存在価値⑯（完）

『大谷さん　今話題のアホねえちゃん。二階に捕獲しといたで』
『おぅ。』

『がんばってな。アホにいちゃん(笑)』
『あほ　あほゆうなって(笑)』

オレは立ち上がって小泉の部屋へと向かった。


コンコン…。

一応ドアをノックしても中から返事はなかった。

『お邪魔しますよっと…。』

ドアを開けるとベットの上で小泉は眠っとった(笑)
寝る子は育つってゆうけど寝過ぎやぞ。

起こさないようにベットに腰を掛ける。
ホンマは起きてほしいんやけどな…

久々に見る寝顔がなんかいとおしい。
そっとその頬にキスするとしょっぱい味がした。

よく見ると涙の跡。

小泉はいつも笑っていた。泣かんかった。
オレをいつも笑顔で応援してくれていた。
どんな時も自分よりオレを…

そんな小泉

酔っぱらってたとはいえ…酷い事してしもた。
松田先生からどんな話をどんな気持ちで聞いたんやろう

『ごめんな…。小泉…。迎えに来たで…。』

耳元でつぶやく。

『リサ…。』

面と向かって呼ぶのがハズい…名前を呼ぶ。
そしてぎゅっと抱きしめた。

『逢いたくないなんて言わせたんはオレやな…ごめん。』

『……』

『全部思ってる事話すから…鈍感なオレでほんまごめん』

小泉の髪をなでると
その瞳が開いた。

『お…大谷？』
『お…おぅ』

『ちゃんと話もせんと飛び出してごめんなさい。』
『オレが悪いねん。酔っぱらって…。』

小泉の瞳がオレの瞳を見つめる。

『ほんまアレはショックやったわ。知らん人とチューとか…』
『チューしたんかなぁ？』

『えっ　覚えてないん。また…』
『またってゆうなっ　』

『せやかて　あたしとのファーストちゅーも…』
『あ゛ー』

『……大谷やからしゃーないわ(笑)』
『なんやそれ(笑)』

ふたりに笑みがこぼれた。

今や大谷敦士。車の中でずっと復唱していたやろ
どんな感じに言葉にするか迷ってたけど…

けど…

『リサ…。オレと結婚してくれ。』

どんなに言葉を飾っても…
歯の浮くセリフゆったとしても重要なのは一つだけ

『オレおまえがおらんとやっぱしあかんねん。』
『お…大谷。』

『結婚してくれるか？』
『うっ…うぇー』

小泉の瞳から大粒の涙が落ちる。

『こ…こいずみ…その嫌やったんなら…』
『ちゃう　ちゃうの…嫌やないねん』

『ほな結婚してくれるか』
『アホなあたしでよかったら…う…ぇ…』

オレもアホやし丁度ええやんけ(笑)
小泉の唇に自分の唇を重ねる。

キスしたの…何日ぶりやったっけ
やっぱしキスしたいんも　アレしたいんもこいつしかおらん

『あたし女としてなしなんやろ？』
『あほか　おおありや。なんならここで最後までシテも…』

『もー！エロ王子君臨やん。』
『小泉専用のな(笑)』

惚れたんは小泉が先なんやけど…
メロメロなんは結局オレ。

『一回しかゆわんぞ』
『ん？なに？』

そして耳元でささやく

『愛してんで…リサだけや』

★★★

その日は結局小泉家にて泊まることになった。

とにかく小泉に今までの事

家事を押し付けてしまっていたこと
負担に気が付かなかったこと

酔っぱらった時の醜態

松田先生に言った事は本心ではないこと
あの人と浮気する気もない

以上の事を謝り倒した。

『あたしもちゃんと話せんかったし…我慢し過ぎやったし
　大谷より松田先生を信用してしまったんほんまごめん』

『うん。』

『けど…。松田先生に関してはいっーぱい言いたい事あんねん』

『へっ』

なあ小泉

おまえの存在ってオレの中でめっちゃ大きいって気が付いた。
このまま家でて別れるなんて言われたら
生きていけへんなんてゆうたら言い過ぎか(笑)






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