半澤正司オープンバレエスタジオ

20歳の青年がヨーロッパでレストランで皿洗いをしながら、やがて自分はプロのバレエダンサーになりたい…!と夢を追うドラマ。

ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!) 第66話

2025-01-17 08:15:27 | webブログ


2025年 新年明けましておめでとうございます!
今年もどうぞまた、よろしくお願いいたします。


バレエ教師の半澤です。
火曜日から土曜日までの朝は11時からレッスンやってます。
水曜日と金曜日の5時20分からは、小学生を対象とした
レッスンをやってます。
夜は火曜日から金曜日まで7時からです。土曜日は夕方の6時からです。
祭日は月曜日も他の曜日でも朝11時からです。


皆さま、お待ちしております!


ホームページ半澤正司オープンバレエスタジオHP http://hanzanov.com/index.html
(オフィシャル ウエブサイト)


私のメールアドレスです。
rudolf-hanzanov@zeus.eonet.ne.jp
http://fanblogs.jp/hanzawaballet3939/


連絡をお待ちしてますね!


2024年12月28日(土曜日)寝屋川市民会館にて
半澤正司オープンバレエスタジオの発表会があります。


Dream….but no more dream!
半澤オープンバレエスタジオは大人から始めた方でも、子供でも、どなたにでも
オープンなレッスンスタジオです。また、いずれヨーロッパやアメリカ、世界の
どこかでプロフェッショナルとして、踊りたい…と、夢をお持ちの方も私は、
応援させて戴きます!
また、大人の初心者の方も、まだした事がないんだけれども…と言う方も、大歓迎して
おりますので是非いらしてください。お待ち申し上げております。


スタジオ所在地は谷町4丁目の駅の6番出口を出たら、中央大通り沿いに坂を下り
、最初の信号を右折して直ぐに左折です。50メートル歩いたら右手にあります。


バリエーションはジゼルより「ペザント」女性バリエーションです。
男子も自分の好きなヴァリエーションしましょう!
さ、やりましょう!!


連絡先rudolf-hanzanov@zeus.eonet.ne.jp


ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)
モスコウスキーバレエ団(モスクワ国立バレエ団)
第66話
キーロフ劇場と道一本を挟んだ反対側の劇場…。
ここの関係者入り口には誰も立っていなかった。
ハラハラしながら中へと進んだ。何食わぬ顔を
装いながら廊下で門衛らしき人物にすれ違う
瞬間に例の呪文「ズドラストブツィエ…」を。
「…?」相手は不思議そうにショージを見ていたが
ショージはさも当然であるが如く中へ進み舞台
付近にダンサーたちを発見した。


「やっぱりこれからレッスンがあるんだ!」
ショージは急いで近くのトイレでレオタードに
着替えた。自分がダンサーなのだという主張を
するにはこの姿が一番だからである。


 早速舞台に上がって、そこでウォーミングアップ
をしている女性ダンサーにロシア語で話しかけてみた。
バスの中で習った、「どこ?」と言う単語に
「ディレクター」を付けただけであるが。すると、
女性ダンサーは「こっちよ…」とショージを
ディレクターのいる部屋へ連れて行ってくれた。
丁度ディレクターは部屋から出て来たところで
ショージは英語で捲くし立てた。


「私は日本人です!イタリアで仕事をしていますが
このロシアで勉強したくてやって来ました!是非
レッスンを受けさせてください!」 ディレクターは
しばらく呆然とショージを見た。多分英語は通じて
いないのかもしれなかったが、ニッコリと笑い何か
ロシア語で言った。ショージはそれを「どうぞ、
存分にやってください…」と言っているように
勝手に解釈した。舞台に戻るとプリエが始まって
いた。空いてる場所にツツツ…と割って入りレッスン
第一号の開始だ。舞台の一番前に老婦人が椅子に
腰掛けて指導しているが椅子から立ち上がる事は
無く、淡々と言葉のみをダンサーたちに伝えた。
エクササイズを説明しているのであろうがショージ
にはチンプンカンプンだ。


