Sodom…

背に回るきみの手のひらはや恋し　ソドムの市の罪の子ぞわれ

帰生…

こしかたのいのち抱かれぬ　白髪のをんなさびしもいのち抱かせよ

再慕…

越え隔(へな)る月日がありて背に回る手のひらやさし年上のひと

坂道…

きみのにほひ落とせず帰る坂道を　三十路のをんなに風吹き抜ける

青女…

武蔵野の青女の胸に唇（くち）づけて　原罪の子の思春をはんぬ

青眸…

青春の消へざる棘のごとくにも　あをき眸（まみ）もつひとに会ふかな

思春…

眩しくも饑（ひも）じくもある思春期の　あの日に還るきみの眼差し

夏菫…

細き腰もの柔らかくなりゆくをとどめがたかる夏は罪かな

白光…

白光のきみは愛（うつく）し昼まひる　夏草にほふその乳房はも

夏草…

をのこはも性に覚（さ）むれば日の下に　夏草にほふをみな抱けかし

戸片…

もう一度ふたりの戸片（とびら）開けたくて　女の胸が恋にそよめく

雨女…

雨の日は降り来る雨に抱かれたし、　不惑の女を掠（かす）めるように

昼顔…

ひるがほの横たふやうに尼僧（あま）の寝て　仄かに零（こぼ）るカクテルの香よ

野花…

野良着よりあらはにひらく白き胸　つひに名前を告げあはざりき

銀光…

藍染めのもんぺの下の濡羽色　顔埋めしを空が見てをり