Khon Len Khong (Art of The Devil) 因果が感じられない黒魔術

ホラー映画に必然性なんて・・・と悩む問題ではないが、この映画は本当に隠された意図があるかもしれない。お金持ちの男がガールフレンド（ブン）を妊娠させ、男は手切れ金を渡すかわりに海岸でチンピラを雇ってレイプをする。女は復讐に燃えて重身の体で男の家族を次々に皆殺しを決行、本人もピックアップに敷かれてあっけなく即死してしまうが、話はここから。その男の財産は前妻の娘が相続するが、あまり因果関係のない家族にもピー（お化け）となって復讐をするというなんとも復讐する必然性の感じられない当たり前だが、映画のために練られた三流ホラー映画。女優達はタイを代表する不満顔。これが演技としたら凄いのだがどうもこれは地の姿だだろう。

だいたいタイの夕方から始まる夕メロの舞台となるような豪邸は普通の分譲住宅で相場価格はピンとくる。こういう郊外にあるムーバーンとよばれる分譲は、まず地の利が悪く車が家族一台にないと実生活は無理。それと昼間の盗難防止のためのお手伝いさんと気の遠くなるような冷房のための電気料金請求書。というわけで幾らこういう家を相続しても自分では住まないで賃貸にするほうが無難（たいがいがゴルフ場付きといううたい文句に買ってしまう）。そういうわけでバンコク都内に普通のアパートに高級車が停まっているが、週末だけ自分の家に帰るという家族もたくさんいる。勿論、だんだん面倒になって年に一回というケースもあり、もう少しすると邸宅の存在もどうでもいいようなものになっている友人を沢山しっている。

この映画で一番怖かったのが、妖怪バスターの存在でいかにも実在していそうなのがバンコクだ。タイでは交通事故や殺人事件のときに真っ先に駆けつけるのがOO慈善堂とピックアップに堂々と名前を宣伝してサイレンをパトカーのように鳴らして急行する。彼らの救命と死体処理の現場写真は新聞社などに引き取られて、こうした写真を分析して今後、呪い処理のためのコンサルを職業とする人間達だ。現代の妖怪バスターはITのデータベースを駆使して呪いの傾向と対策を練ってピーと戦うが、あくまで無実な被害者のみの救済と考えるのが普通だ。

映画の解説書では黒魔術と書いてあるが、これはキリスト世界での意味とは異なっているようだ。タイではヒンドゥーからの影響と思える精霊信仰やローカルのブードゥー教が裏信仰として仏教もキリストもイスラムなどの多神教もホラーの伏魔殿で夜の暗や生臭い冷気という空間に人間の恐怖を肌で感じる。さて現代の東京ではどうなのか。少しオーバーに超変態カルト国家と位置付けて方々を見渡せば、血の臭い放つ触感とデジタルのアンテナが混合し磨ぎすまされた感性で人間の「未来への希望を持てない病気」という心の恐怖を煽っている。不安の世紀だ。

Starring : Supaksorn Chaimongkol, Tin Settachok
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