隣の女の子に小声で「あれ、誰?」とロシア語で
聞くと、一言、「ドジンスカヤ!」と言った。「え?
ドジンスカヤってあの有名な?うへーっ!天下の
ドジンスカヤのレッスンを受けちゃってんの!?
すんげ~!凄い人数のダンサーたちに挟まって、
いきなり舞台上でレッスン出来るなんて幸せだな…」
そしてレッスンが終わって劇場を出た。「えーと…
あれっ?どうやったらホテルに帰れるんだ…?」


タクシーを待つ人々の列から100メートルほど
離れた場所に立つと不思議に目の前にタクシーが
止まった。「あれ?どうしてかな?」左ハンドルの
運転手は助手席の既に開いている窓から身を乗り出し
低い声で、「ドルか?ドル払い出来るのか?」
ショージは人々が並んでいる列を見るとその
たくさんの人々がショージの方をを凝視している。
 ショージは意を決して「そうだ…ドル払いだ!
ホテルへ帰るけど幾らか?」運転手は「5ドル!」
と言った。多分レニングラードの現状では5ドル
と言うのはべらぼうな料金なのであろうが、英語を
少し話せるこの色黒のジプシー風な運転手にショージは
賭けてみた。


 タクシーに素早く乗り込むと、並んでタクシーを
待っている人々がショージの目に入った。ぼやいて
いる人や明らかに怒りの形相を表している人もいた。
「なんだ!あのアジア人はドル払いをしたのか…!」
とどの顔にも諦めた表情がショージの乗ったタクシーの
窓の外を流れて行く。


 運転手から「何処のホテル?」と聞かれてドキリと
した。「実は分から無くなってしまったのだけど…」
とショージが言うと、運転手は「はあ?」暫く走り
続けて「ここじゃない?」「あ、ここだ!やった、
着いたっ!なんで、どうやってこのジプシー運転手は
分かったんだろう!?」
(つづく)


ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!) 第65話

2025-01-16 08:17:33 | webブログ


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夜は火曜日から金曜日まで7時からです。土曜日は夕方の6時からです。
祭日は月曜日も他の曜日でも朝11時からです。


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また、大人の初心者の方も、まだした事がないんだけれども…と言う方も、大歓迎して
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スタジオ所在地は谷町4丁目の駅の6番出口を出たら、中央大通り沿いに坂を下り
、最初の信号を右折して直ぐに左折です。50メートル歩いたら右手にあります。


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ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)
第65話
 「ん~、どうやったら、中へ入れてくれるの
だろう…?」このまま引き下がったら折角この
ロシアまで潜り込んだのに何の意味もない。でも、
爺さんたちのガードは固いし…どうしよう?」


キーロフバレエ団芸術監督オレグ・ビノグラードフは来るか!?


関係者入り口で呆然と立って門衛の爺さんたちを
恨めしそうに見ていると次々に、バイオリンを
抱えた人や楽譜の束をバッグからはみ出させて
持ち込む人、この劇場で働く様々な人が必ず門衛に
語りかける一言があった。耳を澄ませて良く聞いた。
「ズド?ズドラストブツィエ…?」とこの門を通行
する人々は言った。「何だ、この呪文みたいな
言葉は!?」 かなり、長い間見ていたがバレエ
ダンサーは入って来ない。「ああ…芸術監督の
オレグ・ビノグラードフ氏が来てくれたら、直談判
するのにな…」門衛の爺さんたちもドアーの中に
入ってしまった。
 
扉を開けて4人一緒で固まって座っている門衛の
爺さんに聞いたばかりの呪文の言葉「ズドラスト
ブツィエ!」って言ってみた。すると、門衛たちは
呆れた顔して、「この男、まだいたのか!」と、
一斉にショージをじっと見た。流石にショージも
「あ、これはいけない!」と思って笑いながら「オー、
ソーリー!」と言って出直す事にした。


あまりにしつこいショージに嫌気が差しているこの
爺さんたちの顔を見るとショージの方が可笑しくて
笑い出してしまったが引き返そうにもまだ心残りが
ある 。 ふと、キーロフ劇場の前の大きな道の
反対側を見ると、もう一つ劇場らしき建物があり、
何かのポスターが貼ってあるのが目に止まった。
ショージは道の反対側に渡り、そのポスターを見に
行ってみた。すると幾人かの球形に太った大きな
おばさんたちがそのポスターを囲んで見ているので
良く見えない。


