コロナ禍、終息の兆しは見えず、憂うつな日々。友人からの絵手紙に少し元気が出る。
この絵手紙は、後のち、世界遺産になるかも、と息子の言葉(笑)
そして、また思い出したトーマス:マンの『ベニスに死す』
若いころ、トーマス・マンの原作で読んだときは、こんな壮絶な愛もあるのかと衝撃を受けた。嫌悪感も偏見も抱くことなく。
ベニスに滞在する大学教授でもある初老の作曲家が、美しい少年に惹かれる。遠くから眺めるだけでしかない愛のかたち。
折しもベニスにはコレラが流行しはじめる。逃げだす観光客たち、街は消毒薬のにおいと遺体を焼くにおいにまみれ、閑散としていく。
少年の家族はなぜか滞在しつづけるので、教授も居つづける。
ルキノ・ヴィスコンティ監督は、国の崩壊、貴族、旧家、人の崩壊を描くひとだ。
ここでもベニスの街とダーク・ボガード扮する音楽家の崩壊が描かれる。原作はそんなに長くないのに、延々としつこく、最後まで醜く。
ダーク・ボガードは、唇のあたりの少し卑しい感じをのぞけば、好きな俳優だった。いい映画に多く出演している。年齢からして、中年になってからの彼しか知らないが。
(写真はネットより)
台詞のなかに──芸術に健康な魂は必要ない──とある。
これはトーマス・マンの言葉でもある気がする。
確かめたいが、あの本はどこへやったろう。
別ブログからの再掲。2013.4.11。