1001タイ映画、千夜一画 

タイ映画またはショートフィルム他で心の琴線に触れたアーカイブ。

The Bodyguard(2004)

2005-11-28 22:27:45 | タイ映画
 バンコクで間違いなく頭が狂っていると思われる格好が、ロングコートの着用だ。映画『マトリックス』の成功でこういうスタイルが影響しているのだろうが、だいだいスーツだって赴任してから一週間もしないうちに上着はもうタンスの肥やしに。ハリウッドスターのような美男美女や大金持ちでもなく普通の人々に夢を与えるのが映画とすれば、こういうコメディアクション+パロディの作品を制作する主演のMum Jokmokは偉大なアーティストだ。すごいのは当時Ong Bakで世界的な成功を納めた相棒のJaを特別ゲストで出演させオリジナルのパロディ=パロディにしてしまうというイサーン・マジックが小気味いい。といっても外国からの評論は「リズムの欠如」と辛口だが、タイの時空間を経験したことのない「不幸な人々の戯言」と軽く受け流したい。でも面白い評論もあった。SWATの出番の失敗と意味不明な母音言語を操る悪者ボスとの韻を踏んだ関係付けだ。こちらはあの場違いな衣装で登場するスキンヘッドの子分の役割にこの作品のヘソを見いだしたのだが。

Munの先勝記念塔付近でのヌードアクションは他の作品でも定番だし、それを阻止する警官の下ネタギャクも作品名を意識しないで笑える作品だ。アクションの車の炎上シーンは合成だと思ったら実際の撮影で、確かあの辺はサイアムセメントの敷地。二台の衝突を合成で四台にしたのだろうか聞いてみないとわからない。イサーンのカルチュアーパワー。例えばルークトゥンであったりケーンの響のようなもの悲しく、またダンスのような陽気な各フレーズが都会で生きてゆく同胞に力を与えるのである。この延長線上にトムヤムクンのような世界を席巻するような作品が生まれた。つまりイサーンの有権者を意識しないとタイの政権も揺らぎ、好調なローカル映画産業を支えているのも草の根のイサーン人である。

スラム内の自治代表達はタクシン、コーン、チュアンなどタイを代表する政治家のそっくりさんというのも定番だし、カオサイ兄弟などの元有名ボクサーの添付も欠かせない映画の調味料。つまり、レシピ通りに料理さえすればコンスタントな利益が確保されるというGNP成長時代のなせるワザなので、こうした利益を社内留保してカンヌなどを狙う制作資金に流用しようと・・・・いうことがあるくらいならサハモンコンで真面目に将来の映画監督を目指しながら事務をやっている青年にチャンスをということにはならないのかな。相続税がないので、こういうお金持ちはいつまで経っても金持ちかというと、実際のビジネスは厳しいのでそうでもなく、浮き沈みが人生だ。でもMum Jokmokはこれからやってくる乾期に備える必要もなく、そして「トムヤムクン」の興行的成功でイサーン文化を世界に向けて発信していくだろう。

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