≪第103回全国高校野球選手権大会≫
- 予選展望6 近畿 -
【滋賀】(参加50チーム)
初めてのV狙う綾羽が本命に躍り出た。滋賀学園・近江の両強豪が僅差で迫る展開か。
◎ 綾羽
〇 滋賀学園 近江
△ 立命館守山 比叡山
▲ 水口東 栗東 北大津 大津商 彦根総合
ここ数年近江と滋賀学園が覇権争いを繰り広げてきたが、今年はここに綾羽が加わりそう。初出場を目指す綾羽は、春の県大会に初優勝し、続く近畿大会ではあの大阪桐蔭と好勝負を展開。かつて県内で新興チームが出現してきたときと同じ匂いを持ち、聖地に届く可能性は十分にあるとみる。一方県内2強も黙ってはいない。秋に優勝した滋賀学園は、春は県4強で敗れ、近畿大会では智弁学園の前にぐうの音も出ないほど叩きのめされた(6回0-15)。その嫌な流れを断ち切って夏の戦いに挑みたい。本来チームは速球派の阿宇を中心として守れ、さらに打てる好チーム。県内の水準では投打ともにNo1に近いところに位置しているため、戦い方さえ間違えなければ候補筆頭ともいえる。3連覇を目指す近江は、今年は下級生中心の日替わりメンバーで春までの戦いを望んできたが、果たして夏はどのような陣容になるか。ほとんど試合をこなす前に敗れてしまったため、戦力の「本当のところ」がわからない状態なのも、他校には不気味だろう。しかしながら、夏の大会での強さは長年実証積みで、ベテランの多賀監督は今年も夏の覇権は譲らないつもりだ。春準優勝の立命館守山は、県大会では健闘も近畿大会で戦力不足を露呈した。甲子園をつかみ取るには、あと一段の戦力アップが必要。一方春実績を残せなかったものの、エースで4番の島口が大黒柱の比叡山のほうが評価は高い。島口の活躍いかんでは、名門復活ののろしを上げることも可能か。21世紀枠候補になった栗東の小林は注目を集め、昨年の独自大会で準優勝に輝いた水口東は今春も県ベスト4進出と伸び盛りだ。北大津に大津商の大津勢がいかに絡んでいけるか。彦根総合は元北大津の宮崎監督が采配を振るい、レギュラーほとんどが1年生の「2年後は恐ろしくなっている」チームだ。
【京都】(参加73チーム)
選抜で自信をつけ全国水準の強豪にのし上がった京都国際。名門・龍谷大平安はどう挑んでいくのか。
◎ 京都国際
〇 龍谷大平安 乙訓
△ 京都成章 京都翔英
▲ 東山 京都共栄 京都外大西 立命館宇治
古都の夏は、新しい風が吹き荒れるのか。今年のセンバツで初めて甲子園にお目見えした京都国際。初陣とは思えぬほど堂々とした戦いぶりで、1回戦に勝ち2回戦でも勝利寸前まで迫った。その自信は大きかったのだろう。甲子園から帰ってからの戦いぶりは、完全に一皮むけたように感じられる。森下・平野の投の2枚看板は選抜時よりさらに安定感を増した。打線も強打だけでは無いしぶとさを持ち、チームとしてのグレードは一段も二段もアップしている。その京都国際を追っていくのが古くからの”古都の盟主”龍谷大平安だ。原田監督は春は早期敗退の憂き目にあったが、夏は万全を期すと鼻息も荒い。秋の県大会では優勝を飾っており、京都国際に対する苦手意識はなく、夏はユニフォームで勝負するいつもの平安の輝きを取り戻しているはずだ。両校に迫る勢いなのが府立の雄、乙訓。秋は準優勝で近畿大会進出、春も府4強に進出した。エースの北見は安定感のある右腕。打線も他校に見劣りしない打線で、西山・谷口らの中軸は高水準だ。春準優勝に輝いた京都成章だが、決勝では京都国際に大敗。投打に絶対的な力はないが、バランスはいい。東山は橋本ー東のバッテリーが中心。最近数年で、古豪復活を印象付けている。京都翔栄は選手層の厚さと各選手の能力の高さは抜きんでている。混戦を抜け出すには、チーム一体となった戦いができるかどうか。京都共栄も、今年は層が分厚くなって、神前監督もひそかに優勝まで駆け上がることを夢見る。強豪の京都外大西、立命館宇治らは上位を狙って戦力を整えつつあり不気味な存在だ。
