半澤正司オープンバレエスタジオ

20歳の青年がヨーロッパでレストランで皿洗いをしながら、やがて自分はプロのバレエダンサーになりたい…!と夢を追うドラマ。

ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)第85話

2019-03-31 08:13:13 | webブログ
おはようございます、バレエ教師の半澤です!

皆様、4月3日より新しくキッズクラス(3歳から)、そしてジュニアクラス(小学生)
が開設します!講師は小野杏菜です。たくさんのコンクールでも受賞歴があり、
魅力たっぷりなレッスンになりますよ!どうぞよろしくお願い致します。

通常の平日は朝は11時から初中級レベルのレッスン、夕方5時20分から初級レベルの
レッスン、夜7時から中級レベルのレッスンがあります。
皆さま、お待ちしております!

インスタグラム https://www.instagram.com/hanzawashoji_openballet/?hl=ja
ホームページ半澤正司オープンバレエスタジオHP
(オフィシャル ウエブサイト) オフィシャルサイトハピタス
その買うを、もっとハッピーに。 | ハピタス
皆様、2019年12月26日(木)に私の発表会があります。
もし、良かったら出演してみませんか?バリエーションでも良いですし、
グランパドドゥでも良いですよ!もちろんコンテンポラリーでも
良いですし、オペラでも舞台で歌います?
どうぞ、どんどん出演してください。
私のメールアドレスです。
rudolf-hanzanov@zeus.eonet.ne.jp
http://fanblogs.jp/hanzawaballet3939/
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創業36年、本場博多のもつ鍋・水炊き専門店【博多若杉】


連絡をお待ちしてますね!!

Dream….but no more dream!
半澤オープンバレエスタジオは大人から始めた方でも、子供でも、どなたにでも
オープンなレッスンスタジオです。また、いずれヨーロッパやアメリカ、世界の
どこかでプロフェッショナルとして、踊りたい…と、夢をお持ちの方も私は、
応援させて戴きます!
また、大人の初心者の方も、まだした事がないんだけれども…と言う方も、大歓迎して
おりますので是非いらしてください。お待ち申し上げております。

スタジオ所在地は谷町4丁目の駅の6番出口を出たら、中央大通り沿いに坂を下り
、最初の信号を右折して直ぐに左折です。50メートル歩いたら右手にあります。

日曜日のバリエーションは眠りの森の見所から妖精リラのバリエーションです。
ではクリスタル・ルームでお待ちしておりますね
連絡先rudolf-hanzanov@zeus.eonet.ne.jp

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ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)
1987年3月 (23歳)手紙には…
第85話
スウェーデンに着きバレエ団で働き始めた。それから
暫くしてショージは首を痛め、バレエ団から休暇を
もらった。その際、母のように慕っている東京の
麻生十番にあるクラブ「愛」のママに宛てて書いた
ショージの手紙にママから返信があった。ショージは
胸を躍らせ手紙の封を切った。ヨーロッパに来て以来、
誰からも手紙をもらった事のないショージに初めて
ママからの手紙であった。

ショージには一つの大きな迷いがあった。「人生とは
何か…そして人間は何のために生きるのか…」
それをこの手紙から読み取る事が出来たのだ。
そこには「一生懸命に今その瞬間瞬間を生きる事
だけを考えればそれで良い…」ショージは絶句した。
「全神経、全力を賭けて今この時を生き、明日に
備えるために今しなければ成らない事だけに
必死になれば良い…他の一切の邪念を捨て、
先の事など心配などしなくて良い。必死に今の
瞬間、瞬間を繋げた時にそこに自分の道が出来る
のだから…」

 ショージは手紙を見ながら、その文が段々と
波打って見え始めた。ショージの手紙を見つめる
目から滂沱(ぼうだ)の様に涙が堰を切って流れ
出たからだ。「ああ…この懐かしい筆跡!
昔ママから言われた言葉を思い出す…今しか
出来ない事を、その事だけをやればそれで
良かったんだ!何故、僕は今まで迷っていたん
だろう。先の事なんか心配する事など愚の骨頂
だったんだ…」目の前から霞がさーっと晴れて
行くように、そして不思議にも何かショージの
前に又、進むべき道が、方向性が微かに見える
ような気がした。

