短冊に願いを

７月７日。

知る人ぞ知る　七夕祭り。
織姫と彦星というカップルが１年に一度逢えるという日。

なんで１年に１度しか逢えんようになったかというのは
諸説いろいろあるんやけど　ぶっちゃけ
色ボケの彦星が仕事もせんと織姫と遊んでたから
罰を受けたという話をさっき小泉から聞いた。
（それが正しいんかは不明）

『せやからな　あたしも大谷と遊んでばっかりせんと
　　やる事しっかりせんなって思った。』

『へーええ心掛けで（笑）そしたら明日のおデートは
　　中止の方向で…『えーーーーーー。』』

『おまえ課題終ってないって泣いてたやんけ』
『な…ないてないもん。』


他愛のない会話を続けながらオレらは歩いた

商店街のアーケードを入った時

『あっ大谷　アレなんやろ？』

小泉は　スーパーの横にある何かを指差した。
その方向に有ったんはでっかい笹。

近づくと色とりどりの短冊が沢山のメッセージと共に
飾られてあった。

『なぁなぁ大谷。あなたの願いをこの笹に飾ってください

やって　書いて行こっ（笑）』

笹の横にあるテーブルには　短冊と各種筆記用具が置いて

あった。

用意周到とはこのことなんか?

『これ　ガキ用のもんやろ？オレら大人やんけ…』
『ガキ用って七夕に年齢制限はないでっ』

『いや　そんな問題やなくて…』

『あー。もぉー大谷は　先生になるんやから七夕に参加せ

んなあかんっ』


大谷は先生になるんやから…
大谷は先生になるんやから…

そう言われ机に座らされ『はい　短冊とマッキー』と
手渡されたらもう書くしかない

小泉は隣にどさっと座りこみさっさと手に短冊を持ち
キラキラポスカなるもので何かを書き始めた。

ほんま　こいつガキみたいやな（笑）
小泉は百面相しながら『何書こっかなぁー』と笑う。
実は最初の１枚を失敗したんはいつものご愛嬌。

『大谷　書かへんの？』
『んーーーーーーー考え中。書く』

２枚目も失敗。３枚目にチャンジ中の小泉を覗き込む

『しっかし相変わらずの字やな（笑）』
『大谷のスケベ　覗かんといてよ』

『スケベってなんもしとらんやろ』
『ええから　見んといてよっ　減る』

『はぁ減るって何がや？そんなんしとったらまた失敗すん

ぞ』
『うっしゃい。』

そんなこんなでオレは２枚目
小泉は４枚目で短冊を無事に書き上げた。

★★★

『小泉。おまえ願い事　なに書いてん？』
『…べ…別に…』

『はぁ？別にっておまえは　なんたらエリカか（笑）
　　自分　むっさ真剣な顔して短冊書いとったやんけ』

『…内緒』

小泉はそう言いながら短冊を隠した。
そんなにオレに見せるんが嫌なんか？

『ちょ…なんやん。内緒って』
『内緒なもんは内緒や』

『もしかしてオレの悪口とか…』
『彼氏の悪口わざわざ短冊に書くとかせえへんよ』

『ほな　なに書いてん』
『…秘密』

『小泉』
『個人情報保護法適応や』

『はぁああああ』

なんやわけのわからん理屈

別に短冊ぐらい見ても見んでもええやんけ
なんて思いながらも　気になるオレ

『あーーーーーーーーー』

『な…なんなん大谷。』

小泉の意識を別の方に向かせて短冊を覗き見しようとした

『小泉　スキあ…『そうはトンヤがおろさへんでっ』』

小泉は短冊を手に持ち高く掲げた。

こいつずっこい。
オレの背がアレなん利用して見えんようにするなんて

『…なんやねん　おまえは（笑）ソレは反則や』
『だってぇー大谷が乙女の…』

『はいはい。』

なんか可笑しなってオレは笑った。

★★★

いつまでもここで漫才しとるわけにもいかんので
オレらは短冊を吊るすことにした。

オレはなるべく目立たん笹の葉の内側に自分の短冊を吊る

した。

小泉は　その反対側
やっぱり笹の内側に短冊を吊るした。

『で…小泉　おまえなに書いてん』
『せやから秘密』

『なんでやねん。やっぱオレの背が縮むようにとか…』
『そんなん書かんわっ』

そこまで隠す願いってなんやろう。
けど　まぁしつこく聞くんもアレやし…

話題を変えようとした時

『だってゆうたら願いかなわんくなるやんか…』
『えっ？』

小泉曰く　短冊の願い事は人に言うとかなわんくなるらし

い。けど飾った時点で誰かに見られるのはどやねん。

『叶わんくなったらややもん。』
『んーーーーー。それは嫌やなぁ（笑）』

こいつって時々ほんま可愛いなぁって思う。
そんな叶わんくなったら嫌な願いはなんなんやろ…

けど…

どうせオレの願いと大差ないやろなって思ったから
それ以上は聞かん事にして話題を替えた。


『なぁ小泉明日の楽しいデートの話やけど…』



ｅｎｄ