夏抄…

吾妹（わぎも）その力をこめよ　踝（くるぶし）の向かうへ夏は闌（た）けてゆくかな

花野…

双つ蝶まぐはひ夏の庭くぐり　婦人（をんな）は花野を身ごもりてくる

婦人…

夏盛り　互（かた）みに忘る名にあれどしきりにくちびるかさね合ふかな

夏天…

夏の天（そら）下垂（た）る窓辺　婦（をんな）らの膝を濡らせし青年の唇（くち）

喪失…

をんならの母乳の記憶失せしより　裸体に絡（から）む青年のシャツ

炎天…

喉元の白さ眩し　息殺し母性は夏の白日に伐（か）る

炎昼…

人間の母乳はさむし　嬰児（みどりご）の声剥がされて　ま昼傾（かたま）く

夏海…

人妻のなかの「をんな」が息を吹く　ま青の海に夏きらめいて

mail…

青空に吸われるように抱かれたい　きみの文字列　夏が耀（かがよ）ふ

愛逢…

人妻の心をさくっと侵す風愛逢（めであい）月のをんな滴（したた）る