1001タイ映画、千夜一画 

タイ映画またはショートフィルム他で心の琴線に触れたアーカイブ。

サイアム・ルネッサンス (夢と幻想/歴史/SFそしてタイの誇り)

2005-03-09 04:19:05 | タイ映画
 仏で学んでいた帰国子女が150年前のラマ四世(1851-1868)時代のサイアムにタイムスリップする夢と幻想、そして恋の物語。「ここにあまり期待しないで欲しい、ジャングルばかりだから」というのはラマ四世がイギリスからやって来た通商特使との会話が面白い。この英国とのバーネィ条約締結の前からこの地を力ずくでラオスやカンボジアに次ぐ植民地支配を企むフランスの野望がその当時に構想として浮上していたバンコクのエフエル塔が陽炎のように21世紀出現し、植民地支配のメタファーとして描かれている。留学組が味わう異文化との葛藤は支配と非支配という構図から愛国心へと形を変えてアイデンティを確固たるものとし、西洋列強によるサイアム王朝の蹂躙の危機に立ち向かう若者の純粋な姿を描いた作品・・・という感じかな。こういう大作を気取った作品は本当に疲れてしまう。映画の善し悪しというよりは生理的にダメで体が受け付けない。昨年のシリキット女王様の誕生日に催された御前セレモニーショーではこの主演俳優のカップルがこの映画の寸劇を披露していたが、それがとんでもない稚拙なもので思わず笑ってしまった。ソイカーボィーの近所にサイアム・ソサエティーがあるんだけど、ああい落ち着いた場所でサイアムの文化をじっくりと鑑賞するのは好き。あそこの会員になっていると交通違反なんか見逃してくれるって友人がいっていたが、私なんかいつも免許証なんか見せたことはない。「タウライ?」という言葉の口調とタイミングは本当に熟練がいる。原作は第二次大戦中の日本人将校とタイの女性との恋愛悲劇で有名な「クーカム」と同じ作者と聞いただけでもうパスしたい気持ち。「150年後のバンコクには先進国にあるものは全部あります」という台詞があるが、博物館も美術館も、音程の狂わない交響楽団などなど・・・ないものばかりだというのが実感。本当の国の発展というのは市民の誇りを子孫に伝えるということ。その点では日本なんか見事に???だが、タイのように極端な情報過小下での自意識過剰による「誇り症候群」というのも困りモンだ。タイで一番嫌いなホテルがあの慇懃無礼なオリエンタルだが、あそこには西洋人のフィルターを通してのタイの据えたような誇りを感じる。一番好きなホテルがあの軍事政権打倒の舞台となり、ロビーの絨毯が血で染まったロイヤルホテル。あの時ほど反政府運動の主役になった中間所得層の方々にタイの誇りとシンパシーを感じた時はない。人に利用されない自発的な愛国心というものは素敵で国家の力でもある。それがどうして今のような単独独裁政権を選んでしまうのか、本当に不思議な国だ。

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