【大阪】(参加167チーム)
大阪桐蔭以外にはありえない。春の屈辱を超えて、夏の全国制覇のみに照準を絞る。
◎ 大阪桐蔭
〇 履正社
△ 関大北陽 近大付 東海大仰星
▲ 興国 桜宮 東大阪大柏原 大体大浪商 山田
今年の新チーム結成から、全国で話題になったのは「大阪桐蔭の今年のチームの盤石の強さ」のことばかり。あの根尾、藤原らを擁して圧巻の春夏連覇を遂げたチームをも上回るかもしれないといわれたこの絶対王者は、しかしここまでは苦難の道をたどってきた。選抜では31校の中で「こことだけは当たりたくない」智弁学園と運命のいたずらか、初戦で激突。「当然大阪桐蔭が勝つ」と思われていたものの、思わぬ乱れで初戦で悔しい敗戦を喫した。しかしこの大阪桐蔭、こんな屈辱のまま引っ込んでいるチームではない。夏に向けては、ギアが一段上がってきて、悔しさを知るだけにむしろ夏には盤石な体制を整えてくるとみられている。関戸・松浦の全国屈指の二枚看板を全く使わなくとも、春は川原・竹中らの好投で智弁学園にもリベンジ。近畿大会優勝を飾った。打線も野間・宮下・池田・花田らどこからでも一発の出る打線がさらにブラッシュアップ、どこからどう見ても大阪府大会でこのチームが終戦を迎えるとは思えない陣容で、全国制覇に向けて勢いを加速させる大会となりそうな気配で。果たして追ってくるチームはあるのか。残念ながら今年に限っては、履正社をはじめとする各チームは大阪桐蔭の2枚ぐらい下を行っていると見え、逆転は非常に難しい。しかし野球はまさかの起こるゲームでもある。その可能性に欠ける一番手は、やはり”ディフェンディングチャンピオン”の履正社か。しかし昨年までのここ数年のチームと比べ、力が落ちるのは否めない。打線はそれでも一級品だが、投手力の安定感に欠ける。大阪桐蔭との大勝負では、3年前のようにあっと驚く一手を打ってくる可能性もあるが、それでもチーム力の差は大きく、逆転まで至る可能性は少ない。名門・関大北陽は戦力的にはむしろ履正社を上回る。幅広い攻撃を見せる打線、枚数の揃った投手力という伝統の全員野球で大阪桐蔭に挑む。春準Vに輝いた近大付は、長身の大型右腕・山田が面白い。しかし春決勝ではその大阪桐蔭に、山田を立てながら0-16の完敗。その差をどう埋めていくのか。東海大仰星は秋は準Vで近畿大会に進出。ここは伝統的に投手力がいいチームで、しっかりした野球を展開する。元ロッテの喜多監督(智辯和歌山卒)が采配を振るう興国は、春8強と力を付けてきている。最近府を席巻するサッカー部の活躍に肩を並べたいところだ。公立の桜宮、力のある東大阪大柏原、大体大浪商も活躍が期待され、”秋の惑星”山田が夏も存在感を見せるかにも注目だ。
【兵庫】(参加157チーム)
近年とは勢力図に違いがある興味深い大会。復活遂げるか、神戸弘陵に神港学園。
◎ 神戸国際大付 神戸弘陵 神港学園
〇 東洋大姫路 報徳学園
△ 滝川二 明石商
▲ 社 東播磨 武庫荘総合
