1001タイ映画、千夜一画 

タイ映画またはショートフィルム他で心の琴線に触れたアーカイブ。

Happy Berry タイ新進の監督によるドキュメント作品

2005-04-30 23:06:45 | Weblog,
監督から直接「Happy Beddy」のDVDを受け取った。先週バンコク日本人の面白いエピソード(つまり自分のこと)を正直に話したら興味を持ってくれて「あなたは信用できそうだから」と特別に日本での販売権を委託してくれるそうだ。サイアムスクエアといえば昔は学生の街、いまではバンコクのサブカルチュアーの発信基地として有名で毎日何かの販売促進を街頭で行っている。映画の舞台はここに実在する横町ブティックで若い女性オーナと仲間達の人間模様が赤裸々に描かれている。最初この映画のスチールを見たときはタイ人が主役とは思えないほど金髪の若者が登場していたが、一昔前なら完全に低収入層に属するに違いない奔放無謀な若者達こそ小さなファッション店を舞台に一ヶ月に普通の公務員の一年分を稼ぎ出す成り上がりビジネス集団なのだ。ビジネスといっても自分のデザインしたTシャッやジーンズといったオリジナル製品の販売で趣味なのか、クラブ活動の延長なのかと思うほど遊びながら真面目に友人や恋人とお店を仕切っている。
これだけなら監督が「タイ人には見せないでくださいね」と念を押されたりしないが、果たしてどういうタブーが出てくるのか楽しみにしていたが、どうも人間関係の仕切があいまいというタイ社会の伝統的な一面を垣間見ることができるのだ。
 オーナらしき女の子の恋人はどうも両刃使いの遊び人で元有名な歌手だったという彼氏や男性モデルと寝ているのは間違いないし、お店の他の女の子達と関係している。また女の子達はというとレスビアンの経験もあり下半身では皆兄弟という関係なのだ。彼女達が共同で生活しているらしい見晴らしがいいサトーン近辺の高層コンドミアムではたぶん毎晩カラオケ大会が行われ男女入り乱れての乱交が・・と思うが意外に「個」の部分にあまり深入りしないタイ人気質であまり深刻に受け止めていないし、考えていない様子。
都会生活の孤独を癒す方策にあまり性別は関係なく個人の好みを優先する・・・という原則が凝縮している。つまり自分の責任の範囲で「サバイ・サバイ」を追求する集団なのだ。サバイとマイペンライというタイ語は日本語では表現できない現地の生理言語だ。一体どういう状態がサバイ(タイ語の快適とか気持ちいい状態)というか?またはマイペンライ(ケセラセラ)というのは迷惑を掛けた能動的な場合でも言い訳として使用するので私なんか直ぐに口喧嘩になる。
 マイカーで高層コンドミアムから通勤するだけで一般的にはサバイの状態なのだが、彼女とその仲間達は芸能プロにポップグループとしても登録していて地方への巡業なにかに出かかる姿はタイの政治の暗黒部を連想させる。つまり都会よりも票田はイサーン(タイ東北部)。都会派議員がイサーンの衣装と花のレイを掛けられて恥ずかしそうに選挙運動をしている姿がニュース番組を賑わす。タイの地方都市はトムヤム西部劇さながらギャングが横行し、中世のような暗黒社会という一面がある。こういう地方出身の若者にとって慣れない都会での生活の孤独感は計り知れないが、大学(ラムカムヘン大学などのオープン大学で働きながら学位の取得が可能)のクラスメートだったという彼氏は彼女がむしろ積極的にアタックしたのだろう。ちなみに女性に比べて男性が少ないタイの若い女性は能動的にアタックをしていつも傷ついているような気がする。彼氏がゲイだったりギャンブルに目がなかったり浮気性だったり、外人がみてもまともに定職を持っている男は少ない。そうしたわけで女性が同性に走るというのもうなずける。またタイの男だって受験競争で若い時からふるいにかけられるのでその口やかましい母親からのプレッシャーをかわしたり失望で感受性の強い人間ほど_つまり頭がいい人ほどゲイになりやすいのかもしれない。
 先週、コンピュータを調整に日系企業へ出向いたら有名大学の日本語学科卒の美人秘書が「日本人と結婚はいいですか」と聞いてきた。こんな純正培養された素直でスタイル抜群の美人、しかも日本語が堪能な娘が嫁不足の日本で婿探しなんかしたら一日もしないで彼氏が見つかるのは間違いない___と思いながら何かの時にとメールを渡した。つまり彼女のようなエリートも結婚問題で悩み傷ついているので二回り以上も年齢が違って私のようなヤクザに警戒心もなく相談を持ちかけるのである。やはりまともな教育と仕事をしている男の絶対数が少ないのである・・・と考えたが結婚後のタイ女性の豹変ぶりに複数の友人からいつも聞かされれているので再独身の我が身であっても「君子危うきに近寄らず」といい聞かせながらメールだけは聞いてきたのも貧乏根性かそれともお節介なのか。このドキュメントタッチの映画はまさにタイ社会の箱庭。若い世代があまり売り上げに追われることなくビジネスと歌手をそして恋と精一杯生きられるのは本当に羨ましい。この映画は監督が手持ちのビデオを持ちながらロジャー・ムアーのように取材する実録だ。彼はタイの映画祭は最低だといってタイのインディー映画の代表各でありながらノミネートを断っているという。台北と山形で交代に開催される映画祭りのドキュメント部門で4位になった実績があるだけにタイの映画会社からの資金的援助のオファーも頑なに断り続けているという硬派だが、私には今度のコメディー映画のスポンサーが欲しいと控えめに相談してくれる。彼のような問題意識を持った社会派の映画の題材にはここでは事欠かないが、命と引き替えになるのは間違いないだろう。

