かつて、睡眠は「一日に8時間は」と、たっぷり眠ることが推奨されていた。しかし経済協力開発機構(OECD)の調査では、日本は26ヶ国で“睡眠時間の短い国”としてのポジションが定位置だ。厚生労働省の報告には、日本人の約40%は6時間未満の睡眠を続けているとある。
最適な睡眠時間は、個人差や年齢による違いが大きいものの、多くの人にとって6時間半〜7時間半が良く、4時間未満や8時間以上となると健康や寿命に良くない影響が及ぶといわれてきている。
では、少し短めの6時間睡眠ではどうだろうか。大抵の場合、6時間程度眠ると、充分に睡眠を取ったように感じるのではないか。しかし、6時間睡眠を2週間続ける実験をした研究結果からは、脳での情報処理にかかる働きは「二晩徹夜」したのと同じになるという。 4時間睡眠でも脳の働きは同様に低下したが、6時間も眠れば、本人はよく眠ったように感じていたとのこと。なるほど自身を振り返っても、目覚めも気持ちよく、日中のパフォーマンスも高いと思い込んでいる。しかし、脳の働きは徹夜明けと同程度になっていたのだ。それに気づかず、ともすれば習慣としてもっと長い期間続けてしまっているのではないか。私たちは“徹夜明け”を繰り返しながら、毎日を過ごしているのかも知れない。
睡眠不足の影響
睡眠不足は、私たちの生活のあらゆる面に影響を与えているが、それらを総合して評価した米国での調査(2016年)では、日本における睡眠不足の影響を経済損失として換算すると、その金額はGDPの約3%、およそ15兆円にも上るとされた。これには健康や脳機能へ多大なる害が及ぶことも含まれている。
睡眠不足の影響は、まずは、判断力の低下が生じたり、刹那的になり目先のことに飛びつきやすくなる、もの忘れが増える、怒りっぽくなるなど、日常的な不具合として現れる。そして、これが常態化すると、免疫系の衰え、糖尿病、高血圧症、がん、肥満、うつ、認知症に罹る可能性が増すなど、脳や身体への影響も重篤になると考えられている。