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秋紀 芳慧 (Yoshie Akinori)

「SHE~彼女」佐東利穂子solo公演

兵庫県立芸術文化センターでの「SHE~彼女」佐東利穂子ソロ公演を観にいってきました。

最近金がなくなかなか舞台を見にいくことができなかったそこへ栃本から「KARASの佐東さんの公演のチケットが売れ残っている」との情報をゲット。兵庫県立芸術文化センターの会員に入っている栃本の話によると、会員専用サイトから空席状況を見てみるとなんと佐東さん公演半分くらいしか席が埋まっていないとのこと!さらに芸術文化センターから届いた佐東さんのチラシを見ているうちになんだか観てみたい気持ちにそそられました。そして今勅使河原三郎とのデュエットを踊りまくっている今、脂ののりきっている佐東さんのソロ公演はもう二度と見れないかもしれないとの思いからチケット3000円は安いと考え観に行きました。

当日お客さんは入っているのだろうかと気にしながら中ホールに入ってみると、やはり空席が目立ちます。半分以上空席。ダンサーにとっては無念だろうなぁ~と思いつつ気持ちを落ち着かせて幕が開くのを待ちます。
暗転の中、たぶんヨーロッパの風景らしき草原や海辺で佐東さんが踊る映像が流れました。色っぽかったり、純真無垢であったり、ダンサーとして生きる佐東さんが牧神の午後をバックに踊る映像。えんえん続くのかとも思えるその映像の中の佐東さんの像が消えたのと思ったら、画面の手前に本物の佐東さんが立っていた。
そして体をシェイクしながら舞台を踊りまわる。ハードなノイズの中、形作られていくフォルム。ああこの人は勅使河原流ダンス言語以外のものを持っているのを強く感じさせられました。
ただ中盤からなんだか以前勅使河原三郎のパートナーだった宮田佳さんに見えてきちゃった。時間が経つにつれて自分の目が佐東さんの舞踊の中にKARAS風に見えてきたのかもしれない。そう思いながら見ているとなんとセリフが聞こえてきた。「真夜中に鏡を見ることをお勧めするわ」
これにはやられた。真っ暗闇の中で倍加する鏡の暗闇を見つめているがあなたは何もそこに見えるものを認めることはできない…そんなよう分からん???な内容のセリフが女の声で聞こえてきた。それを聞いた瞬間何か知らないけど感動した。
後半に入ってもさらに佐東さんはフルパワーでハードなテクノにのせてえんえん踊りまくる。1時間という上演時間が長く長く感じられる。終演後思わず時計を見て1時間しかたっていないことにびっくりした。
照明、装置ともシンプルながらも何か重層的なものも感じた。なんとなくKARASの稽古場でやっていることを見せられたような気がする。


前日にNHKでピナ・バウシュ ヴッパタール舞踊団の「私と踊って」を見てました。ピナ・バウシュによって男女の恋愛の心の性質の違いを暴力的な表現までに高めたすさまじい作品で感動した。佐東さんの「SHE~彼女」とピナの「私と踊って」はお互い一線を画すようでいて、何か言葉にならない人生みたなものを身体に託す姿勢には何か共通するものを感じた。




ある方に「ダンスを見てて何が面白いのか?」と問われたことがあります。確かにテレビドラマみたいに何かわかりやすいものはダンスには少ない。でも佐東さんやピナの作品を見て分かったことは、「ダンスを見る快楽は存在する」ということです。頭を使って、目で見て、耳で聴き、劇場の空気で感じられる快楽。性欲、食欲に並んで「ダンスを見る快楽」というものは存在する、そう感じます。




佐東さんの公演はそういうことを確認できた貴重な公演でした。

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