「ああ、なんて素晴らしい字なんだろう…
ありがとうママ、本当に心に沁み通る「愛」の
ママの言葉だった。

日本語の肉声カセットテープ

麻布のクラブ「愛」のママからの手紙の他に、まだ
包みの中には何かが入っていた。「あれ、何だ
これは?」包みから出すとティーシャツが入って
いた。グレーのティーシャツにマジックで寄せ書き
が書いてあった。それも可笑しいことに胸の所に
ショージがよく通っていた麻布十番の温泉マークが
手書きで書いてあるのだ。もう一つの小さな包みを
開けたらそこにはショージの後輩の秀樹からの
鉛筆で書かれたメッセージがあり、1本のカセット
テープがあった。

ショージは隣の家からカセットレコーダーを借りて
そのテープを聴くためにスイッチを押した。
「ショ-ジさんですか…?」ショージにとって
手紙に書いてある日本語の字も久しぶりであったが
この声にじっと耳を傾けた。数年の間、聞いた事が
なかった日本語の肉声だ。しかも懐かしい、直ぐに
泣く少年の秀樹の声であった。「ああ…なんと懐かしい
この声が…」

ショージは日本を発つ前に麻布のクラブ「愛」に
この秀樹という少年を紹介してショージの後釜
としてママにお願いしたのである。秀樹とは
六本木の「スタジオ一番街」の小川亜矢子バレエ
スタジオで知り合った。彼はまだバレエを習い
たてで生活力の弱い少年であったが、この男なら
真面目に仕事もしてくれるだろうし、秀樹に
とってもクラブ「愛」で働く事が出来ればママから
たくさんの事を教えて貰い、バレエを続ける事を
ママが応援してくれるだろう…そんな思いから
ショージは後釜として彼に白羽の矢を立てたのだ。
(つづく)
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ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)第84話

2019-03-30 07:32:36 | webブログ
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ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)
第84話
グレゴリーのアドバイス
第84話
グレゴリーにあらましの経緯を話したところ、
「ショージ…ドイチュ・オパー・ベルリンが
どんなに凄くて君がどんなにそのバレエ団に
入りたいとしても、君は既にこのスウェーデン
のギョテボルグバレエ団と契約済みじゃあないか。
まして君はこのバレエ団から借金してそっち
ドイツにいる訳だろう?君の気持ちは分らなくも
ないけど、良い考えとは言えないな…」

ショージは何とかならないものだろうか…と考え
込んだ。「グレゴリー、こういう幸運は僕にとっては
最初で最後かもしれないんだ!例えば僕が借りた
お金をドイツから返すからという事だったら
どうだろうか…?」

すると「勿論、ショージが絶対にそうしたいなら
それもやれるはずだが、ショージ…、1つだけ
覚えておかなければいけないよ…仮にお金を送り
返したところで、スカンディナビアの法律上で
君は20年間スウェーデンどころか北欧の5カ国
でも仕事が出来なくなるという事を念頭に置かな
ければいけないよ。それでも良いなら、君の自由に
したらいいのさ。」

決断

膝が震えて止まらないショージは上ずった声で
辛うじて、「グレゴリー、僕はもう決めたよ…
スウェーデンに行くよ!こんな事で20年間も
スカンデイナビアに行けなくなるようなそんな
行動には出たくないし、ましてブラックリストに
なんて絶対に載りたくない。またスウェーデンで
何かと宜しくお願いね。ゴメンネ、突然馬鹿な
電話をしたりして。労働許可証が降りたら真っ直ぐに
スウェーデンに行くからさ、じゃあ、ありがとう!」

