＜アメリカの事件＞
最初は、自動車の工場の中かと思った。映画で見た自動車工場に似て見えたからだ。
長いベルトコンベアーが動いていて、２０ｍくらい先に立っている白人の男が、身振りで私にコンベアーの上に乗れと言った、まるで遊園地で遊ぶように。私は男に捉まらないように、首を振り、後ずさりした。コンベアーの上には何も流れていなかった。
男の背後に、私と同年代の、つまり七歳くらいの白人の男児が見えた。男は振り向くと、軽々と男児を抱えてベルトコンベアーに乗せた。男児は私の横を通り過ぎる時、手を伸ばして、私の服を掴もうとした。
次の瞬間、ガツンと何かが機械にぶつかる音がして、肉塊が飛び散った。
私をアメリカまで連れて来た中年の皇宮護衛官と、もう一人は宮内庁の職員だったのだろうか、みんな逃げてしまった。子供をコンベアーに乗せた男も逃げてしまった。アメリカの警察が、現場に着いた時、そこにいたのは私だけだったと言った。