ショージはおばさんたちの間に割って入り、ポスターを
見るとバレエであった。一人のおばさんに「これ、
ここでやるんですか?」とゼスチャーを混ぜた
英語で聞いてみると、おばさんはロシア語を機関銃
のように使って「ダダダダ!」って説明してくれたが、
「ロシア語のイエスはダ~だよな?どうやら、
イエス、イエス、イエス、イエス ここでやる
のよ!」って事かな…日本のおばちゃんも、
そうそうそうよ!って言ったりするもんな…。」
おばさんの一人が大きな声を出して言った。
「このバレエは良いわよ!今夜なのよ!今夜!!
チケットはあそこで買うのよ!え?あんた、分ったの? 」


何処の世界でも、おばちゃんは親切で優しい。そんな
優しくて大きな丸い体のおばちゃんは自分の腕時計を
見せて、「今日の夜!この針がここに来たらこれが
ここでやるのよ!あんた、分った?」とショージに念を
押した。 ショージは「あっ!これはもしかしたら…」
おばちゃんに礼を言うと早速その足で建物の裏側へ
走り出した。
(つづく)


ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!) 第64話

2025-01-15 08:13:33 | webブログ


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ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)
第64話
メモ帳を女子に差し出して、「劇場の場所を書いて
ください」と言った瞬間であった。女子の表情が
さっと変わり、ショージのメモ帳を女子が持って
いた鞄で隠した。その行動はまるでショージが恰も
出してはいけない物を出した事を叱るようで、そのまま
足早に女子は去って行ってしまった。


仕方無く今度は爺さんに声を掛けた。同じように
英語であったが、爺さんにはチンプンカンプンの
ようだ。だがこの爺さんはショージが迷っている
のを察知した。しかしショージが再びメモ帳を
出した途端、爺さんもやはり顔色が変えたが素早く
メモ帳を隠すと、辺りをキョロキョロしながら、
ロシア語で「駄目だよ!人前でこんな物出したら…
見られたら危ないじゃないか…!」ソ連では外国人
との紙のやり取りなどの行為は諜報活動とみなされ
スパイ容疑をかけられるのだ。


「ゆっくり喋りなさい、何処に行きたいのかね?」
ショージはしょんぼりしながらイタリア語で
「テアトロ…」(劇場)と言ったら通じた。「ああ、
テアトロか!劇場だね…?何処の劇場?え、キーロフ?
ああ、キーロフ劇場だね?よし、私に付いておいで」
爺さんはショージの手を引いて連れて行ってくれる
ようだ。
 
「ああ…良かった!!」ショージはその爺さんの服を
見ると、色がすっかり褪せて古びていていが、
アイロンはしっかり当ててあった。道行く沢山の
人々の服装にも色が無かった。鮮やかな色が全く
無いのだ。顔にも表情がない。活気もない。ただこの
限りないほど沢山の群衆はザッザッザッと歩いている
だけなのだ。爺さんはショージに何かを聞いて来た。
「何処から来たのか?と言っているのかな?ジャパン!」
と言っても通じない。


「ジャパンで駄目なら、ジャポン、ヤパン…駄目?
分からないか…にほん、ニッポン… 日本語で言って
分かるはず無いか…」だがそこで爺さんに通じたので
驚いたのはショージの方であった。「おー、ニッポン?
ニッポンスキーか?」爺さんは路面電車に乗ったり
歩いて公園を通ったり、その都度ロシア語で歴史やら
建物の説明などをゼスチャー入りで話した。
「ああ、なんと優しい爺さんなんだ」


キーロフバレエ団…な、中に入れてくださいっ!


