小説「離しません!」&スピンオフ「オミとカイ-少女の霊と俺達と-」

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小説「オミとカイ」14.カイ…

2024-07-16 21:57:00 | 小説
「オミさん、はい、ピーチ味でいいですか?」

 昼休み、ダイキに渡されたのは栄養補給用の飲むゼリーだ。

 カブトムシでもあるまいし、と自分でも情けなくなるのだが、こんなものしか喉を通らない。

 カイが帰ってきた時に動けないと困るので、何か栄養を取っておかないとと思うだけだから、無理してでも飲んでいる。

 ダイキは普通の食事… スーパーの生姜焼き弁当とかを食べているが やっぱり無理して どうにか…という感じだ。
 俺だけではなくカイまで支える気でいるからだろう。


 麻里華ちゃんのことは、たまにしか思い出さなかった。


 
 そんな昼下がり 、テーブルの上のダイキのスマホが鳴った。

「固定の知らない番号か…でもお客さんだったら困るのか…」
と、ダイキがテーブルの上のスマホを取り上げると、


「はい。笹本大輝です。え? 警察署...?」

 俺もダイキもフリーズしてしまった。


ー警察署…ですか…

 はい、男性で20代後半くらいに見える…金髪で左耳にピアス…

 目は切れ長でイケメン…

 多分僕の上司だと思います…会社の専務です

 本人だったら〈タカイカズナリ〉と言います

 俺はダイキの方を見つめるばかりだった

...林を転がり落ちて、病院に入院中なんですね

分かりました すぐに行きます。


「何だって? 」

「カイさんが高井神社の斜面から転がり落ちて、脳の検査で入院したそうです 」


 脳って…

 せっかくまた会えるのに、どの程度のケガなのか…俺は暗い気持ちで、でも急いで、車で1時間ほどの病院へ向かった。

 カイは、高井神社の階段脇の斜面を転がり落ち、神社の見回りに来ていた町内会長さんとおまわりさん2人に助けられたということだった。

 いつものバッグやスマホをその途中で落とし、本人も名乗ろうとしないので、デニムのポケットに入っていたダイキの名刺だけが手がかりだったのだという。

 おまわりさんと色々確認をして、カイのケガは手のすり傷だけと聞いた。頭の方は何ともないという。
 それから看護師さんに病室に案内してもらった。

 …カイは薄いグリーンの入院着で入ってすぐのベッドに横になっていた。

 点滴をセットされていた。病室には他に患者はいなかった。

 俺の姿に気がついたカイは、ものすごく辛そうに俺を見た。

「オミ… 」

「カイ… 」

 お互い何を話したらいいのか困っていた。


 俺はダイキに談話室で待っているように頼んだ。


 二人きりになってようやく俺は、

「高井神社 昨日ダイキが行って探してたんだよ。

 その前は2人で探しに行ってたし」

 その先を何と続けたらいいものか俺は本当に困った。

 無事で良かった、は違うように思えた。




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