ここ数年、県の高校野球界は神戸国際大付、明石商の2強が引っ張り、それに報徳学園、東洋大姫路などが絡む展開になることが多かったが、今年は少し様相が違ってきそうだ。絶対的かと言われた神戸国際大付は、エースとして安定感抜群の投球を見せていた阪上が故障からの完全復活が難しそうで野手に専念。戦力の再構築を余儀なくされ、一気に混とんとしてきた。その神戸国際大附はそれでも県内トップの力を攻守に見せるが、「絶対の筆頭候補」でなくなったのは確かだ。その間隙を縫って、90年代から長い沈黙を保っていた2校が、久々に優勝戦線に浮上してきた。神戸弘陵と神港学園だ。いずれも昭和後期~平成前期にかけて何度も甲子園を沸かせてきたチームだが、最近は他校に押され気味ですっかり甲子園とはご無沙汰。しかし今年は、久々に「狙える」位置まで上げてきて、関係者の期待も高まっている。神戸弘陵は、春の戦い方がよかった。明石商、そして選抜帰りの東播磨をいずれも完封のコールドで破って勝ち上がり4強入り。準決勝では神港学園に0-1で敗れたものの、一気に評価を挙げた。投手陣はその春に底上げが成功、4枚いずれもが信頼できる”投手陣”を形成して盤石。堅守でしっかりと失点を抑え、そこそこ力のある打線が得点を奪って勝ち切る野球だ。一方の神港学園も、ここ20年程すっかり甲子園からは離れていて、捲土重来を期す。こちらはエースの加藤が一人で県大会を投げ切り制覇。しかも準々決勝の報徳戦から、神戸弘陵、神戸国際大附と強豪を3連続完封の離れ業。圧巻のピッチングだった。近畿大会の智辯和歌山戦では、三木も復活。投手陣のレベルは県内でもトップであることは間違いない。問題は打線。まだまだ他校に比べると得点能力は今一つで、暑い夏の連戦を考えると少し心許ない。果たして春の再現で、投手力で夏も押し切れることができるか。この3強を追いかける”超名門”の2校も、なかなかの戦力を整える。東洋大姫路は春4強入り。ベテラン藤田監督が3年計画で作り上げたチームの最終学年。当然に聖地復帰に狙いを定めている。報徳学園はここまで実績はないものの、チームの仕上がりは良さそうで一気の浮上も考えられる。名門の滝川二は甲子園でも活躍したOBの西詰監督が就任して、チーム変革に挑む。社会人チーム指揮の実績もあり、県内に新たなつむじ風が起きそうだ。ここ数年すっかりおなじみになった明石商は、今年はここまで音なしの構え。昨年の超絶なチームのポスト年だけに致し方のない面もあるが、狭間監督の胸の中には、「一発かます」の思いがいっぱいに詰まっているとみる。上位校には本当に嫌な相手だ。その他選抜でセンセーショナルな足攻を見せた東播磨や、剛腕斉藤を擁する武庫荘総合へも視線が注がれている。
【奈良】(参加37チーム)
半世紀にわたるライバル物語。天理と智弁のライバル対決は、今年その頂点を迎える。
◎ 智弁学園 天理
〇
△ 奈良大付
▲ 畝傍 法隆寺国際 関西中央
天理と智弁学園による、奈良のライバル物語。50年の長きにわたりとうとうと紡がれてきたこの物語が、今年ひとつの頂点を迎えるといってもいいであろう。それだけこの両チームの力は突出しており、全国大会の決勝戦で激突しても何ら不思議ではないレベルだ。両校は昨年、今年と2年連続で両校揃っての選抜出場を決め、今年は天理がエース達の力投で4強進出。智弁は大阪桐蔭を倒して8強に進出した。両校の直接対決は、秋は天理が智弁に完勝、反対に春は智弁が天理に3-1で快勝した。両校の戦力は全く互角とみられており、試合は「やってみなければわからない」としか言いようがない。決勝対決となるこの両校の激突は、全国でも注目度はNo1ではないか。天理は今年は、投の達、打の瀬と軸がしっかりとしているチーム。