そうかん日誌 ~Du 11eme arrondissement de Paris

タイトルを「りょうかん日誌」から「そうかん日誌」に変更しました。

寮監職を振り返って(2)

2022-02-03 | Weblog
年度初めの一年生の受け入れにあたっては、まず3月末の受入日の前日に、寮監が上級生全員を招集して、禁止事項の確認など、一年生の指導にあたってのミーティングを行いました。具体的には、寮監が年度ごとに新規に作成する6ページほどの「○年度竹友寮運営指針並びに一年生指導要領」なる書類を全員に配布し、寮監がその読み合わせをする形で上級生との意思統一を図ります。

日分行持や、法戦式や施食会等、年に一度の法要の前には綿密な馴らし(練習)を行い、馴らしの後には必ず参加者全員で反省会を開いて、寮生同士で未習熟な点の指摘や努力目標の設定等を行った後、最後に寮監が、反省点の指摘の取りこぼしを拾い上げ、総括しました。

通常、一年生に着物の着付けなどの基本的な作法や、法要や飯台(食事)の様々な進退を指導するのは二、三年生ですが、彼らが一年生に指導する前に、指導する上級生を集めて、寮監の監督のもと、着付け方法を確認し、展鉢の作法については寮監が毎年、実際に応量器を使って上級生に模範を示しました。特に展鉢作法のように細かい所作が連続する行法については、定期的に一人の指導者が直接やって見せなければ、寮生が代替わりをするにつれ、細部の作法が忘れられたり、間違った方法が伝えられる可能性があると考えてのことでした。

法要の進退については、例えば法堂内の足運びや、大鏧の打ち方、木魚を打つ速さなど、大抵のことは口頭で指示すれば事足りましたが、座り三方の作法などは、本山でも2年目以上(知殿寮)の公務で所作が難しく、どうしても配役の者に対して指導者がやって見せつつ解説を加えなければ十全な指導は出来ない。例えば、座り三方の一連の動きの中には、正座の状態から一旦つま先を立ててしゃがんだ形になり、両腕を前に伸ばした状態で三方を捧げ、垂直方向にゆっくりと立ち上がって行く動作があって、これは、いわゆるハムストリングズを主とした下肢全体と腰部の筋肉にかなりの負荷をかけるし、体幹が安定していなければぐらつくので、やって見せるのは年齢的に結構厳しいものがありました。経験者がいれば代わってもらいたいところだったが、他にいないのだから仕方がない。結局、退職の年まで実演して指導しましたが、還暦を過ぎて座り三方を教えた指導者などあまりいないのではないかな。

飯台の際の大擂についても、「大擂は手で打つんじゃない、腰で打つんだよ」などと口で言ってもなかなか伝わらないから、ある時期までは臘八摂心の際などに叩いてみせていましたが、昨今は背筋や腕、腰の筋肉の衰え著しく、力強く滑らかに打てなくなったので、こちらは数年前に引退しました。しかし、卒寮生の中に、往事の私の大擂の音を覚えていてくれる人が結構いるのは嬉しいことではあります。

(続く)
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