前回私は子どもの頃の駄菓子屋さんについて書きました。
昭和30年代の日本には児童館も学童クラブもありませんでした。
小学生が塾に行くということもなかったので、大半の子どもは放課後ランドセルを玄関に投げ捨てて遊びに行ったものです。
私が住んでいた、東京の大田区入新井には、入新井公園という大きな公園がありました。
公園や空き地が子どもたちの遊び場だったのです。
この公園には実にたくさんの子ども相手の物売り屋さんが来ました。
季節的には、風鈴やさん、食べ物ではおでん屋さんその他いろいろ。
この中で私が一番大好きだったのは紙しばい屋さんです。
公園の中でカチカチと拍子木が鳴ると紙しばいの始まりです。
題目は、『ゴールデンバット』や『まぼろし探偵』『怪盗二十面相』など、実にたくさんの演目が演じられました。
紙しばい屋さんのおじちゃんの語り口はとても素晴らしく時には恐ろしく時には快活で、子どもたちはあっという間にその世界に入り込んでいきました。
紙芝居には様々な技術があり、導入の語り、紙の抜き方のわざ、例えば、少しづつ引きながら時間や場面の切り替えを表現したり、時には鳴り物を持ったおじさんもいました。
紙しばいのもう一つの楽しみは、紙しばい屋のおじさんが持っている様々なお菓子です。
紙芝居の終わりに近づいたころおじさんはクイズの紙しばいを繰り出します。
クイズに正解を出すとおじさんから、水あめやソースせんべぃなどは、本当に魅力的なお菓子をもらえます。
これはその後の紙しばい屋さんの本来の仕事、お菓子の販売の導入になります。
ソースせんべぃに至っては、丸くて柔らかいソフトなせんべぃにソースのようなものを塗っただけのものから、2枚目を半分に割って、水あめで斜めにつけて兎にしたりします。
それにこれがまた魅力的なものなんですが、ニッキと呼んでいた何色かのゲル状なもので兎の目や鼻を書いてくれます。この手さばきに子どもたちは希望に満ちた目で眺めました。
調べてみたらこんなものまで出てきましたので、参考にしてください。
https://cookpad.com/recipe/5254985
私はこの時代の紙しばい屋さんのおじさんの演技力は素晴らしいものがあったと思います、実は私がその後本好きな人間になったのは、この紙しばいに『ルーツ』があると思っています。
現在は紙しばい屋さんはありませんが、子どもたちの親たちは、パッドで、ゲームやヴィデオを子どもたちに見せています。
これでは本を読むというこの世で最も素晴らしい大人の楽しみにはつながりません。
単純に比較はできませんが、ほとんどの子どもが遊び惚けたり、公園で子どもなりのエンターテインメントを心置きなく楽しんでいた時代にくらべて、現在の日本人の感性や創造力や、独創性が上がったといえるでしょうか。
もう一度この辺を考え直していく時期が来ていると私は思っています。