半澤正司オープンバレエスタジオ

20歳の青年がヨーロッパでレストランで皿洗いをしながら、やがて自分はプロのバレエダンサーになりたい…!と夢を追うドラマ。

ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)第26話

2021-12-31 08:08:39 | webブログ

バレエ教師の半澤です。
コロナなんかに負けずに年中無休で頑張っております。
平日は朝は11時から初中級レベルのレッスン、夕方5時20分は
初級、夜7時から中級レベルのレッスンです。
土曜日は朝11時からのレッスン、夕方6時です。ポアントもあります。
日曜日は朝10時から初級のレッスン、12時から初中級のレッスンです。
ポアントもあります。

皆さま、お待ちしております!

ホームページ半澤正司オープンバレエスタジオHP http://hanzanov.com/index.html
(オフィシャル ウエブサイト)

私のメールアドレスです。
rudolf-hanzanov@zeus.eonet.ne.jp
http://fanblogs.jp/hanzawaballet3939/


連絡をお待ちしてますね!

2021年12月19日(日)寝屋川市民会館にて
半澤正司オープンバレエスタジオの発表会があります。


Dream….but no more dream!
半澤オープンバレエスタジオは大人から始めた方でも、子供でも、どなたにでも
オープンなレッスンスタジオです。また、いずれヨーロッパやアメリカ、世界の
どこかでプロフェッショナルとして、踊りたい…と、夢をお持ちの方も私は、
応援させて戴きます!
また、大人の初心者の方も、まだした事がないんだけれども…と言う方も、大歓迎して
おりますので是非いらしてください。お待ち申し上げております。

スタジオ所在地は谷町4丁目の駅の6番出口を出たら、中央大通り沿いに坂を下り
、最初の信号を右折して直ぐに左折です。50メートル歩いたら右手にあります。

バリエーションはジゼルより1幕のVaです。
踊りが大好きなジゼルが楽しみながら踊る様を感じつつ
振り付けを大事に踏みしめてみましょう。
さ、やりましょう!

連絡先rudolf-hanzanov@zeus.eonet.ne.jp

ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)
招待してくれたロンドンの先生、ショージの絶望
第26話
結局ショージはタクシーの運転手に泣く泣く料金を
払うとその足で鉄道の駅を探した。ロンドンに向かって
電車で行き直したのだ。到着次第、ショージはロンドン
に招待してくれた元ロイヤルバレエの教師テレンスに
市内から電話をして会いたいと伝えた。

電話口では「テレンス先生!アイアム、ショージ!
ジャパニーズ!ドゥユ-リメンバー?アイ、カム、
ロンドン!」すると先生は「オ~、ショージ?
イエス、リメンバーユー!ロンドンに?いつ?」
ショージは英語がほとんど喋れないので、電話で
相手には見えないにもかかわらず身振り手振りで
話ながら「え?いつですって?今です!今、ロンドン
です!」

テレンスは「エ~ッ!?ロンドンに来ただと!?
一体、ロンドンの何処にいると言うのだっ!?」
ショージは嬉しさのあまり大きな声で「コヴェント
ガーデンですっ!」と答えるとテレンスは「ま、
待っていろ!直ぐにそこに行くから地下鉄の駅前で
動かずに待っているんだぞっ!」と言って電話を
切った。

会いに来たテレンスは困惑した表情をした。まさか
ショージが本当に遥々日本からやって来るとは
思わなかったのだ。ショージはテレンスに「私は
ロイヤルバレエに本当に入れますか?」と聞くと
教師はその事には答えず、「とりあえず私の家に
来なさい…そして相談しよう…」と言った。
ショージには何の相談なのか見当がつかなかった。

やがてテレンスの家に着き、「ショージ、確かに
私は君に、君の才能だったらロイヤルバレエ学校に
入れると言った。だが、ロイヤルバレエ学校に入る
のには莫大な金がいるんだよ…持っているか?」
教師と彼の妻は真顔でじっとショージの顔を見つめ
ながら聞いた。ショージは「5万円くらいなら
大丈夫です!それ以上は持っていません…」と
答えた。テレンスが大きな溜息を吐いた。そして
テレンス夫妻は眉間に皺(しわ)を寄せて頭を横に
振ってショージの持ち合わせている金では到底
無理なのだと言った。

「ロイヤルバレエ学校に入るのには年間350万円
以上必要なのだ…」ショージはロイヤルバレエ学校
に入りたいがためにここロンドンまで来たのだ。
だが、それが駄目だと分かった今、帰りのチケットも
金も持っていない。ショージにあるのは「絶望」と
言う2文字のみであった。ショージは身体の震えが
止まらなかった…。だが、ここでテレンスが口に
した。「ま、心配するな!泣くのはもうよせ!お前を
ロイヤルバレエではないが、他のバレエ学校に入れる
ように考えるから私の力を信用しなさい!」
ショージは肩を震わせるほど泣いてボロボロと
零した涙と、顎まで垂れた鼻水を拭き、ようやく
泣き止んだ。
(つづく)


ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)第25話

2021-12-30 08:01:08 | webブログ

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ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)
眼鏡をかけた悪い男
第25話
ようやくゲートから出て来ると飛行機の中にいた
眼鏡をかけた日本人の中年男が直ぐに近寄って来た。
「随分長かったね、あれから3時間以上だよ!
ま、通過出来たんだからラッキーだよ。私は内心、
君が絶対に日本に送り帰らせるだろうと確信して
いたんだがね…ま、どうだ、どうせ私もロンドン
市内に行くから一緒にタクシーに乗せて行って
あげるよ!」

一緒にロンドンに行くことになった。ショージが
パスポート検査を終えてゲートを通過し、ロンドンの
地面を踏めるまで、その男は待っていてくれたのだ。
「僕の事を心配して待っていてくれたのか…本当に
親切な人だ!」とショージは嬉しくなった。が、
そこから2時間もタクシーに乗ってから、その
日本人の男は「僕はちょっとその辺りに用事が
あるから…じゃ!」と突然タクシーから降りて
消えて行った。

ショージはてっきりその男は戻って来るものだと
信じていた。しかし男は一向にタクシーには戻って
来る様子がない。不安になったショージはタクシーの
運転手に出来もしない英語で聞いてみた。

「さっきの男は戻って来る?」「知らん…」
「ここはロンドン市内?」答えは「ノ~!ここは
イギリスのど真ん中辺りの田舎さ!方向違いも
いいとこだ!空港から2時間掛けてロンドンとは
全く別の方向に走って来たんだ。さ、お金を払って
もらおう!4万円だ!」と明らかに怒っている
様子だ。ショージは「え~っ!?」と驚愕のあまり
その事実を飲みこめないまま大事な金を財布から
震えながら出した。

「だ、騙されてしまったのか…!?信じられない…!」
だが明らかなのは今この瞬間、金が一気にショージの
懐から消えて行く事実だった。あの眼鏡の男は
ショージからタクシー代をせしめる為に、手ぐすね
引いて待っていたのだ。飛行機の中でショージが
元ロイヤルバレエの先生からの招待状を持っている
事も男に言ってしまった。「だから、あのおやじは
必ず僕がゲートから出て来るのを確信していたんだ!
それにしても3時間も執拗に待つなんて…!ああ、
ロンドンに来るために必死で朝まで働いて貯めた
大事な金なのに…」泣くに泣けないほど悲しい
ショージだった。
(つづく)


ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)第24話

2021-12-29 07:53:43 | webブログ

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ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)
遂にロンドン到着!!
第24話
そして遂にロンドンに到着した。その日、ショージは
まずヒースロー空港でパスポート検査に引っ掛かって
しまった。ユナイテッド・キングダムまたはグレート・
ブリテンと呼ばれるイギリスではヨーロッパの人でさえも
当時は往復券が無ければ入国は難しかった。

だが、それを知らずに日本から片道切符だけで来た
ショージはパスポートを見せた瞬間に検査官から「私に
付いて来てください…はい、こちらにどうぞ…」と一人
しか入れないような小さな部屋に入れられてしまった
のだ。無表情な顔の検査官が「私が再びこのドアーを
開けるまでここにいなさい」

まだ入国許可はおりていない空港の中である。ショージは
部屋の窓を見た。窓には鉄の格子が嵌めてあった。
「どう言う事だろう…」静かに3時間待った。
ショージは部屋のドアーに手を掛けてみると鍵が
閉まっていた。そこでようやくショージは気付いた。
その部屋は一種の牢獄だったのだ。ショージは浮浪者
として扱われ、指名手配されている犯罪者であるか
どうか調べられていたのだ。

全ての荷物を取り上げられていたが、ショージの
持っていたバッグの底から元ロンドン・ロイヤル
バレエのダンサーだったバレエ教師からの招待状の
手紙が見つかり、牢獄のような部屋の鍵を開けに
来た検査官が「これはお前の物か?ここに何と
書いてあるか言ってみろ」と聞いて来た。ショージは
「バレエ!私はクラシック・バレエをやるために
ロンドンに来たのです!そこには私を招待してくれた
先生の名前があるはずです!」と即座にマイムを
入れたり、足を上げたりして必死で検査官に説明した。

ショージは全く英語が出来ない。高校の通信簿で
英語の成績は最低の1であった。ショージは薄々、
「ああ…これは駄目だ…十中八九私は日本に送り
帰されるだろう…」と直感した。だが必死で身振り
手振りをしての説明した事が通じた。

「よし、ここから出ろ!お前の持っている金を
すべて見せるんだ!」そしてショージはチケット購入
にも満たない金を見せ、その他に預金証明書を
見せると、幸いにも2日間だけロンドンに入っても
良いという許可がおりた。その預金証明書は
ショージが麻布十番で働いていたクラブ「愛」の
ママに頼んでわざわざ作って貰っていたのだ。
外国に行った事のある人から「預金証明書を作って
おけば万が一の時に助かる…」と聞いたのだがこれが
誠に功を制したのだ。
 
