息子が先月「初めてひとりで映画館に入って映画を観た」と。
私にも勧めて彼が言うには...
こういう、ある意味何も起きない、ほとんど起伏のない映画というのは初めて観たけど、すごく感動した。
お父さんは好きかもと思って。アマプラ(Amazonプライム)で配信してるから観てみて。
というわけで観てみました。
ヴィム・ヴェンダース監督、役所広司主演の日独合作映画。
都内の公園にある公衆トイレの掃除人をしている主人公の、一見単調に繰り返される毎日を描いた作品。
そこに浮かび上がってくる人生の切なさと悲しさ、尊さと美しさ。
隣合わせの、孤独と自由。
こういう映画を観て「良かった」と絶賛する感性は、やっぱり私の息子なんだなと改めて思いました。
あと私が思ったのは、今にも崩れそうな古い木造アパートに暮らす彼が寝しなに読んでいる本が、何気なくウィリアム・フォークナーだったり。
掃除道具を積んで仕事場に向かう軽自動車の中で「カセットテープで」かける音楽が、オーティス・レディング、パティ・スミス、ニーナ・シモン、ルー・リードだったりで...
かなりの教養人で、趣味も良い人物なのだということがわかり。
そういう人がトイレ掃除の仕事をしているというのが、逆にリアルでもあるように、私は思いました。
私だって、家族がいなかったり、別れたりしていたら独居のままシルバー年代に入っていたでしょうし…
仕事をするとしたら、あの種類の仕事をしていた可能性も大きいと思います。
実際に、これから就職するとしたら、通る求人の案件は、清掃、箱詰め、警備、運転…ぐらいだというのを、思い知らされてますから。
(資格があれば、介護職もあるのですけれど)
世の中には、お金になる知識と、お金にはならない知識というのがやっぱりあって。
私自身はいっぱい学んで来たつもりでも、今から収入のタネにできるものはほとんどない。
もっとも、これからはいろんな仕事の分野で自動化、機械化、AI化が進んで来て、人ができる職種はどんどん減るのでしょうけれど。
そういうわけで、この歳で一人暮らしをしていたら主人公の「平山さん」と同じような日常を送っていたでしょうし…
運命がどうにかなっていたら、ホームレスになっていたかも。
いや、今からホームレスになる可能性も普通にあると思っています。
映画には、ホームレスのおじいさんも出てきます。素人とは思えない見事な舞踏を踊っています。
そういう人々の生活もまた、尊い価値のある日々...「パーフェクトデイズ」であるのですけれど。
合わない人は、間違いなく始まって10分で寝てしまうこの映画。教えてくれた息子に感謝したいです。