プレゼントは…

見慣れた薄茶の髪の毛の向こう側に
これまた見慣れた部屋の天井が見えてる。

あたしは上に覆いかぶさってる人

大谷敦士という彼氏様にベットに押し倒されとってん。


『あ…あの大谷　これは何?』
『…何って　ゆわんなわからん?』

いや　ゆわれんでもなんとなく理解しとるんやで?

理解

理解してるはず

頭の中で整理整頓

まず…

『大谷敦士くーん　おったんじょうびおめでとー』って
おっきなクラッカー鳴らして　その音が大きすぎて
大谷に呆れられてん。

そのあと　普通に今度の海坊主ライブがどーとか
学校がどーとか　のぶちゃんが帰ってくる話とか
他愛のないことばっかししゃべっててん

でな

コーラがなくなってて追加で飲み物持ってくるってゆうたら
あたしの世界がくるっと反転というか


押し倒された?

『といいますか　なんであたしは大谷に押し倒されてんの?』

もしかしてわざと足ひっかけて転ばせたとか
大谷がふらついてあたしにもたれて道連れにしたから

『なんでって…わからんのか?』

わかったらなんでなんてゆわんやんかぁ
大谷の目をじっと見つめて答えを促すと

『…　したい　から』

『し…したいって…な…なにをっ』

慌てるあたしの耳元にささやかれた言葉は
『小泉の事が欲しいから　したい。』なんて言われた


誕生日やからええやんってのぶちゃんや他の友達にも言われたし
それなりの覚悟もしてきた
(新品の上下お揃い下着とか…)

けど誘うにしても『したい』なんてはっきり口にするやなんて
ムードもへったくれもなんなないやんっ


付き合いだして数年
もとからムードとは縁がないけど…やっぱり女の子やもん
彼氏からのお誘いは　それなりにしてほしい。

『ほな　なんてゆうたらええねんっ』
『そ…そんなんっ』


改めてあたしにそう聞かれても…

乙女ゲーみたいに言葉攻め…　キス攻め…いやそうやなくて
大谷オリジナル展開の何か…


んーーーーーー


それを言葉にしようと考え込んでると

『…いやならええで　嫌々して欲しいとは思わんし』

その言葉と同時に　あたしは大谷から解放された。
大谷は　ちびっとふてくされたような空気で座り込んだ。

何ひとりで誘って　勝手に決めて　結論づけてんの?

『大谷…　女の子にそんないい方せんといてよ。』
『……』

黙り込む大谷の背中をぎゅっと抱きしめる。

『嫌やなんてゆうてへんやんか…空気よんでぇや』


だから…

大谷　あたしを誘って…。



『なんやねん　それ』とか言いながらも大谷はあたしを抱きしめた。


END