
15世紀から19世紀までの長きにわたり、ヨーロッパはもとより大西洋を渡ってアメリカまで旅した女性がいる。彼女の名はパンドラ。
「そんなに長生きした女性が、存在したのか?」と怪訝に思われる方が多いはず。正しくは「パンドラ」と呼ばれるファッション人形のことです。
私たちは最新流行を、映像や雑誌などで容易に知ることができる。また海外の衣料品を短期間で取り寄せることも可能。けれど中世や近世の女性たちにそんなことはできるはずがなかった。当時ヨーロッパのファッションの都だったパリでは、ドレスメーカーや繊維業者たちが、人形に最新流行のファッションを着せて、ヨーロッパ各国の王室や貴族に送った。百聞は一見にしかず。受け取った貴婦人たちは着飾った人形を見て「自分もこんなドレスを着てみたい。」と思い、パリのメゾンに発注したり、自国のデザイナーに作らせたりした。人形が着ているドレスは生地見本でもあるのでイメージが浮かびやすいし、同じ生地を指定すればがっかりすることは少なく、間違いがない。パンドラ人形を通して、アパレル業者と顧客との結びつきが強くなり、人形は交易に大いに役立った。
↓ 1750年、フランス製のパンドラ。まだウィーンにいた頃の結婚前のアントワネット宛てに、フランス宮廷は最新ファッションに身を包んだパンドラを送った。これを見たマリア・テレジアは娘のために、よく似たドレスを作らせた。もしかしてポンパドール夫人の策略?
↓ パンドラ人形は海外に送るだけでなく、ドレスメーカーの店内にも置かれ、顧客がドレスを注文する時の参考にした。
↓ 1739年の作。
↓ 右の白い布はポケットらしい。
↓ 冬のドレス
↓ 御輿に乗ったパンドラ。「ドレスが横に広がっていないから、難なく乗れますよ。」とアピール?
↓ この人形の髪は、本物の人毛。
↓ パンドラは豪華なドレスだけでなく、下着類や靴もしっかり身に着けていた。こちらがベースとなる人形。
↓ 帽子
↓ これはコルセット。
↓ 刺繍入りペチコート
↓ パニエ
↓ 靴
↓ 仕上げにドレス
↓ すべて着用するとこうなる。
↓ 1785年製のパンドラ。モデルはアントワネット?髪型もしっかり当時の流行を再現。フランスに嫁いでから、アントワネットは最新流行に身を固めて肖像画を描かせたりパンドラを作って、ウィーンの母のもとにウキウキした気持ちで送っていただろうが、それがマリア・テレジアの心配の種を増やすことになっていたとは、よもや想像しなかっただろう。
↓ これらもアントワネットのドレスを再現したのかもしれない。
↓ わずかだが男性版パンドラも残っている。
最盛期には何千ものパンドラが作られ、ヨーロッパ各国やアメリカに送られたが、おそらく子どもたちの玩具になってしまい、汚れたり壊れたりして今ではそれほど残っていないらしい。人形が伝える最新ファッション。なかなか目の付けどころが面白い。
ジャルジェ家にも贔屓にしているデザイナーがいて、時々生地見本を持参してはオスカルの5人の姉たちにローヴ・ア・ラ・フランセーズを献上していたかもしれない。そしてオスカルは…パリ一番の仕立て屋に最高の軍服やブラウスを発注していただろう。でもオスカルは実はそれほどおしゃれには関心がなく、むしろ凝ったデザインの銃や剣を見て、ときめいていたのではないかと思う。
読んでくださり、どうもありがとうございます。
宝塚で「お母様がいつかお人形をつくってあげます」とか「自分で作った人形をお嫁入りの時に持ってきた」とかいうセリフがあったなと思い出しました。
今でもドールは人気ですね。私も小さい頃はリカちゃん人形で遊んでいましたが、こういう着せ替え人形が欲しかったです。あとフランス人形とか昭和の家庭にはありましたね(笑)
とてもインパクトのあるお人形ですね
暗いところで見たら怖そうな・・・・・
間接もちゃんと曲がるようになっていて「スーパードルフィー」の元祖?と思ってしまいました
我が家の人形は・・・母からもらった「市松人形」
飾っておいたらダンナが「怖いから片付けて」・・・・・押入れの中で寝ています・・・一度出してこようかな・・・かわいそうなので
>宝塚で「お母様がいつかお人形をつくってあげます」とか「自分で作った人形をお嫁入りの時に持ってきた」とかいうセリフがあったなと思い出しました
ありました。ヴェルサイユ宮殿を追われ、パリのチュイルリー宮殿に移った国王一家。おもちゃがなくて、不便な思いをしている子どもたちにアントワネットが、御輿入れの時シュテファンという人形を持ってきたと言っていました。でもメルシー伯に「いつまでも子どもじゃないから。」と言われ、取り上げられてしまったのですよね。
>私も小さい頃はリカちゃん人形で遊んでいましたが
私もリカちゃん、そしてスカーレットを持っていました。祖母が余った布でワンピースを作ってくれました。
>あとフランス人形とか昭和の家庭にはありましたね
そうそう。アップライトのピアノをお持ちの家庭には、必ずと言っていいほど飾られていました。今、ああいう人形を見かけなくなりました。懐かしいですね。
>関節もちゃんと曲がるようになっていて「スーパードルフィー」の元祖?と思ってしまいました
そうなんですよ。あの時代、関節も曲がる人形って、職人さんがかなり頑張って作ったのではないでしょうか?現代のスーパードルフィーはとても優しい雰囲気で、夜見ても怖くないですね。
>我が家の人形は・・・母からもらった「市松人形」
貞子の影響で、市松人形は人々から恐れられてしまった気がします。でもよく見るととても愛らしいです。押し入れの中でずっと寝ているのはかわいそうですね。たまには自然光の中に出して、新鮮な空気をいっぱい吸わせてあげたらいかがでしょう?