爺さんが「着いたぞ…ここだろ?」「あっ、これだ!
写真で見たキーロフ劇場だ!そうです、ここです!」
ショージはフィンランドからバスでやって来る時に
バスの中にいた女の子から、少しロシア語を学んで
いた。「確か、ありがとうはスパシーバだったな…」
爺さんに「スパシーバ ボリショイ!」と言った。
するとその老人はニッコリと笑って手を振りながら
沢山の人の流れの中に消えて行った。大感謝だ。
 
ショージは早速、関係者入り口に回ってみた。4人
ほどの爺さんたちが門衛としてドアの前と内側に
立っている。ショージは英語で「私はバレエダンサー
です。中に入れてください」と言った。ここでも
英語は通じない。兎に角、何でも言ってみた。
「バレエ、バレエット、バリエ…」門衛の爺さんは
しまいには怒りだして、「うるさい!あっちへ行け!」
凄い剣幕の爺さんに追っ払われたショージは少しだけ
離れた所からその関係者入口を見ていると、次々
たくさんの関係者が入ろうとした瞬間を逃さず
ショージも一緒に混じり込んで入ろうとした。
と門衛の爺さんの一人に、「何してんだ、この~っ!」
と腕を掴まれて摘まみ出されてしまった。
(つづく)


ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!) 第63話

2025-01-14 08:24:18 | webブログ


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夜は火曜日から金曜日まで7時からです。土曜日は夕方の6時からです。
祭日は月曜日も他の曜日でも朝11時からです。


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ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)
第63話
ソ連では外貨は宝石みたいであるがルーブルなど
鼻くそみたいな物なのか。ロビーで朝の集合に
向かうと酔っ払ってフィンランド人の男たちも、
約束の時間通りに集まった。ショージの部屋の男も
起きて来ていた。「あんなに泥酔していたのに、
よく起きられたものだ…」と呆れた。


ガイドは、「これより許された範囲内でのショッピ
ングに向かいますので、皆さん、用意をして来て
ください!」ガイドの言葉が終わるのと同時に
男たちが部屋へ戻って支度をし、再びロビーに
集まって来た。


一行はガイドに引率されて混雑するロビーを
ゾロゾロと横切った。カーキ色の制服を着て、
きつい目をした無表情の数十人の女性官を横目に
ショージたち全員はホテルから出た。ガイドが
ショージに目で合図をして「今よ!行きなさい…!」
そして時計を見せて手の平を軽く上げて5本の
指を立てた。つまり、「5時間よ!」とショージに
確認させたのだ。


ショージは群衆からただ独り抜け出し、何食わぬ
顔をして横道に外れた。そして更に他の道へ
曲がると走らないように、そして目立たない
ようにしながら足早に更に4つ角を曲がったり
して、兎に角このグループから遠ざかる事だけを
考えた。人間というのは逃げる時は何者かに
追われているような恐怖の感覚に陥る。
振り向いたら捕まってしまうかのように、兎に角、
怯えた。そしてひたすら遠ざかる事だけを考えた。


なんとかグループを離れる事に成功した。監視の
目から離れる事をしてのけた。 レニングラードの
街中には路面電車があちこちに走っている。
「ここは…いつかテレビで見た日本の戦後の銀座
通りみたいだ…」ショージはやって来た路面電車に
足早に乗り込んでホッと息をした瞬間、背中が
ゾッと冷たくなった。なんと、ホテルの場所や
ホテル名の入った紙を部屋に忘れてきてしまった
のだ。「でも、時既に遅しだ…後の事は後で考えれば
良いか…それよりレニングラードの街の何処に、
キーロフ劇場はあるのかな…?」


憧れのキーロフ劇場…門前払い!!


路面電車でホテルからはかなり遠ざかった所で
一度電車を降りてみた。相当に広い道だ。歩道も
広くとってあるが、道行く人々の数が凄い。
レニングラードの人口は恐らく凄い人数なので
あろう。ヨーロッパ系の白人もいれば、アジア系や
モンゴル系、アラブ系…色々な顔があった。


ショージは以前この国の地図を見た時に、ソ連は
地球の半分位あるのではないかと思ったが、人種の
ミックスがこれまた凄いと感じた。そして何処を
歩いているのかさえも見当が付かないショージは、
取り敢えず道行く女性に「エクスキューズミー!」
と声をかけた。すると女性が止まった。


たくさんの道行く人々がショージたち2人を邪魔
そうに避けて行く。ショージはその若い女性に
英語で必死で「劇場は何処ですか?キーロフ劇場は
何処ですか?」と繰り返し訊ねた。するとその女の
子は「ニプニマイ…!」と頭を横に振った。ショージは
女の子の唇を見つめ、小さなメモに「ニプニマイ…
多分、わからないの意味」と書き込む。


