未生…

一列（ひとつら）の仏よ祈りを傾（かたぶ）ける処女（をとめ）の頬に涙あらすな

神無…

愛といふをんなの匂ひ十月をエロティシズムに浸す湖

鶺鴒…

淋しらに手触（たふ）れば青き火（ほ）のなかを肉叢（しし）はいち羽の鳥になりゆく

無辺…

この日よりきみが手のもつかなしみの無辺の玻璃につたひくるかな

渇愛…

夫婦はもをんなのいのちひもじくてこころはだかにきみに抱かるる

鬼棲…

人妻の乳房与（あづ）けしその日よりあふごと肉叢（しし）に鬼棲むらしも

肌重…

慄（ふる）へつつきみにゆだねる婚外のをんなの肌を放したまふな

花心…

胸元のにほひあたらし人妻のこころふるふる溶（と）ける朝かな

青傷…

子を産みしをんなの胸の青傷のなにげに熱く廻りくる朝

瑶心…

あく離（か）れて抱きもならじ汝（な）が肌を火の点（つ）くやうに恋ふる朝かな

青踏…

たまきはる現（うつつ）の限り放埒のをんなを生（あ）らむ青き火（ほ）を踏み

青慄…

さし入れる腰の高さに放埒のをんなが青の炎(ほのほ)に慄（ふる）ふ

炎環…

放埒のをんなのいのち悉（ことごと）に青き火（ほ）となれきみが腕（かひな）で

落暉…

びろうどの光りたぐれば青蝶のかたはれの空秋暮れ落つる