監督の部屋へと向かったが、ショージは「彼に何と
言ったら良いのだろう…?正直に全部話すのが一番
なのだろうか…」秘書室で「ハロー!」と挨拶を
すると、その奥の部屋で眼鏡を鼻の上にちょこんと
乗せて、何か読み物か書き物をしていたのか芸術
監督がショージに気付き、「あーこっちだ、こっちに
入って来なさい!」と手で招いた。ショージはちょっと
狼狽しながらオロオロと入って行った。まだ何と
話し出したら良いのか見当も付かなかったが
監督のゲルト氏が「んー、グッドダンサー、さて
話しに入ろう!そこに掛けたまえ!」

ショージはもう迷わずに冒頭から「大変済みません、
実は私は既に違うバレエ団と契約をしておりこことの
契約が出来ないのです。まさかこんなに凄いバレエ団
と契約が出来るなんて、思ってもみなかったのです。
それが判っていたなら始めからここに来たかったの
ですが…」

するとニコニコ笑っていた監督の形相が驚きの顔に
変わり「違うバレエ団!?そりゃ一体何処の
バレエ団だね?ドイツ中の全てのバレエ団と
私は繋がりがあるのだが…」 そりゃこんな
大バレエ団の監督をしていれば尤もであろう。
「実はスウェーデンなんです…」するとゲルト氏は
眉間に皺を寄せて、「スウェ…?まあいいか…。
契約済みならば仕方の無い事だ。そうか、ならば
分った…」ショージはこんなラッキーをみすみす
逃がすのは本当に辛かった。ショージは思った。
「僕の人生は何か神様に試されているのだろうか…?」

 不思議な事に、この時から半年後にショージの
無くなったバッグはスウェーデンのバレエ団に届け
られた。一通の手紙が添えられており「列車内で
無くされた荷物は東ドイツ人の駅員が窓から捨てた
みたいで、それを拾った東ドイツの住民が荷物を
駅に届けました。結果的にバッグの中のロシア語の
辞書と地図が幸いしたようです…。東ドイツでは
ロシア人を極度に恐れるためにロシア関係の物が
バッグの中にあって良かったですね…」 

ショージはその手紙を見て苦笑した。が、やはり
無くなった私物が返って来るのは嬉しいものだ。
バッグの中は半年前のタイツやら夥しい数の
汚れた靴下などその時のままであった。「よしっ!
見たかったものは全部見た。イタリアのスウェーデン
大使館からも労働許可が取れた!スウェーデンに
行くぞーっ!」
(つづく)
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ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)第83話

2019-03-29 07:28:29 | webブログ
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ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)
第83話
ピアノの前の椅子に座っていた芸術監督の
ゲルト・ラインホルム氏がいきなり叫び、
バレエマスターを彼の元に呼び寄せた。
ショージは咄嗟に直感した。「これはいけない…
彼はとうとう激怒したかもしれない…。多分、
追い出されるであろう…」と。

レッスン受けているショージの乞食のような
格好と言い、また好き勝手をやってしまって
いるステップ…それは神聖なバレエダンサーの
レッスンを汚してしまったものとも言えるかも
しれなかった。芸術監督に腰を折って耳を
寄せるバレエマスター、ショージは上目遣いで
2人をジーッと見つめてその逆鱗に対応出来る
のか…ショージ自身不安でその結果がどの
ようになるのか、時間が恐ろしいほど長く感じた。

バレエマスターがショージに歩み寄り、小声で
「あー、君ね、あそこに座ってる人は、我々の
バレエ団の芸術監督なんだがね…」ショージは
「はあ、、そうなんですか…」「その監督がね、
君一人のジャンプが見たいそうだから今から
君一人でやってみよう。じゃあ、プレパ
レーション…!」ショージは「えっ!?ここから
出て行けって、あの人は言ったんじゃないん
ですか…?」

完全に的が外れ、ずっこけた。ダンサーたちも
シーンと静まり返りそしてニヤニヤと笑って
いる。ショージには彼らの心の声がはっきりと
伝わって来た。「やれ!やってしまえ!」
ショージの目的は最初からそこにあった。
「やるっきゃない!」そしてピアニストが
コクンと頷くと、前奏が響きショージの
全筋肉と神経が一点に集中して行った。
「今回は誰に遠慮しなくても一人だけで
踊るんだ。アドリブに次ぐアドリブで
やろう。そして仕上げにはパラプリに急遽
変更するぞ!」

