蓬 窓 閑 話

「休みのない海」を改題。初心に帰れで、
10年ほど前、gooブログを始めたときのタイトル。
蓬屋をもじったもの。

ベニスに死す

2020年11月05日 | 映画

 コロナ禍、終息の兆しは見えず、憂うつな日々。友人からの絵手紙に少し元気が出る。

 この絵手紙は、後のち、世界遺産になるかも、と息子の言葉(笑)

 

 そして、また思い出したトーマス:マンの『ベニスに死す』

若いころ、トーマス・マンの原作で読んだときは、こんな壮絶な愛もあるのかと衝撃を受けた。嫌悪感も偏見も抱くことなく。
 
 ベニスに滞在する大学教授でもある初老の作曲家が、美しい少年に惹かれる。遠くから眺めるだけでしかない愛のかたち。

 折しもベニスにはコレラが流行しはじめる。逃げだす観光客たち、街は消毒薬のにおいと遺体を焼くにおいにまみれ、閑散としていく。
 少年の家族はなぜか滞在しつづけるので、教授も居つづける。
 
 ルキノ・ヴィスコンティ監督は、国の崩壊、貴族、旧家、人の崩壊を描くひとだ。
 ここでもベニスの街とダーク・ボガード扮する音楽家の崩壊が描かれる。原作はそんなに長くないのに、延々としつこく、最後まで醜く。

 ダーク・ボガードは、唇のあたりの少し卑しい感じをのぞけば、好きな俳優だった。いい映画に多く出演している。年齢からして、中年になってからの彼しか知らないが。
(写真はネットより)

 
 台詞のなかに──芸術に健康な魂は必要ない──とある。

 これはトーマス・マンの言葉でもある気がする。
 確かめたいが、あの本はどこへやったろう。

別ブログからの再掲。2013.4.11。