋田商
〇 明桜 能代松陽 大曲工
△ 大館鳳鳴 角館 秋田
▲ 秋田中央 本荘 横手
秋は秋田、春は能代と公立の伝統校が県大会を制し、混とんとした情勢だ。その中でトップを走るのは、春秋と県大会で実績を残す能代か。エース大塚の投球にめどが立ったのは大きい。打線は大物うちはいないものの、小技、選球眼など、得点を取る方法をよく叩き込まれている印象だ。その能代を追うのは、昨夏の甲子園メンバーが残る秋田商か。絶対のエース・成田が抜けた今年のチームはなかなか実績を残せなかったが、夏はやはり怖い存在だ。昨年、久々の県勢8強を担ったメンバーには何物にも代えがたい経験がある。投手陣に救世主が現れれば一気に頂点まで駆け上がる力はある。中学硬式野球の名将と言われる阪川監督が就任した明桜は、かつての栄光を再現しようとチームの変革を試みている。東北勢で秋田だけが与していなかった『関西からの野球を導入』を、秋田県で初めて取り入れた明桜の”行く末”には、県内の関係者も注目が集まっている。甲子園で”魂の野球”を見せた能代松陽も、それ以来の5年ぶりの夏を狙う。県大会で4強の大曲工は、昨選抜以来の甲子園が視野に入る。投手力を中心とした、守りの野球が身上だ。大舘鳳鳴、角館はそれぞれ悲願だった甲子園の土を踏んだ経験を活かし、2度目の甲子園で一気に常連への道を歩もうと懸命だ。秋優勝の秋田は、春は地区大会初戦で敗れて一気にその評価を落としてしまったが、もともと持っている力は一級品。捲土重来を期している。
【岩手】(参加70校)
ライバル心メラメラ。3強のたたき合いは、見どころが多い。
◎ 一関学院 花巻東 盛岡大付
〇 釜石 一関工 高田
△ 専大北上 盛岡四 水沢
▲ 花巻南 千厩 大船渡
ここ15年、県内の高校野球は”3強のつばぜり合い”で実力を上げてきた。かつては岩手代表は甲子園でほとんど実績を残せなかったが、今では岩手代表は甲子園でも実力校と目され、警戒されるようになってきた。今年もその3強の力が抜けていて、激しいバトルが展開されそうだ。3強はそれぞれに切り札を持っており、直接対決での相性もあるので、非常に展望は難しい。今年は、秋は盛岡大付が制し、春は一関学院が制した。花巻東は春準優勝。しかし3校がそろって出場した東北大会では、一関学院、盛岡大付が初戦で敗退したのをしり目に、花巻東は4強に進出する躍進を遂げた。花巻東は05年から、隔年で必ず代表の座を射止めている。07,09,11,13,15年と6度の甲子園は見事だが、反対に連続出場の経験はない。岩手の夏は、『前年に悔しさを持ったチームがリベンジを果たす』という流れになっているのは、見逃せないところだろう。その点では、昨夏悔しさを味わった一関学院や盛岡大付に、今年はやや分があるのか。一関学院の売りは投手力。エース大竹の左腕に千葉の右腕、そして短いイニングを任せられるサイドの佐々木と、投手陣の層の厚さは群を抜く。対する盛岡大付は打線の迫力は3強でトップ。一方投手陣には不安を残すが、打ち勝つ戦いで代表をつかみたい。花巻東は経験値ではNO1。昨夏の甲子園経験種が8人そろっており、勝ち抜くすべを心得ているのは心強い。必ず夏には投手陣を整備してくる佐々木監督が今年も自信を持っており、投手陣が期待通りに働くことができれば、初めての連覇がぐっと近づく。選抜に出場して1勝を挙げた釜石も一発を狙っている。その他では一関工、高田や久々に出場を狙う専大北上などが候補と言える。
【山形】(参加49校)
酒田南が一歩リード。今や常連の山形中央の追い足も鋭いぞ。
◎ 酒田南
〇 山形中央
△ 東海大山形 日大山形 鶴岡東
▲ 九里学園 山本学園 山形商
ここ数年、秋、春に同じチームが実績を残すケースが多く、そこが夏の本命に上がるケースが多いものの、夏の戦いはそこまでの実績がすべて覆されるケースもまま見受けられ、予断を許さない。昨年は鶴岡東が秋春夏の”年間3冠”を達成したが、今年は酒田南が秋春の県大会を連覇。スラッガー石垣の打棒には大いなる注目が集まっている。打ち勝つ野球を標榜し、打線で圧倒する戦い方を狙っている。秋準優勝したが春は8強で敗れた山形中央を対抗馬に挙げる。エース荒沢の左腕は、過去数年の山形中央のサウスポーエースに重なり、今年も活躍が期待されている。東海大山形、日大山形の両伝統校は、逆転での甲子園を狙っている。東海大山形は昨夏のメンバーが数多く残り、2年計画を完結させる年にしたい。日大山形は3年ぶりの夏へ、打線の強化が急。昨夏に続く連覇を狙う鶴岡東は、スラッガー丸山が故障から復帰すれば昨夏のように強打が復活するのだが。。。初出場を狙う九里学園は、技巧派左腕の登藤がエースだけに、面白い存在だ。特に強打のチームとの対戦には注目が集まる。山本学園は2年生がほとんどレギュラーを占めるチーム。勢いを出して大会をかき回したい。
【宮城】(参加72校)
全国屈指の打線誇る仙台育英。巻き返し逆転もありうる東北、東稜。3校大激戦の予感。
◎ 仙台育英
〇 東北 東稜
△ 柴田 古川工
▲ 仙台三 仙台商 東北学院榴ヶ岡