安定した戦いぶりができるのが強みで、達が絶好調なら全国のどの打線でも攻略することは難しいといわれている。一方の智弁学園は、試合になると力を発揮するチームで、チームの核となるのは強力打線だ。前川・山下の両スラッガーが相手のどんな投手も打ち砕く破壊力を秘める。投手力も西村、小畠の2枚看板を軸に安定。春の近畿大会決勝では王者・大阪桐蔭と3度目の対戦。延長で初めて敗れはしたものの、実力では全く引けを取らないという事を改めて証明した。さて、この両校の対決、いったいどんな試合になるのか、今からワクワクしている。参加校も多くない大会だけに、まずこの2校の直接対決の前に波乱が起きることはなさそうだが、可能性を探るならまず名前が挙がるのが強打の奈良大付だ。最近は年によっては2強の一角を崩すほど戦力は充実してきており、今年も一発を狙っている。エースはサイドの二宮。うまくはまれば面白い。いい戦いを続ける畝傍、法隆寺国際、力のある関西中央らがどのように戦いに挑むか。
【和歌山】(参加39チーム)
小園が念願の打倒・智辯和歌山を成し遂げるか、それとも名門が返り討ちにするのか。
◎ 市和歌山
〇 智辯和歌山
△ 和歌山東 向陽
▲ 箕島 近大新宮 熊野
こちらもお隣りの奈良と同じようにライバル対決で決着をつける夏となりそうな気配だ。ドラ1が有望視される市和歌山のエース小園は、その力を選抜でも発揮して全国デビューを果たした。速球の威力だけではないたぐいまれなる投球センスにはほれぼれとさせられるものがあった。しかしながら、その選抜ではやはり市和歌山としての全体のレベルも垣間見ることができ、小園が万全で臨めなければ厳しいという事も露呈してしまった。秋この小園に3連敗を喫した智辯和歌山は、冬の間牙を磨きつつリベンジの機会を待っていたが、春は決勝で対戦すると相手に得点の機会をほとんど許さず、最後には小園も打ち砕いて7-1と完勝。「さすがは智弁」と関係者をうならせた。智辯和歌山のエース中西は小園へのライバル心をむき出しに好投。県大会だけではなく、近畿大会でも好投を披露して完全に一本立ちに成功、自慢の強力打線とも相まって、智辯和歌山の視界は良好と言える春を過ごした。しかしながら、今大会、あえて市和歌山を本命に推す。それは、小園の底知れぬパワーを信頼してのこと。相手が強くなればなるほど力を発揮するタイプとみられるこの小園の「本当の姿」、智辯和歌山との夏の決戦で追い詰められたときにこそ現れるとみている。そしてその凄みのある「本物の小園」を見てしまった時、プロのスカウト陣はこぞって「小園」の札を秋に上げざるを得ないのではないか・・・・・そんな予感がするのである。しかしそんな小園をもってしても、ライバルとの対決で打線が0点に抑えられては、どんな展開でも勝てはしない。市和歌山に課せられたミッションは、「とにかくどんな試合でも最低、1点は奪う事」これに尽きる。2強が強いとはいえ、奈良と比べると盤石感はまだ少ない。間隙を縫うように上がってくる候補としてまず上がるのが、和歌山東。秋は決勝まで勝ち上がり、春も4強まで進出して智辯和歌山を追い詰める戦いぶりを見せた。非常にバランスのとれた好チームで、甲子園の土を踏んでも何ら不思議ではない。”旧海草中”の向陽も久々に候補の一角に上がってきた。秋春ともに8強入りし、エース田中は小園、中西らと肩を並べる県内屈指の好投手だ。近大新宮は春4強進出。そろそろ甲子園までたどり着きたい。箕島はこの夏は初戦で智辯和歌山と対戦することが決定。名門の意地を見せて一泡吹かせられるか。熊野も好チームだ。