
『アンを探して』東京公開から2週間を切りました!ここで、主役の穂のかについてお話したいと思います!
最愛の祖母と一緒に来るはずだったプリンスエドワード島。祖母の死でその夢が叶わず、一人島に降りたつ女の子・杏里を演じてくれたのは、日米共同製作の『はりまや橋』で一足先に国際的な共同製作の現場を体験した19才の新人女優、「穂のか」です。
さて、映画製作の撮影二週間前には魔物が住むといわれている。
杏里役には、たくさんの女優さん達が候補にあがったが、海外での長期撮影ということでスケジュールが合わなかったり、いい線までいったが単身で海外に来て欲しいという要望が事務所に受け入れられずドタキャンになったり、杏里役は揺れに揺れ、撮影2週間前に主役がいないという事態になった。
ということで、穂のかっていう子がいるよ、ということで顔合わせをしたのは、なんと私がP.E.I.に現地入りした後、つまり、コンピューター上、i-chatという、インターネットを通じての、オーディションとなった。
でも、さっきもいったように、映画製作にはこういうトラブルはつきもの。イチイチ悲観的になっていられない。彼女(穂のか)がダメならダメで、別の道がある!とにかく、気を取り直して、ネットでのオーディションに踏み切った。
簡単な自己紹介をしてもらい、様々な質問をする。
ハワイに二年間留学して英語は日常会話やヒアリングは問題ないこと、趣味や夢などの話しをしてもらう。元気よく快活に話す穂のかをみて、この時は、大人しい杏里のイメージとの差に、私は内心、戸惑った(笑)!
そして、いよいよ、読み合わせ。
穂のかにしても、急な話しで、脚本を渡したのが当日で一回通して読むぐらいの時間しかなかった。また、私自身「コンピューター上で、役者の演技を判断してもいいのか...?」という大きな不安があった。しかし「アクション」の声で読み合わせがスタートすると、さっきまで元気だった19才の女の子・穂のかの表情がフッと変わり、最愛のおばあちゃんを失った「杏里」に切り替わった。
ちなみに、俳優という職業ほど特殊な職業はない。カメラは誤摩化せないから、どんなに努力をしても、俳優としての素質があるかないかは、一目瞭然であり、作品に大きく関わるため、厳しい目でオーディションするのは当たり前だ。
例えば「一人部屋にいてノートをみる、」というシーンでも、そこには監督、カメラマン、カメラ助手、照明さん、小道具さん、メイク、ヘア、衣装、、と最低10人以上の人が待機している。その中で集中力を保つのは至難の技だ。
他のキャラクターとのシーンや、大がかりな屋外シーンなどは多い時には40人近くのキャスト・スタッフがセットにいる。そんな中で、カメラ位置、タイミング、見せ方を把握しないといけない。しかも、映画の場合は当たり前だが、順撮りではない。撮影1週間で映画のラスト部分を撮ることは日常茶飯事。同じ日でも物語りの初めと終わりを演じなければいけない。撮影スケジュールによって、監督の指示のもの、演技を調整する。もちろん、たとえ急にセリフが変わっても、脚本とシチュエーションが変わっても、人物を自分のものにし、演技する。映画の顔となり、華やかなイメージしかないかもしれないが、俳優は画面からは想像できないほど、大変な仕事なのです。
後で聞いた話しだが、穂のかは、演劇学校などには通っていない。そのかわり、年に100本以上は映画を観て、自分なりに演技について、考え、実践している。その演技力と勘は申し分ないものがあった。
ただ、まだインターネットで見ているだけで、不安は拭いきれない。映画を背負う主役だ。重要すぎる決断だ。一晩考え、結論を出そう、と思い、私はもうオーディションを終わるつもりで、穂のかに聞いた。「じゃあ、最後に、何か質問ある?」
思いもしなかったことに穂のかから、堰を切った様に、矢継ぎ早の質問が飛び出してきた。
「カントク、杏里ちゃんの英語ってどれぐらいのレベルなんですか?」
「カントク、杏里ちゃんは 親切なマリさんに 心を閉ざしてますけど、どうしてですか?」
「カントク、杏里ちゃんは どういう環境で育ったんですか?」
穂のかの質問に答えながら、一筋だけ残っていた心の中の不安は、どんどん無くなっていった。
時間がなかった中、一度や二度、脚本を読んだだけで、この子は「杏里」を、一生懸命取り込もうとしている。
そういう自発的なエネルギーは、ネット上でもビンビン伝わってきた。
当時は、19才という、まだ親に甘えて生きておかしくない年齢。
または、「とりあえず大学は...」という選択をしてもおかしくない年頃。
なのに、芸能界という厳しい世界で、女優としてキャリアを築きたい!と、固く決意している根性も気に入った。
そのエネルギーや根性はそれまでの杏里役候補の中でもピカイチで、長い歳月をかけて育てあげた私の「杏里」を、この子にだったら、任せられる。そう確信した瞬間だった。

