1001タイ映画、千夜一画 

タイ映画またはショートフィルム他で心の琴線に触れたアーカイブ。

I Love Him(B級18禁映画の背景)

2006-01-04 02:42:30 | タイ映画
 タイの日常ドラマ。パタヤというのはバンコキアンにとっては「ハレ」と「ケ」、つまり日常と非日常という関係なのだろうか?パタヤで何かしらの新しい絆ができる場でもある。普通はパタヤはこの映画のように男女の関係強化とか、もうすこしマシになるとセミナー会場としての非日常があるわけで「ケ」を偽装した「ハレ」もある。だいたいあんな汚染された海で恋人と戯れるというのは負の”ハレ”で後で皮膚がハレれるのは間違いない。ストーリーはタイのソープオペラに少しだけ男女の絡みを増量しただけのB級映画でこれは映画館用ではなく最初からVCDのための作品なので「ケ」の連続で、しかも正妻の浮気やミヤノイ(妾)の話などタイでも「ケだらけ」の世界である。

歌手業(?)をしている主人公が妻子のある男と偶然ホテルのロビーで出会う。これもパタヤに多いCONDTELというものでホテルとコンドミアムが混在している物件である。分譲で購入してもいいし、またオーナーがホテルとして部屋を資産運用できるシステムだ。ここには資本投資という経済論理だけでカルチャーがないのでサブカルチュアーも存在しない。つまり副次的な経済環境が全面に押し出される映画は男女間の密度がいくら濃厚でもあの非現実的な大きなプールと同じくらい薄平ったいものになる。

政府や右翼団体はしきりとタイの伝統を若い世代に押し付けようと努力しているが、タイの伝統って何だろうとーーー?外国人が思う以上に彼らの戸惑いと苦悩が伝わってくる。丁度、日本文化がその昔に中国から伝承されたアレンジものというオリジナルの区別が付きにくい状況に似ているが、文献や情報の少なさは纏める側にとってみれば好都合なのかもしれない。考える前に国に忠誠を誓い、現体制にワイをする。この態度を示すことで人権は守られ生命の安全は保証される。この不完全なシステムを最大限に利用するのが為政者でいまのタクシン首相の傍若無人ぶりを生んでいるので、これに少しでも異を唱えようとするものは国籍を問わず国外追放という憂き目に合う。まさに監獄は海外とばかりだが、物価の高い先進国での暮らしはまさに経済的島送りで、さすがにタイ国一番の所得の高さは伊達ではない。

そうサブカルの話だが、海賊版の負の遺産で文化の足を文化が食らっていた状態も少しは好転し、まさに文化が醸造しそうな時にまた中国という元気な大文化が思考を急停止させている。
つまり、この間の世論調査では65%以上の華僑系タイ人が中国のDNAを有することに誇りと優越感を持っているという意識調査がでていた。気楽な外国人としてはサブカルの前に二流市民(事実戦前の移住者はそうだった)のレッテルになるぞとタイ人のコンチーン二世に警告してみせるのだが、どうも中国語も利益優先という親の先行投資のような気がしてくる。


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