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アトリエ 籠れ美

絵画制作、展覧会、美術書、趣味、その他日常の出来事について
平成27(2015)年5月4日より

画家のひとつの理想はパスキンか?

2020-11-12 05:36:02 | 画材、技法、芸術論、美術書全般、美術番組
 パスキンとは、エコール・ド・パリのジュール・パスキンのことで、彼がアトリエで油絵を制作する、つまり仕事をするのは週に1回、金曜だけだった。

 では他の曜日はどうしていたのか。それはひたすらデッサン(人物スケッチ)をしていた。パスキンの真骨頂だそうだ。

 私が思うのは、彼のように自分の作風をしっかりと持ち、かつそれが人気で売れている場合、自分の絵の素材集め(彼の場合は人物スケッチになるわけだが)に傾注しさえしておけば、あとは問題がない。

 なぜなら実作に入り、作品を完成させてしまえば、それは即売れ、お金になる。

 自分の技法の確立に悩む必要はないわけで、そうなると絵の材料集めの方が重要になる。画題さえ見つけてしまえば、あとは油絵にするだけ。

 これは画家としてのひとつの理想だと思う。少なくとも職業画家としてあるべき姿だと思う。

 もちろん、ユトリロの白の時代もそうであったし、コローのあの銀灰色の幻想的な風景画もそうであったが、絵で生計を立てていくという意味では、パスキン方式の方がより確実で、ルーチンワーク化されている。

 パスキンはそんな自分の画家人生に嫌気が差し、自殺してしまうわけだが、こうした売れる絵とは別に、自分の別の世界を追求すればよかっただけの話だ(例えばデ・キリコのように)。

 正直、羨ましいと思う。どのみち長い年月描き続けていれば、画風というのは本人の知らぬ間に変化していくもの(例えばベラスケスみたいに)。

 だからパスキンも徹底して自分の人気作品を量産していけば、いずれは画風に変化が起き、新たな境地が開けたはずだったろうに。

 私も売れる、売れないに関わらず、自分の油絵技法を手に入れたら、あとはパスキンみたいに絵の素材集めに走ると思う。溜めるだけ溜めておく。そうすれば、あとは実作をすればいいだけになる。

 もしそうなったら、油絵はそんなに描かないんじゃなかろうか。少なくとも自分の画風確立のために七転八倒する必要がないわけで、そうなると枚数をたくさん描いても、出来上がった作品の置き場に困るだけだから(もちろん絵が売れるんだったら、話は別だけど)。

 今では、あまり振り返られることのないパスキンだが、彼の編み出したナクレという技法で描かれた裸婦は、フジタの描く乳白色の肌に似て、ちょっと興味深い。お互いに何か影響があったりしたのかなと思ったりするけれど。

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