昨夏は全国準優勝。快進撃を続ける仙台育英が、”東北勢初の全国制覇”に片手をかけた。仙台育英はすでに全国的にも『恐れられるチーム』になっており、今年も県大会を抜ければ全国で面白い存在になりそうだ。しかし今年は昨年のような”1強”状態ではなく、ライバルも底上げができており、波乱含みだ。仙台育英の今年のチームは、昨夏大活躍の西巻から始まる打線の破壊力は相変わらず鋭い。一方投手陣は、昨年の佐藤世のような『大黒柱』はいないものの、その分枚数は多く、トータルでは昨年と遜色ない陣容を誇る。昨年との違いは、自信をもって戦いができているかどうかの違いだけ。今年も仙台育英は”強い”。ここ数年ライバルの後塵を拝していた東北が復活宣言だ。春の東北大会を制して、意気上がり夏を迎える。東北大会の制覇は実に11季ぶり。しかも仙台育英、東稜の県内のライバルを連破しての優勝だっただけに価値が高い。エース渡辺は実戦型の投球が持ち味で、夏の戦い向きの投手だ。打線は仙台育英にも劣らない迫力。あの震災直後の11年春以来の甲子園へ、華麗なる復活を遂げるつもりだ。秋は1位仙台育英、2位東北、3位東稜という順位が、春は1位東稜、2位東北、3位仙台育英となり、その後の東北大会では1位東北、2位東稜、3位仙台育英となった。仙台育英、東北の2強に、今年は東稜が割って入る構図だ。この東稜、接戦が得意のしぶといチームカラーを持つ。エース八鍬は制球力抜群のエース。打線は1・2番が出塁し主軸が還すオーソドックスな形が得意。東北大会でも県外チーム相手に接戦を勝ち切るなど、その”野球力”で2強に風穴を開けたいところだ。今年はこの3強が圧倒的に強い県大会が予想される。追っていくチームはわずかなチャンスを逃さぬような戦いが絶対に必要だが、可能性があるのは柴田、古川工,仙台三や名門仙台商、東北学院榴ヶ岡あたりか。
【福島】(参加78校)
さあ10連覇へ。聖光学院が空前絶後の大記録へ挑む夏。
◎ 聖光学院
〇 日大東北 光南
△ 東日本国際大昌平 磐城 学法石川
▲ いわき光洋 福島商 小高工
高校レベルのスポーツの地区会では、往々にして『絶対の一強』が形成されることが多い。サッカーにしてもラグビーにしても、その他の競技ももちろん、何年、何十年も代表を独占するということは珍しくない。しかし競技としてのすそ野が広く、話題になりマスコミにも取り上げらやすい野球については、強化に力を入れる学校も各地区で一つや二つではないため、これまで『一つの強豪校が何年も代表を独占』ということはなかなか起こり得ない出来事であった。これまでは和歌山の智弁和歌山、高知の明徳義塾らが血のにじむような努力でそのあり得ない『独占状態』を維持していた歴史があるが、それはその地区が『30校前後の出場校の、やや戦いやすい地区』であるという要因があったからであり、しかもその『独占期間』が二ケタに到達することはなかった。高校野球の歴史で強いといわれたあのPLも大阪桐蔭も、池田も横浜も、10年にわたり地区のタイトルを独占してきたことはない。しかし今年の聖光学院は、そのまさに≪金字塔≫に挑戦する。昨夏まで9年連続の甲子園出場。その努力に敬意を表するとともに、今年最も注目の地区であるということは間違いない。それにしてもすごい記録である。今年の聖光学院は、春の県大会で磐城に敗れるという大波乱を演出した。全国にそのニュースは驚きをもって伝えられたが、その後出場した東北大会では秋田1位の能代を破り、花巻東とも大接戦を演じ、『やっぱり聖光学院は強いじゃないか』という、なんとも言えないほっとしたといおうか、拍子抜けしたといおうか、そんな感覚を抱かせた。高校野球界における大偉業に向けて、斉藤監督は謙虚な中にも自信を見せる。打線は例年通り破壊力十分の全国レベル。心配があるとすれば投手陣だが、春から夏にかけてたくさんの投手が試されている模様。かつての剛腕・歳内の登場の年などを思い出しても、必ず夏に聖光学院には”絶対的なエース”が出現する。今年も、間違いなく『聖光学院の背番号1』を背負うエースの登場はあるだろう。それがどんなエースなのか、期待を持って待ちたい。さて、10年間にわたり聖光学院の独占状態を許したライバルたち。今年は光南、磐城の両公立勢が元気で、楽しみな大会となりそうだ。光南はエース石井と4番西牧という投打の主役が打倒・聖光を誓う。磐城はあのコバルトブルーのユニフォームで旋風を狙っている。日大東北はまだまだ聖光学院とは戦力的に差があるが、中村監督が何としてもこのあたりで結果を出したいところだ。
さあ、前人未到、空前絶後と言ってもいい聖光学院の10連覇はなるのか。
その期待を持って、49地区の代表校の予想を終わろうと思います。
あくまでも予想は予想。
高校野球、とりわけ夏の大会はまさに≪筋書きのないドラマ≫が展開される大会だけに、
どんな見たこともないチームが波に乗って駆けあがってくるのか、そんなことを見るのが楽しい大会です。
『高校野球の華は、夏の地区予選』
それは昔から変わらぬ真理であり、ワタシも深くそれを思っています。
どの球児も、
全身全霊で、
夢の場所・甲子園を目指して、
頑張ってほしいと思います。
〈了〉