さよなら

『なんやねん…このタイミングのええ　雨は…』

オレは　雨に降られた

その前には　彼女に振られた。

さっきまで　晴れていたはずの空は　泣き出してしもてた
オレの気持ちに　シンクロしてんのか　思ったらわらけてきた。

傘なんか　もってないから　雨に降られて　身体が冷たい。

空から　零れるように落ちてくる水が　オレの肩を叩いてきた。

肩たたくやなんて　オレん事　慰めてるつもりなん？

空を睨むように上げたら　前髪がかかったが、かきあげようとしてやめた。

『前髪　うっとぉしぃ…なぁ…きらんな　あかん…』

神崎が、髪のびたねーなんて笑いながら切ってくれたんは、もう半年も前。

バスケ部の部室で　100均で　こうた　怪しげなはさみで…

『あつしくん…ほんまにええん？』
『ええよっ　ばしっと　やって…』

『えいっ…あっ　斜めになった…。』
『あ゛ーーーーーーー。』

そんな風に　笑い合っていたときから、半年。


繋いだ手は冷え切り、唇からは呼気が漏れて…涙なんか　流れたりする

情けないなぁ…

雨に濡れ、寒いなんて思わんけど
触れ合わない指　伸ばした指の　がらんどうな空間が、酷く冷たい。

『はぁ…あほか…べつに　ええねんっ…』

そう呟いても、やっぱり雫は残酷なまでに優しく　慰めるように頬を撫でた。


雨に降られて　彼女に振られた。

どんっ…　誰かにぶつかって　その場に尻餅をついた。

『あっ　ごめんっ…。大丈夫？』
『気にせんといて…』

『あの…これ　傘　よかったら使って…２本あるし…』
『けど　もう十分に濡れてて…』

『ええから　使ってっ…はいっ』
『ありがとう…。』

オレは　ウサギの顔の柄の付いた傘を受け取った。
せやな　わざわざ濡れる必要もないな…。

雨に降られて　彼女に振られて　そして　ウサになんか　救われた。


end