そうかん日誌 ~Du 11eme arrondissement de Paris

タイトルを「りょうかん日誌」から「そうかん日誌」に変更しました。

寮監職を振り返って(3)

2022-02-06 | Weblog
10年ほど前にこのブログを開設し、しばらくしてから、寮の法要等の動画のアップロードを始め、いつの間にかその数は60本を超えましたが、ブログの開設にせよ、動画の作成、発信にせよ、これらは大学職員としての公式な業務ではなく、寮監の個人的営為です。当初は寮生のご家族向けに、寮内の可視化の補助的手段として設けたものでした。

親御さんが、初めて親元を離れて東京で暮らすことになるご子息のことを案じられるのは至極当然のことですが、まして学生寮の中のこととなると、ほとんどブラックボックス状態で、寮生が自分から進んで親に話さない限りは中の様子がわかりにくい。この年代の男子は、親の干渉を疎んじて自分の周辺のことは積極的に話したがらないのが普通でしょうから、親にしてみれば、ますます様子がわからない。そこで、情報化が進んだ昨今、学生寮を統括する者として、こういった特殊な環境にあっては、特殊な情報公開の方法があってもよかろうと考えた訳です。

このことは当の寮生のご家族にしっかりその意を酌んで頂けたようで、お師匠様やお母様と電話やメールで直接連絡を取ったり、お便りを頂いたりする際は、ブログや動画のことを話題にして頂けることが多くなりました。

ブログや動画は、もちろん寮生自身にとっても有益なもので、とりわけ動画についていうと、ある法要の配役に当たった寮生がこれらを視聴するということは、自分に課された進退を、文章や静止画ではなくシークエンスとして確認し、自分の動きの参考に出来るということでもあります。特に一年生にとってこれはわかりやすく便利なようで、動画を作成するようになって以後は、法要の馴らし(練習)に入る前の個々人の準備が以前に比べてよく出来ているように思われます。

動画(YouTube)を公開している限りは、閲覧出来るのは寮生とご家族だけではないわけで、これらを観たいろいろな人から反響があります。また、これらの動画にエゴサーチをかけてみると、様々なところに転載されていることがわかりました。珍しいところでは、海外の日本人布教師の方から、「(施食会など)法要を最初から最後まで収めてある動画は稀なので、現地の人たちに法要の説明をする上で大変助かります」とのお礼の言葉を頂いたりしました。また、ある海外の禅愛好家のグループ内では私が応量器展鉢の解説をしている動画を回覧していたりするようです。自分のサイトの中にこれらの動画を無断転載している人も、とりわけ宗門の人にちょいちょい見受けられますが、転載するのは構わないけれども、そういう場合は一言こちらに断りの言葉があって然るべきと思いますな。

動画の作成について裏話をすると、一度作る側に回らないとわからないと思いますが、結構手間暇がかかっています。

① まず、三脚にカメラを固定するなり手持ちにするなりして動画を撮影する。
② 撮ったデータをPCに落とす。
③ 取り込んだ画像データを動画編集ソフトでカットしたりつないだりして編集する。
④ その動画にふさわしいBGMを著作権フリーの音源から複数探してくる。
⑤ 編集ソフトでその法要のタイトルや差定、場合によっては法要解説のテロップ、配役のエンドロールを作成する。
⑥ テロップやエンドロールとBGMの長さを1秒単位で調節する。
⑦ 仮に出来上がった動画を、編集ミスがないか確認のため何回か通しで観る。
⑧ 最終的に完成したデータを数十分かけてアップロードしてリンクを張る。

以上の工程で最低半日を要しますが、出来上がった頃にはマウス操作で右肩が焼けるように凝り、眼精疲労が脳に伝播して半分フラフラになっています。「観るは易く作るは難し」ということがありますので、これらの動画を視聴される際は、些かでも作る側の苦労を察して頂き、「まあいいんじゃないか」とでも思し召せば、YouTubeの「いいね!」をポチして頂ければ幸甚に存じます。

なににせよ、これらの動画が少しでも世の中のお役に立っているのであれば結構なことと思います。
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