そのたった2日間の内にショージには探し出さな
ければならないものがあった。それはショージの
身柄を必ず責任を持ってロンドンで監視出来る人、
または学校の許可があれば滞在許可が延長になるのだ。
それにしても空港の牢獄のような部屋では事実上
3時間の拘束であった。ショージは何も悪い事は
していないのだが、未然に犯罪者などをイギリス
国内に入れないためと言うイギリスのセキュリティの
厳重さが分かる。

「それにしても酷過ぎる…」ショージの初めての
海外生活のプロローグはそんなドロドロの苦い経験
から始まった。
(つづく)


ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)第23話

2021-12-28 08:00:29 | webブログ

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ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)
モスクワ空港に到着
第23話
日本からは遥か遠いモスクワまでようやく辿り着いた。
国際線ロビーだと言うのに、明りが点いておらず、
薄暗いターミナルの中で8時間も次の乗り換えの
便を待たなくてはならない。初めて外国に来た
ショージはこんな極寒だとは知らずに軽装で
旅立ってしまったのだ。あまりの寒さで死にそうで
あった。

ふと見れば何故か「ラーメン」と書いてある文字が
まず目についた。おまけに日本にしかないと思って
いた料理のサンプルがガラスのケースの中に並んで
いる。「腹も減っているし、まあ美味しそうなラーメン
そうだから食べてみるか…身体も温まるに違いないし…
でも1200円はちょっと高過ぎるけど…」

ショージは「よしっ!ラーメンを食べよう!」と
レストランに入った。かなり太めの体格で青い目を
したウエイトレスが黙って椅子に座ったまま動かない。
入口から入ってカウンターに座ったショージを
じっと見ている。その姿は笑顔などなく、まるで
不貞腐れているように見えた。

ショージは「ラーメン、プリーズ!」と注文したら、
そのやる気の無さそうなウエイトレスが30分以上も
待たせてやっとラーメンを持って来た。その器の
中身を見てショージは驚いた。全くサンプルとは
似ても似つかない代物だったのだ。なんと40円で
売っている乾麺のインスタントラーメンを持って
来たのだ。中身はネギやチャーシューなどの具が
全く入っていないにもかかわらず「こんなものが
1200円もするのか!」しかも麺は完全に伸びて
しかも冷めていた。

ショージは腹が立って「これは何だ!」と声を強めて
ウエイトレスに向かって言った。今度はロシア人の
大きなウエイトレスがショージが咳き込むほどの
大声で「ラーメンっ!!」と答えた。ショージは
諦めた。その通りだからだ。

金は注文と同時であったからどうせ戻って来ない。
下手したらそのまま警察にしょっぴかれてモスクワの
凍りつく刑務所に拘留させられたりしたら堪らないと
直感したのだ。ソ連は驚くほど怖い所だと誰かに
聞いた事があった。黙って退散する方が自分のためだと
悟ったのだ。これほどまずいラーメンをショージが
食べたのは初めてであった。
(つづく)


ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)第22話

2021-12-26 07:53:46 | webブログ

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ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)
1984年 夏(20歳) 念願の航空チケット ゲット!!
第22話
旅費を貯めるのに必死なショージは必要な物は出来る
限り道で拾い集め、無駄なお金を使わないでコツコツと
貯めて行った。そして遂にショージは念願の飛行機の
片道切符を買った。またロンドンでの生活費に必要な
ごく僅かな金も貯めた。

日本でさえもバイト先を見つけるのが大変困難な事で
あったがイギリスに渡ってから直ぐにバイトが
見つかるはずも無いと思ったのだ。英語が出来ない
不安も大きかったのは事実ではあったが、それよりも
夢が実現する方が勝っていた。大きく勝っていたのだ。
飛行機は、給油するために一度シベリアに停まり、
再び給油のためにモスクワに寄ってからロンドンに
向かった。ショージはソ連の航空会社の「アエロ
フロート」の片道切符を買ったのだった。当時
航空会社の中で一番安い切符であった。

「アエロフロートは飛行機が落ちるから止めておいた
方が良い…」と周りの人たちが言っていたが、
ショージには「絶対にアエロフロートは落ちない!
これ以上の貯金は無理だ…これに乗って僕は自分の
夢を実現するんだ!」と決めた。

成田空港からロンドンまでの間、飛行機の中で眼鏡を
かけた日本人の中年の男がショージの隣の座席に
座った。最初にショージの方から男に話しかけてが
男は面倒がっていた。しかしショージが初めて外国に
行く事を知ってからは少しずつロンドンがどう言う所
なのかを話した。

ショージは緊張しながら眼鏡の男の話に聞き入った。
だが男はあまり良い顔はしてはいなかった。いわゆる
仏頂面でショージの話などには興味が無い様子だった。
(つづく)