伽羅さま、「人形」をテーマにした名曲はありますか?
少々アルコールが入っております(今夜はウイスキー)
「名曲」かどうかは わかりませんが
「人形の夢とめざめ」・・いかがでしょうか
小さな子供が つっかえながらも 懸命に弾くピアノのおさらい会
とても可愛くて・・・ラブリーで雰囲気が好きです
どんどん曲想が変わっていくあたり・・・モーツァルトにつながらなくもない・・・かな
我が家の「お風呂が沸きました」のメロディーで・・・初めて聞いたときはびっくりしました・・・なんでやねん!!
日本の歌では「私の人形」「青い目の人形」・・・など
青い目の・・・も途中で曲想が変わっていって・・・これが子供の歌か!!と思いますが、ひとつの楽曲としてはよくできていると思います・・・前奏も含めて
などと書きながら・・・
次の記事の中の「アンドレ」に反応してしまって(えらくピンポイントですが)
アンドレ・リュウとアンドレ・クリュイタンスが出てきちゃいました・・あ~~~~~
今夜はシュトラウスとラベルかベートーベンで・・・
そして明日はやっぱりモーツァルト・・・498で 幸せに過ごしまーす
>「人形の夢とめざめ」・・いかがでしょうか
小さな子供が つっかえながらも 懸命に弾くピアノのおさらい会
明るくテンポが速い曲調は、幼い子どもが何度も何度も弾きたがる箇所ですね。と同時に「冷めないうちに、お風呂に入って頂戴!」という感じが、しないわけでもありません。
>青い目の・・・も途中で曲想が変わっていって・・・これが子供の歌か!!と思いますが
久しぶりに文部(科学)省歌を聞いてみました。真ん中の部分は「ひなまつり」を彷彿とさせるメロディに聞こえました。はるばるアメリカから太平洋を渡ってやってきた人形の不安な気持ちを、このように表現するとはなかなか素晴らしい感性ですね。
>アンドレ・リュウ
何だかとても楽しそうな方ですね。青島広志さんのように、クラシック音楽の面白さをお話しされながら演奏するのでしょうか?機械があったら、生で聴いてみたいです。
>明日はやっぱりモーツァルト・・・498で
月曜日をモーツァルトのK498で過ごすって、とても贅沢で優雅です。伽羅さま、素敵な月曜日をお過ごしくださいね。
いつも大変珍しい資料を、美しいお写真と解りやすい解説で御紹介くださり、とても勉強になります。読ませていただく文章から、一体どれほどの知識を身につけていらっしゃる方なのかしら…!と、毎日毎日、驚きと感動を持って読ませていただいております。
パンドラ人形?! 初めて知りました。
他ではちょっとお目にかかれないような新しい知識との出逢いが、りら様のサイトの魅力ですね。
(きっと、語学も堪能でいらっしゃいますね。外国語の資料がほとんどでしょうから)
以下、横レスで申し訳ございません!
りら様と伽羅様の音楽のお話も、いつも楽しく拝見しております。
今日は、何年ももやもやしていたことがハッキリしたことが嬉しくて御礼申し上げに参りました。
伽羅様が御紹介くださった『人形の夢とめざめ』!! ああ、そうでした、これです!
実は我が家のお風呂でもそのメロディーが鳴っておりまして、続きを全部口ずさめるのに、何故かタイトルが思い出せませんでした。
幼少の頃にピアノの発表会で弾いた曲に間違いはないのに…。
よっぽど、メーカーに問い合わせてみようかとも思っておりました。
でも、勇気が出ませんでした。
もう、何年も知りたくて、わからないままでしたのに、まさか、こちらでその答えに出逢えるとは。
気になっていたことが解決するって、なんて気持ちのよいことなのでしょう!
本当にありがとうございました。 御礼申し上げます!
ブログを書くときは、日常生活からスイッチを切り替え、しばし空想の世界に浸って楽しんでいます。
>伽羅様が御紹介くださった『人形の夢とめざめ』!! ああ、そうでした、これです!
実は我が家のお風呂でもそのメロディーが鳴っておりまして
伽羅さまはとてもクラシック音楽に造詣が深く、きっと独自の視点から「ベルばら」を楽しんでおられるに違いないと思っています。伽羅さまが紹介する曲を聴いて「あぁ、これ聞いたことがある。」と思うものが多々あります。「人形の夢と目覚め」もその1つです。ライラックさまのお宅のお風呂もそうでしたか!そしてライラックさまご自身も子どもの頃、この曲をお弾きになったのですね!懐かしい思い出との再会、そして長い間解けなかった謎がようやく解け、感動を覚えたのではないでしょうか?私もブログを通して、いろんな方から学ばせていただけて嬉しいです。クラシック音楽に疎いので、伽羅さまのコメントからとても心地良い刺激を受けています。
こんなブログですが、楽しんでいただけたら本当に嬉しいです。どうかこれからもよろしくお願いいたします。