Vばら 

ある少女漫画を元に、エッセーと創作を書きました。原作者様および出版社とは一切関係はありません。

SS 6月29日、夜

2014-06-07 01:02:09 | SS ロザリー
 オスカルからアンドレへ愛を告白した日の夜、二人は暗闇に紛れてロザリーの家に行った。アベイ牢獄に収監されている衛兵隊員たちを救う密談をするために。なんとか救出の段取りを取り付けた二人が去った後の、ロザリーとベルナールの会話です。(お芝居の台本のようになってしまいました。読みづらかったらすみません。)


ロザリー「ねえ、あなた。今夜オスカルさまを見て何か気づかなかった?」
ベルナール「何かって?そうだなぁ、久しぶりに会ったけれど、昔と変わらず強い信念を持って生きているなと感じたよ。彼女のような貴族がいてくれるのは、俺たち平民にとって本当に心強いね。」
ロ「あぁ、やっぱり男の人ってダメね。」
べ「ダメって?何が?」
ロ「今夜ね、ドアを開けた瞬間、オスカルさまの顔がとても生き生きと輝いているように見えたの。部下の方たちが大変な時にこんなこと言うのは不謹慎だけど、何かいいことでもあったのかなって一瞬思ったわ。あなた、感じなかった?」
ベ「そうだったけ?」
ロ「フロレルにピストルを向けた時は焦ったけれど---。でもそれはおいといて。時々見せる表情に、とても女性らしさが滲み出ていたわ。たぶんオスカルさまは気づいていないと思うけど。」
ベ「へぇ~、そうだったか。俺は難題を持ち込まれて、じっくりオスカルの顔を見る余裕がなかったな。しかもフロレルの奴ときたら、突然あんなことするから、ひやっとしたよ。」

ロ「それでね、そばにいたアンドレなんだけど、とても穏やかな表情でずっとオスカルさまを見守っていたの。口数は少なかったけれど。アンドレがオスカルさまを見つめる目が愛に満ちていた。えぇ、昔からアンドレはオスカルさまのためなら、自分を犠牲にすることを厭わないで、従卒としてそばに仕えていたわ。でも今夜はちょっと違っていた。」
べ「違っていたってどんなふうに?」
ロ「何て言ったらいいのかしら?お二人とも、相手が何を考えているか通じ合っているとでも言うのかしら?もちろん昔からそうだったけれど、その信頼が一層強まったように感じられたの。」
べ「それは気づかなかったな。」
ロ「私、アンドレがずっと前からオスカルさまを想っていることは知っていたの。」
べ「だけど二人は身分が違うだろ。だからいくらアンドレがオスカルを愛したところで、どうなるものでもない。」
ロ「そのとおりだけど、でも---オスカルさまも、ご自分がアンドレを愛していることに気づいたのではないかと思ったの。そしてお二人はお互いの気持ちを確かめ合い、今までよりもさらに強い絆で結ばれたのではないかと。だからオスカルさまは、このような大変な時だけど、あんなにもいい笑顔で、今夜私たちの家に来たのではないかって。」

べ「アンドレは本当に凄い奴だ。あいつの目を潰したことで、一度だって俺を責めたことがない。本当ならどんなにか俺のことが憎いだろうに。奴は絶対にそのことを言わない。大した男だ。俺は今でも本当に奴に申し訳ないことをしたと思っている。二人には借りがある。だから今回アベイ牢獄から、オスカルの部下を救う手助けをしようと思ったんだ。」
ロ「ベルナール。」
べ「オスカルにはこの動乱で命を落としてほしくない。だから別れ際に『このフランスを立ち去って、どこか外国へ行け。』と忠告したのだが---たぶんオスカルは行かないだろうな。」
ロ「ベルナール、なんとかならないの?私、絶対にオスカルさまに死んでほしくないの。もし今、アンドレと心が通じ合っているのなら、なおさらお二人には幸せになっていただきたいの。」
べ「ロザリー、お前もオスカルの性格はよく知っているだろう。いくら周りが止めたところで、オスカルは自分の信念にまっすぐに生きる人だ。それを止めることは誰にもできない。おそらくアンドレにだって---。」
ロ「いや、絶対にいや。オスカルさまが死ぬなんて。」
べ「俺だって同じ気持ちだ、ロザリー。でもまだ死ぬと決まったわけではない。」
ロ「もしオスカルさまとアンドレが、気持ちが通じ合っているのなら、ぜひお二人に幸せになってほしいの。お二人ともこれまでずっと辛い思いをしてきたから。オスカルさまには女性として愛される喜びを知ってほしいの。平和で幸せな人生を歩んでほしい。」
べ「ロザリー、それほどまでオスカルのことを。」
ロ「ええ、そうよ。あんな素敵な方は世界中どこを探してもいないわ。」
べ「お前にそこまで想われて、オスカルは本当に幸せ者だ。」
ロ「ねえ、ベルナール。私たちにできることは、何でもしましょうよ、ねっ。」
べ「あぁ、わかった。俺だってオスカルを死なせたくないからな。フランス中、いや世界中探しても、あんな人はいない。」

その後、二人は明かりを消して、床についた。


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