昨年の夏休み中、詩作の練習のために、三十種すべての平韻を使って七言絶句を都合60首ほど作りました。もとよりいずれも技巧や典拠などない稚拙な駄作ですが、その中から、退職にあたっての感慨や、退職の機に合わせて自宅を転居したことなどを記した十二首を、記念にここに掲げておきます。
➀懐旧行履(下平声一先)
深竹蕭蕭六月天 深竹 蕭蕭たる六月の天
修来寮裏半生禅 寮裏に修し来たり 半生の禅
尋常自問志安在 尋常に自問す 志 安くに在りと
如夢追懐最後年 夢の如くに追懐す 最後の年
②惜残日(下平声十二侵)
二十余年住竹林 二十余年 竹林に住し
一堂端坐亦情深 一堂に端坐すれば 亦 情深し
指南化導到今日 指南化導して今日に到り
嫡嫡相承菩薩心 嫡嫡相承す 菩薩の心
③辞精藍(下平声十三覃)
竹叢寮舎在城南 竹叢の寮舎 城南に在り
全土雛僧鼓舞参 全土の雛僧 鼓舞して参ず
二十余年如昨夢 二十余年 昨夢の如し
後生慈育護精藍 後生を慈育して精藍を護る
④復故地新心(下平声十五咸)
如今還見旧栖杉 如今 還た見る 旧栖の杉
隣比池園啼鳥銜 隣比の池園 啼鳥を銜(ふく)む
新定小居終世地 新たに小居を終世の地と定め
端身一息整衣衫 端身一息 衣衫を整う
⑤了職帰山(上平声五微)
為衆寮中執指揮 衆の為に 寮中 指揮を執り
相伝説得祖師機 相伝説得す 祖師の機
即今難値法縁謝 即今 難値の法縁を謝し
乞暇帰山示晩暉 乞暇し帰山して 晩暉を示さん
⑥護惜半歳(上平声六魚)
寮中教導半年餘 寮中の教導 半年の餘
時復追懐辨道初 時に復た追懐す 辨道の初め
人世無常残日少 人世無常にして残日少なし
寸陰護惜了安居 寸陰を護惜して安居を了ぜん
⑦坐禅堂中思吾行履(上平声七虞)
衆僧打坐整心躯 衆僧 打坐して心躯を整え
喫了飯台洗鉢盂 飯台を喫了して 鉢盂を洗う
野衲半生在這裏 野衲の半生 這裏に在り
自牀就位獨長吁 自牀に就位して 獨り長吁す
⑧転住大都西(上平声八斉)
随縁転住大都西 縁に随い転住す 大都の西
辞退閑居伴梵妻 辞退し閑居するに 梵妻を伴う
十尺軒中存富貴 十尺の軒中に富貴あり
隣園池畔杜鵑啼 隣園の池畔に杜鵑啼く
⑨受寄贈大般若経(上平声十一真)
爾来経過幾回春 爾来経過す 幾回の春
邂逅檀林主與賓 檀林に邂逅す 主と賓と
六百金文都具備 六百の金文 すべて具備し
寮生寄進道心眞 寮生 寄進す 道心の眞
⑩住池畔看白蓮(下平声一先)
護寮化導半生禅 寮を護り化導す 半生の禅
不厭到来退職年 退職の年の到来するを厭わず
転住西方池沼畔 転住す 西の方 池沼の畔
猶看青竹白花蓮 猶看る 青竹 白花の蓮
⑪堂中颯風(下平声三肴)
学寮乞暇入西郊 学寮を乞暇して 西郊に入り
池畔里居結淡交 池畔の里居に 淡交を結ぶ
一日堂中風颯颯 一日の堂中 風颯颯
遙聴窓外晩蝉呶 遙かに聴く窓外 晩蝉の呶(かまびす)しきを
⑫初秋爽気(下平声四豪)
人生活計任風濤 人生の活計 風濤に任せ