2004 / mini DV / sound / colour / Documentary / 76 minutes
Producer : Roger Garcia , Co-Producer : Happy Berry , Director of Photography : Thunska Pansittivorakul , Editor : Thunska Pansittivorakul,Sopon Sukdapisit , Sathit Sattarasart , Cast : Roampol Rochanakit , Chayathip Rungpungtong , Chatthip Chanlertfa, Wanwimon Nuntavijarn, Sura Thirakol , Reomrumpai Rochanakit

Synopsis
Happy Berry is the name of a Bangkok boutique run by a group of trendy Thai youths, and is the nerve centre of this fly-on-the-wall documentary (the second in a trilogy entitled "Love and Life"). The camera catches the subjects indulging in all the (post) modern lifestyle trends: drugs, kinky sex, hip-hop, fashion, exhibitionism, narcissism. They are uninhibited, the kind of youth who break down barriers in a supposedly traditional and religious society, but perhaps that's just on the surface. Behind the upbeat tone is a probing examination of values and attitudes in modern youth relationships. Happiness may be deceptive but there's certainly a lot of fun in the Happy Berry.

The 28th Hong Kong International Film Festival 2004
The 20th Visual Comunications Los Angeles Asian Pacific Film & Video Festival 2004
The 6th Makati Cinemanila International Film Festival 2004
The 4th Taiwan International Documentary Festival 2004 (Grand Prize Award in Asian Vision category)
The 34th International Film Festival Rotterdam (Happy Thunska in SEA EYE programme) 2005, The Netherlands
Vision Du Reel, Nyon 2005, Switzerland

最新の画像もっと見る

2 Comments

コメント日が  古い順  |   新しい順
おそれいりますが (近隣諸国)
2005-06-17 23:40:09
くまなくDVD発売の映画をチェックされてて、

数少ないタイ映画関係ネット情報発信、貴重な存在と思いますが、

このスタイルだと、いまどきの若もの(とは限りませんが)ここの情報をサーチ、ヒットして使いまわし=拝借、無断改編、ということもあるやも・・

と、少々映画界的基本情報に関して正確を期していただきたい点あり、コメントさせていただきます。

冒頭「Happy Buddy」は単にBERRYのタイプミスと思いますが、「台北と山形で交代に開催される映画祭りのドキュメント部門」って、別々の映画祭が交互に開催されているのです、というのも山形国際ドキュメンタリー映画際を親として(見習って)生まれたのが台北のほうですから。

監督ぷーんは良く知ってますが、「HAPPY・・」は別に自腹でで刻苦して作ったわけではなく、アメリカのインディー系投資者(本来は映画研究者)により撮られたものです。(ちなみに投資者が版権コントロールしてますよ。)

バンコク国際に出品しないのは単にメリットが無いからです、大体観光局の超商業的映画祭に出すことは「インディー市場(というものは実はちゃんとあります)ではデメリット」であるからで、ほかのバンコクでの非商業系、映画人による映画祭では上映してますよ。

そして、彼はどう考えてもロジャー・ムアー(って914のムーアのことですよね)じゃないし、ましてや社会派の問題意識を持ったタイプじゃないですよ、彼が聞いたら、爆笑間違いなし(笑)、むしろ、目指すところはサイアム系ノンポリの気分とか、このごろのタイ人のメンタリティーでしょう。

タイ国内の投資断っているというのは、まあここを見てタイ映画界に伝わることは(私が言わない限り、笑)

無いでしょうけど、それは違うというか、単にタイ国内でハンドルできる人がいないだけでしょう。
返信する
感謝します (fish Sauce)
2005-06-19 03:26:19
題名はご指摘の通り「Happy Berry」です。すみません正確を期さなければいけないので題名は訂正します。また専門的なご指摘には大変に感謝しています。彼の新作「FUTON」も出来上がったら見せて欲しいと頼んでいますが、「Happy Berry」は作品としては如何でしょうか。



彼のお陰で本当に大勢のインディ派がいるのを知って驚きました。今度、バンコクで短編の映画祭があるようなので楽しみにしています。基本的に無名の若手を応援したいと思っていますが、まだよく全体像が掴めないというのが本音です。彼は社会正義を訴えるような映画を作りたい>>しかしそれはタイではできないと話していたのは私が期待していた答えを誘導するインタビューになってしまったらしいです。若いタイ人のメンタリティに関してはもう少し知りたいですね。
返信する

post a comment