そうかん日誌 ~Du 11eme arrondissement de Paris

タイトルを「りょうかん日誌」から「そうかん日誌」に変更しました。

5月の2首

2018-05-29 | Weblog
(写真は天草の大江天主堂)

GW中に、高齢の母の希望により、母と妹、弟夫婦、家内と私の6人で、天草、阿蘇など、熊本を旅して来ました。私は熊本に住んだことはありませんが、亡父が熊本市、母が八代市の出身で、今も熊本には親戚が何軒かあることから、数年に一度くらいは彼の地に赴く機会がありますが、この顔ぶれで行くのは初めてのことで、また、母以外は、私も含め天草を訪れたのは初めてであったこともあり、なかなかに思い出深い旅となりました。

『初夏遊天草』

滄洲碧海此相望
遙拝皎然天主堂
誰料往時多殉教
清宵思量祖先郷 (下平声 七陽)


『初夏 天草に遊ぶ』(書き下し)

滄洲 碧海 此に相い望み
遙拝す 皎然たる 天主堂
誰か料らん 往時 殉教の多きことを
清宵 思量す 祖先の郷

(自訳)
緑の島々や青い海を眺め
真っ白な教会を遠くから拝む
この美しい風景からは、その昔、この地で過酷な
キリシタンの弾圧があったことなど偲び難い
晴れた夜に この地に生きた
先祖のことに思いを馳せてみる


この詩を作るにあたっては、まず、「天主堂」(キリシタンの教会)という趣きのある言葉を入れようと思いました。「堂」という字の元の韻は「陽」(下平声七陽)なので、同じ韻目から第1句の「望」、第4句の「郷」が決まってきます。また、「主」は仄字で、これが第2句の6文字目にあることから、全体の平仄も決まってきます。・・なんのことだかわからないかも知れませんが、興味のある寮生にはわかりやすく教えてあげるから質問に来るように。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

竹友寮の法戦式は、ご存知のように、宗門に認められた晋山式の一環として修されるものではなく、寮生の後学、参考のため、進退の修得を目的とした模擬的なもの、いわばシミュレーションですが、馴らしに馴らしを重ねて、寮生全員で綿密に組み立てて行くものなので、一般のご寺院の法戦式にまったくひけは取らないという自負は皆持って臨んでいます。本寮においては年分行持となっているので、私が住持の役をお勤めするのも二十回を超えました。

『學寮首座法座』

竹篦奉戴匝堂中
相対山僧恭曲躬
毎歳重聞獅子吼
昂然意氣古今同 (上平声 一東)

『學寮首座法座』(書き下し)

竹篦を奉戴して堂中を匝る
山僧に相対して恭しく曲躬す
毎歳 重ねて獅子吼を聞く
昂然たる意氣 古今同じ

(自訳)
首座和尚は竹篦を捧げ持って
法堂の中をおもむろに歩み
住持役の私に対して恭しく頭を下げる
こうして毎年寮生の法問を聴くが
彼らの真剣さは変わることがない

「山僧(さんぞう)」は、僧侶が自分のことを謙っていう言葉。この詩には、まず「獅子吼」という言葉を入れようと思いましたが、「吼」が仄字なのでこの三文字は第3句に入れることが決まり、「子」も仄字なので全体が平起式と決まります。「寮生の真剣さは今も昔も変わらない」ということをいいたいので、結句を「古今同」とし、こうすることによって、「同」は「上平声一東」の韻であることから、第1句の「中」、第2句の「躬」を選び出します。・・よくわからない者は寮監室まで。
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