今日は「花祭り」
潅仏会とか仏生会、降誕会とも呼ばれるお釈迦様のお誕生を
お祝いする仏教の行事です。
中国を経て日本に伝わったのが606年と言われています。
お寺の境内で「花御堂」と呼ばれるお花で飾られた小堂が設けられ
そこに右手を挙げた誕生仏が安置されています。
お参りに来た人たちはその仏さまに、柄杓ですくった甘茶を
頭上から注ぐのです。
お釈迦様が産まれたときに、帝釈天や梵天が天から降りてきて
更に、九匹の龍が天上から降りて清浄な香水を吐き注いで
産湯を使わせたという伝説から、甘茶を注ぐ習慣になったそうです。
正式には五香水(五色水)という五種類の香水が用いられるそうです。
右手は上を指差し、左手は下を指差し
「天上天下唯我独尊」・・この宇宙に存在する全てのものは、みな平等である。
お釈迦さまがお生まれになったときに仰った言葉。
今日はその教えをもう一度、心に刻みたいものですね。
長野市の骨董やさんのウィンドー
両親が生きていた頃は、花祭りにはお寺に行くという習慣でした。
お稚児さんの仕度をした子供達を見にいきながら
お参りをする・・ほんの少し肌寒いけれど春の日差しに
新しい季節の薫りを感じながら、去り行く櫻を見送る・・という。
でも父が亡くなった年に「合掌童」が家に来てからは
お雛様を片付けたあとは「待降祭」の如くしつらえるようになりました。
日々、「生まれた役割は・・?」などとは考えませんけれど
こうした行事を毎月用意していく中で、
不思議ですね・・生かされている意味と向き合うようになります。
そして、命の継承を思います。
生きていくために、文化はとても大きな役割のある道しるべなのです。
出始めのたけのこの姿・・岩をも砕き真っ直ぐ伸びてゆく様子に
お釈迦様の姿を重ね、独活という漢字をもつうどにお釈迦さまの精神を重ね
大切な言葉の盛り物として、頂く。
きちんと今年度も自分自身の足元を見つめられるように、
全て自分の責任のもとで生活していけるように、
あらゆる物に対して、愛情をかけられるように、
そんな想いを抱きながら、今年も筍ご飯と独活の酢味噌和えを頂きました。
今朝早くから仕度をし始めた妹の姿に、母の面影が垣間見られ
いつものキッチンの様子なのに、何故か神聖で、思わず息を呑みました。
毎月、何かしら行事のある日本の文化。
季節を愛でる事で、丁寧に生きていく過程を積み重ねられる・・
そんな幸せを実感致します。
今日から4月ですね。
新年度・・新入社員の方のピカピカ姿が目を引きます。
慣れないスーツ姿が何とも新鮮で・・
思わず、「似合っているよ。大丈夫!!」と声をかけたくなりますね。
これからが、人生の始まり。
くじけず、勇気を持って、笑顔で過ごして下さいね・・って
若者達の背中にせめてものメッセージ。
3月30日、31日と冬のように寒くて
せっかく咲いた桜がちじこんじゃっていないかな・・
風に吹かれて散ってしまわないかな・・と心配でした。
でも、やっぱり新渡戸稲造さんも仰っていたように
「櫻は大和魂の典型」ですね。
散る時期がくるまでは、何が何でも枝にしがみつく。
そして、自ずと決めた最期の時期には潔い姿を見せてくれる。
命のある限り、しっかりと自分のお役目を果たします。
毎年、こうして櫻の美しい景色を眺めながら
私は「命」を想います。
櫻を題材にした和歌や俳句、<源氏物語>に描かれた桜の情景、
櫻の名所での古式を大切にした数々の行事など、櫻をなくしては
日本の文化は語れません。
櫻は中国から渡ってきたと聞いていますが、櫻を日本人の心に刻みこんだの
和歌だと言われています。
その第一人者が西行ですけれど、和歌も中国の詩を平安貴族が十分に学び、
深めて作り上げた文化だそうです。
<櫻狂い>をした西行。その西行を慕う歌人や俳人達、又、その歌人を慕う
歌人たちが櫻を愛し・・やがてそれは文学全般に染み渡り、絵画・着物・
蒔絵・更に和菓子となって文化にまで高まっていったのでしょうね。
日本の文化は殆どが海を渡ってきたものですけれど、日本流にアレンジされ
独特の文化が定着しています。
誇るべき、素晴らしい文化です。
お気に入りのお店の玄関先
昨夜、仕事が終わってから一人でお気に入りの場所でお花見。
冷たい風にさらされながらも、凛とした美しさで輝いていた櫻。
今夜はどんな表情を見せてくれるのでしょう。
「花明かり」の中、今夜はしばし天へ昇った懐かしい方達との
おしゃべりを楽しみたいと思います。