(取材で海外にも出かけたりして、あのころは楽しかった...)
最近のF1やラリーなどなど...にあまり熱くなれなくて、自分の中ではモータースポーツは今後衰退の道をたどらざるを得ない、という気がしています。
とくに日本では若者にお金がなくて、お金がないと車なんか買えない。車が縁遠いものになれば、レースにも関心が向くわけない。
環境問題もあって今は世界的に逆風が吹いているし。EVのレースは正直言って面白くもなんともないし。
というわけで、これからはシミュレーションゲームだけが流行って、お金がかかるし身体的な負荷やリスクが大きいリアルのモータースポーツは、オワコンになるでしょう。
特に衰退途上国になった日本では。
そういう現状で私が個人的にちょっとハマっているのは、ヨーロッパのヒルクライムレースを動画で見ることです。
ヒルクライムというのは、文字通り山道を登坂する速さを競うタイムレースで、日本にはプライベートな草レースしかないのですが...
ヨーロッパには、FIA(国際自動車連盟)公認の選手権がいくつもあって、人気の高い、メジャーなレースカテゴリーなのです。
プロトタイプカーや、市販車ベースなどいろんなカテゴリーがあり、タイヤはセミスリックだけでなくスリック(完全に溝のないタイヤ)もOK。
たまにネタでF-1マシンが出てくることもあります。
F-1マシンはデカすぎるし、最小回転半径が大き過ぎて、峠道では良いタイムを出せないので、あくまでもネタ、話題集めですが。
ヒルクライムといっても、細かいタイトコーナーが多いコースから、緩めのワインディング中心のレースもあります。
大馬力のモンスターマシンが強いのかといえば必ずしもそうではなくて、比較的非力でも軽量で取り回しのしやすいマシンが有利なコースもあります。
とにかくコース特性に合わせた的確なマシンセッティングと、ドライバーの技術が問われる競技です。
プロトタイプカーのカテゴリーから、市販車ベースのカテゴリーなどクラスは多岐に渡りますが、人気があって一番注目を集めるのは...
やっぱり市販車ベース車両のクラスになります。
市販車ベースとは言っても、エンジン、サスペンション、ミッション、ブレーキ、給排気系、空力パーツから軽量化の方法に至るまで...
かなりやりたい放題の「魔改造」が許されているので、もはや原型を留めていないのでは?という怪物もよくあるのです。
たとえばこんなの。むかーしの、2代目フィアット500、あのルパン三世が乗っていた車を現代にわざわざ選んで「魔改造」したマシン。
出力250馬力だというエンジンはもちろんオリジナルのものではなく、日本製のSUZUKIハヤブサエンジンを積んでいて…
しかも4輪駆動化されています。
ぶっといスリックタイヤを履いたチンクエチェントなんて、冗談みたい。
これも一種のネタではあるのですが、にも関わらずそこそこ良い成績を叩き出しているのが凄いところ。
中には最高出力1600馬力超!なんていう、F-1でも聞いたことのないようなスペックを公称する、クレイジーそのものなマシンも登場。
それが必ずしも良いタイムを出せない、というところが面白いです。
リアウイングを前にも付けてみました!みたいな、奇怪な見た目のマシンもあり。
そういうおバカなレースを、FIA公認で、しかも公道でやってしまうところが、ヨーロッパのモータースポーツの(そしてあちらの警察当局の)懐の深いところです。
そして、ごく少数の車種に限られてしまっているWRC(世界ラリー選手権)とは違って、新旧のいろんな車がベースだったりするのが面白い。
こちらはアルファロメオ4Cをベースにして、80年代後半にF-1を見ていた人には懐かしい「ジャッドV8エンジン」を搭載したマシン。
すごく良い音で走っています。
こんな風でいて、おなじコースを走るWRCマシンより良いタイムを叩き出したりしてるんですから。
(ハチャメチャな改造をしてるんだから当然かもですが)
見れば分かりますが、本当にWRCのトップドライバーに負けない、惚れ惚れするようなテクニックを披露してくれるドライバーもいます。
とにかく見て楽しい、という意味では、今のモータースポーツではこのカテゴリーが最高、だと私は思います。
そんなヨーロッパヒルクライム選手権のラウンドの中でも、最もステイタスの高い大会のひとつが「トレント-ボンドーネ ヒルクライム」です。
最初の開催が1915年に遡るという(110年前!)現在まで行われているモータースポーツイベント全体を通してみても、有数の伝統を誇り...
ここでの勝利をキャリアのハイライトにするヒルクライムのスペシャリストも少なくないようです。
イタリア北部の、ヨーロッパアルプスの峠道で行われ、コースの全長は全選手権中で最長の17.3km、標高差が1350m。平均斜度8.88%。
日本では有名な峠道で、WRCジャパンラリーのスペシャルステージにもなる碓氷峠が、長さ約9km、標高差約530m、平均斜度約4%ですから…
長さと斜度を比較すると、そのスケールの大きさとコースの過酷さがわかるでしょう。
またコースから下界を見下ろすパノラマが絶景なこともあって、天候が良い年には3万人以上の観客が詰めかけるという人気を誇ります。
2024年の大会では、フィアット1/9の車両をベースに、アルファロメオの4気筒エンジンをハイパーチューンしたものを搭載した...
マヌエル・ドンディのマシンが、コースレコードを記録して優勝しました。
その市販車ベースクラスの、トップ15台の走りを15位から1位まで順に記録した動画を貼っておきます。
面白い。ただ音量にはご注意ください。