随業因縁適職遭 業に随い 縁に因って 適職に遭う
烈暑減衰蝉聲息 烈暑減衰して 蝉聲息み
一天気爽夕陽高 一天 気 爽やかにして 夕陽高し
➀懐旧行履(下平声一先)
深竹蕭蕭六月天 深竹 蕭蕭たる六月の天
修来寮裏半生禅 寮裏に修し来たり 半生の禅
尋常自問志安在 尋常に自問す 志 安くに在りと
如夢追懐最後年 夢の如くに追懐す 最後の年
②惜残日(下平声十二侵)
二十余年住竹林 二十余年 竹林に住し
一堂端坐亦情深 一堂に端坐すれば 亦 情深し
指南化導到今日 指南化導して今日に到り
嫡嫡相承菩薩心 嫡嫡相承す 菩薩の心
③辞精藍(下平声十三覃)
竹叢寮舎在城南 竹叢の寮舎 城南に在り
全土雛僧鼓舞参 全土の雛僧 鼓舞して参ず
二十余年如昨夢 二十余年 昨夢の如し
後生慈育護精藍 後生を慈育して精藍を護る
④復故地新心(下平声十五咸)
如今還見旧栖杉 如今 還た見る 旧栖の杉
隣比池園啼鳥銜 隣比の池園 啼鳥を銜(ふく)む
新定小居終世地 新たに小居を終世の地と定め
端身一息整衣衫 端身一息 衣衫を整う
⑤了職帰山(上平声五微)
為衆寮中執指揮 衆の為に 寮中 指揮を執り
相伝説得祖師機 相伝説得す 祖師の機
即今難値法縁謝 即今 難値の法縁を謝し
乞暇帰山示晩暉 乞暇し帰山して 晩暉を示さん
⑥護惜半歳(上平声六魚)
寮中教導半年餘 寮中の教導 半年の餘
時復追懐辨道初 時に復た追懐す 辨道の初め
人世無常残日少 人世無常にして残日少なし
寸陰護惜了安居 寸陰を護惜して安居を了ぜん
⑦坐禅堂中思吾行履(上平声七虞)
衆僧打坐整心躯 衆僧 打坐して心躯を整え
喫了飯台洗鉢盂 飯台を喫了して 鉢盂を洗う
野衲半生在這裏 野衲の半生 這裏に在り
自牀就位獨長吁 自牀に就位して 獨り長吁す
⑧転住大都西(上平声八斉)
随縁転住大都西 縁に随い転住す 大都の西
辞退閑居伴梵妻 辞退し閑居するに 梵妻を伴う
十尺軒中存富貴 十尺の軒中に富貴あり
隣園池畔杜鵑啼 隣園の池畔に杜鵑啼く
⑨受寄贈大般若経(上平声十一真)
爾来経過幾回春 爾来経過す 幾回の春
邂逅檀林主與賓 檀林に邂逅す 主と賓と
六百金文都具備 六百の金文 すべて具備し
寮生寄進道心眞 寮生 寄進す 道心の眞
⑩住池畔看白蓮(下平声一先)
護寮化導半生禅 寮を護り化導す 半生の禅
不厭到来退職年 退職の年の到来するを厭わず
転住西方池沼畔 転住す 西の方 池沼の畔
猶看青竹白花蓮 猶看る 青竹 白花の蓮
⑪堂中颯風(下平声三肴)
学寮乞暇入西郊 学寮を乞暇して 西郊に入り
池畔里居結淡交 池畔の里居に 淡交を結ぶ
一日堂中風颯颯 一日の堂中 風颯颯
遙聴窓外晩蝉呶 遙かに聴く窓外 晩蝉の呶(かまびす)しきを
⑫初秋爽気(下平声四豪)
人生活計任風濤 人生の活計 風濤に任せ
随業因縁適職遭 業に随い 縁に因って 適職に遭う
烈暑減衰蝉聲息 烈暑減衰して 蝉聲息み
一天気爽夕陽高 一天 気 爽やかにして 夕陽高し