パラプリとはフランス語で「傘」の意味だが、
まさしくジャンプしてから両足を大きく
開いたまま空中で回転する技術なのだ。
このパラプリこそショージが秘かに温めて
きた最大の大技だ。それを見ていた周りからも
呻き声が響いた。「おお~っ!!」その瞬間に、
ピアノの前の芸術監督であるミスター、
ゲルト・ラインホルム氏が大きな口を思いっきり
広げ、両手を狂ったようにバシバシと叩き
ながら、「グワッハッハハ!いいぞっ!
グーッド・ダンサー!決まりだ、お前を
ソリストで決めよう!ワッハッハ!よし、
こっちへ来てくれ今から私の部屋で契約だ!」

すると、ススッと秘書の女性が出て来て彼の
耳元に小声で何かを囁いたらゲルト氏の顔が
平家蟹のしかめっ面に戻り、ドイツ語で
何かを言うとショージに向き直り笑顔に
なって「じゃあ3時にしよう!3時に私の
部屋へ来てくれ!じゃ後で…」と言ってさっさと
行ってしまった。

ショージがこのドイツ最高のバレエ団のソリスト
だって!?信じる事が出来ずに呆然とした。
レッスンが終わりダンサーたちが次々と
稽古場から消えて行ったが、ショージは
暫し呆然と立ち尽くした。起きた現実が
信じられなかったのだ。レッスンを受けられた
だけでも幸せだと思っていたからだ。仮に
最低レベルの群舞としてこのバレエ団に入れた
としても、それさえ奇跡であるにも関わらず、
まさかのソリスト!?「まさか~!」と
頬っぺたを抓ってもまだ信じられない。

 ショージは即カフェにある公衆電話から、
スウェーデンのバレエ団に電話を入れるよりも
前にまずはあの頭が素晴らしく切れる明朗
快活な黒人の友人グレゴリーに電話を
入れる事にした。
(つづく)
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ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)第82話

2019-03-28 07:31:54 | webブログ
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第82話
翌日、稽古が始まる前にバレエマスターのアメリカ人
らしき先生にツカツカと歩み寄り「私は日本人で
今日レッスンに参加させて頂きます!」と言うと
先生はショージを足のつま先から胸元までさっと
見ると怪訝な顔して「あっそう…」おそらく、この
ドイツ最高のバレエ団を訪れた者の中でこのような
チンドン屋もどきの格好をしたダンサーはいないで
あろう。

ショージは顔から火が吹き出しそうで恥ずかし
かったが、こんな事でヘコ垂れていては駄目なのだ
と自分を叱咤した。ダンサーたちからバレエマスター
と呼ばれる先生の号令と共にレッスンが始まった。
あまりにも凄い世界的なダンサーたちが顔を揃えて
いた。マニュエル・ルグリ(パリ・オペラ座の
ダンサー)もショージの前にいた。バーレッスンも
終わると、センターエクセサイズに入る。ゆっくりと
踊るアダージオをバレエマスターが説明し終えると、
一斉に背の高い男性ダンサーたちはひしめき合って、
限られたスペースの中で淡々と踊る。グループを
2つに分けたが、それでも大混雑状態だ。

バレエレッスンの中盤にドアーがガチャッと
開いて、真っ黒に日焼けした顔の白人が外から
入って来た。しかめっ面で眼光が細く鋭く、
怒っているようなその顔はまるで平家蟹か
大魔神が怒った時のようで普通の顔ではなかった。

踊るピエロかピーターパン!