既に通りで邪魔になっているのでショージは女性に
「ちょっとそっちの道の端へ行きましょう」と
促して続けた。ゆっくりと「良いですか?キー、
ロ、フ!シアター!シアターで分からなかったら、
よしっ、フランス語ではテアトロ!…もう一度私の
口を見て下さい!フランス語ですよ、OK?キーロフ
テアトロです!」


ショージは手振りを入れたり大きく口を開いてアク
セントを聞こえ易くして、更に大きな箱のゼスチャー
を見せて「分からないかな…箱じゃないんです!
劇場なんですよ、劇場!」女性は私のその姿を
見ながらじれったそうに、「シュト シュト?」と
頭を横にして眉間に皺を寄せながら繰り返した。
その女性の困ってる表情を見たショージはまた、
メモに書き入れた。「シュト…多分、何?という意味」
(つづく)


ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!) 第62話

2025-01-13 08:31:03 | webブログ


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ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)
第62話
再びバスに乗り込みホッとした。「大丈夫だった…
そりゃそうだ、僕は既に大使館から旅行ビザを
もらっているんだから…」 数時間経ってバスは
街の中へ入って来た。そこはもうショージが見てきた
今までの西ヨーロッパの景色とは打って変わった
ソビエトの街の景色であった。「一体、何なんだ、
この国は…!?」


レニングラード到着!ここが…!?


バスは揺れながら、レニングラードの街中へ
入って来た。建物も都市だけあって大きく、
バスが走っているこの道も片側5車線くらいも
あるかなり広い道だ。だが、昭和初期の銀座通り
さえ、もっとカラフルだったのではないで
あろうか。この国には色というものがあまり
ない。看板もない。ただ建物と道だけだ。
 
ホテルにようやく到着した。周りに高い壁が
張り巡らされた中に入って行くと、駐車場
にはたくさんのバスが停まっており、その
一角に降ろされた。大勢の軍人や検査官たちに
囲まれてホテル内へと引率された。ホテル内は
暗く、軍人や検査官たちも入り混じって誰が
誰なのか、客なのかホテルの使用人なのか全然
判らないほどごった返していた。


ガイドも一緒であったが、ここでは笑顔が全く
ない無表情な女性検査官が一切の指揮を取って
おり、ショージたちのグループをロビーの一角に
集めてパスポートを徴収した。パスポートの
返還はなかった。ガイドが「帰る時まで、
パスポートを預かります」とショージたち全員に
伝えた。「何故、パスポートを返してくれない
のだろう…?」訳が分らかった。
 
 取り敢えず制服の女性官に「レストランあり
ますか?」と尋ねると、「ダー!」(イエスの
意味)2階にあるようなので早速行ってみた。
「うわ~、何て広いレストランなんだ~っ!?」
料金はドル払いだ。5ドルほどでスープと肉の
煮込み料理を頼んだ。意外に美味しい。そのレスト
ランで水のボトルを買い込んで部屋へ戻った。
 
レニングラードの人々…


到着から翌日の朝になった。部屋を共有する
フィンランド人の男は爆睡中であった。
ガイドとショージたち一行も全員ロビーに集合
した。部屋を共有している男はこの点呼に現れ
なかった。横では朝だというのにグデングデンに
酔っ払ったフィンランド人の男たちがウォッカを
ひたすら飲み続けている。ショージは、少々の
ドルを持ってホテル内の商店にパンを買いに
行った。2階のレストランの横にその店はあった。
「ドルで買うよりロシアの金ルーブルでは買え
ないのかな…?」


店のおばさんに「ドルの表示しかありませんが
ルーブルだったら幾らなんですか?」と英語で
尋ねると、「ルーブルでは売らないっ!」と、
ロシア語で断るおばさんの突然の大声でショージは
腰を抜かしそうになった。「なんでさ!ここは
ロシアで、この国のお金はルーブルでしょうよ!」
おばさんは更に恐ろしい形相で「売らないんだよっ!
けっ!」その剣幕にショージは「殴られるかもしれない…」と
諦めて、とりあえずドルで買い込む事にした。多分
この外国人だけが泊まれるホテルでは宿泊客から
たっぷりとドルを巻き上げる策略なのだ。
(つづく)