劇中では大人しめの女の子杏里を演じる穂のか。でもセットではいつも元気一杯で、共演のロザンナさんと共に、場を明るくした。

恋する女の子の微妙な真理を、こそこそ話し合う、私と穂のか(笑)。

「ロブスター、どうやって食べるの!?」
穂のか☆ザ・ナチュラルボーン・アクター その2に続く。
By Takako Miyahira
Photo By Noriko Fujimoto
最愛の祖母と一緒に来るはずだったプリンスエドワード島。祖母の死でその夢が叶わず、一人島に降りたつ女の子・杏里を演じてくれたのは、日米共同製作の『はりまや橋』で一足先に国際的な共同製作の現場を体験した19才の新人女優、「穂のか」です。
さて、映画製作の撮影二週間前には魔物が住むといわれている。
杏里役には、たくさんの女優さん達が候補にあがったが、海外での長期撮影ということでスケジュールが合わなかったり、いい線までいったが単身で海外に来て欲しいという要望が事務所に受け入れられずドタキャンになったり、杏里役は揺れに揺れ、撮影2週間前に主役がいないという事態になった。
ということで、穂のかっていう子がいるよ、ということで顔合わせをしたのは、なんと私がP.E.I.に現地入りした後、つまり、コンピューター上、i-chatという、インターネットを通じての、オーディションとなった。
でも、さっきもいったように、映画製作にはこういうトラブルはつきもの。イチイチ悲観的になっていられない。彼女(穂のか)がダメならダメで、別の道がある!とにかく、気を取り直して、ネットでのオーディションに踏み切った。
簡単な自己紹介をしてもらい、様々な質問をする。
ハワイに二年間留学して英語は日常会話やヒアリングは問題ないこと、趣味や夢などの話しをしてもらう。元気よく快活に話す穂のかをみて、この時は、大人しい杏里のイメージとの差に、私は内心、戸惑った(笑)!
そして、いよいよ、読み合わせ。
穂のかにしても、急な話しで、脚本を渡したのが当日で一回通して読むぐらいの時間しかなかった。また、私自身「コンピューター上で、役者の演技を判断してもいいのか...?」という大きな不安があった。しかし「アクション」の声で読み合わせがスタートすると、さっきまで元気だった19才の女の子・穂のかの表情がフッと変わり、最愛のおばあちゃんを失った「杏里」に切り替わった。
ちなみに、俳優という職業ほど特殊な職業はない。カメラは誤摩化せないから、どんなに努力をしても、俳優としての素質があるかないかは、一目瞭然であり、作品に大きく関わるため、厳しい目でオーディションするのは当たり前だ。
例えば「一人部屋にいてノートをみる、」というシーンでも、そこには監督、カメラマン、カメラ助手、照明さん、小道具さん、メイク、ヘア、衣装、、と最低10人以上の人が待機している。その中で集中力を保つのは至難の技だ。
他のキャラクターとのシーンや、大がかりな屋外シーンなどは多い時には40人近くのキャスト・スタッフがセットにいる。そんな中で、カメラ位置、タイミング、見せ方を把握しないといけない。しかも、映画の場合は当たり前だが、順撮りではない。撮影1週間で映画のラスト部分を撮ることは日常茶飯事。同じ日でも物語りの初めと終わりを演じなければいけない。撮影スケジュールによって、監督の指示のもの、演技を調整する。もちろん、たとえ急にセリフが変わっても、脚本とシチュエーションが変わっても、人物を自分のものにし、演技する。映画の顔となり、華やかなイメージしかないかもしれないが、俳優は画面からは想像できないほど、大変な仕事なのです。
後で聞いた話しだが、穂のかは、演劇学校などには通っていない。そのかわり、年に100本以上は映画を観て、自分なりに演技について、考え、実践している。その演技力と勘は申し分ないものがあった。
ただ、まだインターネットで見ているだけで、不安は拭いきれない。映画を背負う主役だ。重要すぎる決断だ。一晩考え、結論を出そう、と思い、私はもうオーディションを終わるつもりで、穂のかに聞いた。「じゃあ、最後に、何か質問ある?」
思いもしなかったことに穂のかから、堰を切った様に、矢継ぎ早の質問が飛び出してきた。
「カントク、杏里ちゃんの英語ってどれぐらいのレベルなんですか?」
「カントク、杏里ちゃんは 親切なマリさんに 心を閉ざしてますけど、どうしてですか?」
「カントク、杏里ちゃんは どういう環境で育ったんですか?」
穂のかの質問に答えながら、一筋だけ残っていた心の中の不安は、どんどん無くなっていった。
時間がなかった中、一度や二度、脚本を読んだだけで、この子は「杏里」を、一生懸命取り込もうとしている。
そういう自発的なエネルギーは、ネット上でもビンビン伝わってきた。
当時は、19才という、まだ親に甘えて生きておかしくない年齢。
または、「とりあえず大学は...」という選択をしてもおかしくない年頃。
なのに、芸能界という厳しい世界で、女優としてキャリアを築きたい!と、固く決意している根性も気に入った。
そのエネルギーや根性はそれまでの杏里役候補の中でもピカイチで、長い歳月をかけて育てあげた私の「杏里」を、この子にだったら、任せられる。そう確信した瞬間だった。

劇中では大人しめの女の子杏里を演じる穂のか。でもセットではいつも元気一杯で、共演のロザンナさんと共に、場を明るくした。

恋する女の子の微妙な真理を、こそこそ話し合う、私と穂のか(笑)。

「ロブスター、どうやって食べるの!?」
穂のか☆ザ・ナチュラルボーン・アクター その2に続く。
By Takako Miyahira
Photo By Noriko Fujimoto
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