今日は身体の調子がベストの状態だ。こんな日が
ショージに稀に来る。ターンの時にはピアニストが
ショージのピルエット(コマのように回転する
技術)が終わるのを待ってくれて最後にジャーン!
と決めてくれると大笑いが起こった。何と言っても
ショージは「チンドン屋」のような衣装を着ている
からまるでピエロのような男の演技の締め方には
最高の終わり方なのだ。

続いて第二ラウンドの始まりでトップグループから
再びワルツが続行して行く。ヒートアップした
ダンサーたちは次々にピルエットを決めて行く。
ショージはピアノの前の真っ黒い顔の渋柿でも
食ってしまったかのように顔をしかめている芸術
監督をチラッと見たが、全く何の興味も無さ気に、
ただじっと全体の流れを見つめているだけである
からショージもレッスンだけに集中した。

いよいよ終盤のグランジャンプに入った。先生が
アンシェヌマン(踊りの順番)をダンサーたちに
見せてマーキング(本気ではなく力を抜いて
ステップを音楽に合わせてステップの組み合わせ方を
確認する作業)を始めた時に、ショージの脳裏に
ある事が浮かんだ。

「どうせやるなら先生が見せてくれた順番を無視
して他のダンサーたちに泡を吹かせてやるか…
ピエロはピエロでもそんじょそこらのピエロじゃ
ないという事を見せてやる!」ピアニストが鍵盤を
強く両手の指先で打ち込むと嫌が応にもボルテージが
ググッと上がり、ダンサーたちの意気込みがその
背中から燃え立つようだ。

ショージの1番好きなこの時間がやって来た。
堂々とした大きいダンサーが次々とジャンプに
入って行くのをショージはもう見ない。集中して
自分の内にある情熱を爆発させるためだった。
(つづく)
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2019-03-27 07:19:14 | webブログ
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ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)
第81話
見ると確かに後2回穿いたらティーの字の縦の
棒線の紐が切れそうなサポータだった。だが
ちゃんと洗濯してあって、ショージにしたら
最高であった。「ありがとう!」と大きく礼を
言うと他の男が、「これもあげるよ!」と片方
だけのベージュのバレエシューズをくれ、他の
ダンサーが「僕はこれを!」と黒いバレエシューズ
をくれた。

背の低めのダンサーが「僕はタイツはあげられ
ないけど、その代わりにこれをあげる!」と
黄緑色の膝あたりをぶち切ったトレパンを
くれた。誰かが叫んだ。「まだ上半身に着る
ものが無いんだろう?部屋の隅を見てごらんよ、
あれは全部持って行っても良い物ばかりさ!」

隅を見ると山のように埃をかぶったティーシャツ
やら色んな物が有るが、流石に捨てられただけ
あってどうしようもないほどの屑ばかりだ。
それでもこの衣類のゴミの山に手を出してみた。
しかしまともに着られる物はたった1枚の赤い
トレーナーだけで、それも腹の辺りでやはり
ぶち切られおり片腕の肘の辺りも切られていた。

 それでもやっとここに必要なものが全部揃った
訳だ。「やった…揃った…これでなんとか
レッスンが出来る…」ショージは最低必要な、
決してまともでは無いそれらの衣類を床の上に
並べてみた。

右足に黒の、左足にはベージュのバレエシューズ。
しかもサイズはかなり違い、片方は丁度くらい
だが、もう片方は馬鹿の大足みたいに大きかった。
「ま、ゴムを引っ張って調整しよう!」次に
タイツ代わりの薄グリーンの膝辺りでぶち切られた
トレパンの半ズボンはピーターパン調で、何かの
イベントの衣装なら可愛いかもしれない。その下
にはもう2回ほど穿けば間違いなく切れる
サポーターにへそだしルックの埃まみれの赤い
トレーナーで、しかも模様が入っている。

並べて見ているとガードローブ中のダンサー全員が
大爆笑した。ショージもこれを着て明日レッスン
するのかなと思うとかなり勇気が要る。これは
どう見ても「チンドン屋」だ。だけどショージには
もう選択肢はないし、いずれにしてもレッスンが
出来るだけ幸せ者だ。後ろのダンサーが「これも
あげるよ!」としわしわの白いプラスティック
バッグ(スーパーでくれるビニール袋)をくれた。
「あー良かった、これでバッグまで出来た!」
この日はここで知り合った1人のダンサーの家に
泊めてもらった。
(つづく)