半澤正司オープンバレエスタジオ

20歳の青年がヨーロッパでレストランで皿洗いをしながら、やがて自分はプロのバレエダンサーになりたい…!と夢を追うドラマ。

ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)第109話

2020-02-29 08:10:46 | webブログ

おはようございます、バレエ教師の半澤です!

今日も休まずにやっております。どうぞレッスンに
いらしてください。

通常の平日は朝は11時から初中級レベルのレッスン、夕方5時20分は
初級、夜7時から中級レベルのレッスンがあります。
皆さま、お待ちしております!

ホームページ半澤正司オープンバレエスタジオHP http://hanzanov.com/index.html
(オフィシャル ウエブサイト)

私のメールアドレスです。
rudolf-hanzanov@zeus.eonet.ne.jp
http://fanblogs.jp/hanzawaballet3939/
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ルイースと写真.jpg






創業36年、本場博多のもつ鍋・水炊き専門店【博多若杉】


連絡をお待ちしてますね!

2020年12月23日(水)寝屋川市民会館にて
半澤正司オープンバレエスタジオの発表会があります。


Dream….but no more dream!
半澤オープンバレエスタジオは大人から始めた方でも、子供でも、どなたにでも
オープンなレッスンスタジオです。また、いずれヨーロッパやアメリカ、世界の
どこかでプロフェッショナルとして、踊りたい…と、夢をお持ちの方も私は、
応援させて戴きます!
また、大人の初心者の方も、まだした事がないんだけれども…と言う方も、大歓迎して
おりますので是非いらしてください。お待ち申し上げております。

スタジオ所在地は谷町4丁目の駅の6番出口を出たら、中央大通り沿いに坂を下り
、最初の信号を右折して直ぐに左折です。50メートル歩いたら右手にあります。

連絡先rudolf-hanzanov@zeus.eonet.ne.jp

ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)
第109話
結局、アンドリスが体操選手のような衣装を着けた
バレエはボリショイバレエの芸術監督のユーリー・
グリゴローヴィチ氏が振り付けた「ゴールデンエイジ」
と言うらしい。日本名は「黄金時代」とでも言うので
あろうか。やっている事は凄いのだが、今一つ、ショージは
このバレエが好きにはなれなかった。

リハーサルが終わりショージもこの空間…つまり、劇場から
出て行かなければならない。「ああ…アンドリスはもう
こっちの客席には来ないのか…待てよ?舞台の後ろにいる
かもしれないな!」急いで舞台裏に回ってみたが、もう誰も
いなかった。仕方もなく劇場から出るしかない。が、大きな
問題が2つある。この劇場に入る時に使った「帝王の門」
から出て行けば何の問題はないのだが、それはエンジェル
とも言うべき美女のバレリーナ、リュドミラ・セメニャーカに
腕を組んでもらって通って来た迷路のような複雑な廊下の
道順をショージはもう全然覚えていないのだ。

そして更なる問題は、ダンサーたちの皆と同じように一緒に
劇場関係者の入口から出ようと思えば、劇場関係者に向ける
顔は良い翁なのに、ショージだけに向ける顔は恐ろしい鬼の
ような顔をした4人のバラエティーに富んだ爺さんたちと、
晴れて再び御面会になってしまうという事だ。

「だが待てよ…僕を劇場内に入れてくれたのはリュドミラ
なのだから爺さんたちに怒られる筋合いもないか…」
それでも関係者入口で再び問題にならないように大きな
ダンサーたちと一緒にスーッと門を出た。外に出てから
後ろを振り返り「爺ぃたちよ、まさか僕が劇場内に入って
いたとは君たちもよもや気が付くまい。何て気持ちの良い
ことだろう!さ、僕にはまだやり残している事があるから
行きますかっ、いざ、プロスペクト・ミーラの公園に!」

そこにはショージの欲しい物がある。思いっきり毛が長い
ゴールデンフォックスのシャプカ…そう、帽子があるのだ。
しかし、もしかしたら既に誰かに買われてしまっているかも
知れない。「いずれにしても、あそこで商売をしなきゃ
いけないし、あの帽子は飛びきり温かいんだろうな。
持っている物が全部売れさえすれば、狸でもネズミの毛
でも何でもいいから、紳士用の帽子を早く手に入れたい!
今、僕がかぶっているのは、御高齢用の女性の帽子だからね…
ハハハ!」

商売再開

公園に着くと、早速、あのシャプカのおばちゃんを探した。
おばちゃんは「帽子が売れたらこんなの所にはもう居るはずが
ないじゃないのさ!売れなきゃ、ここ居るってんだよ!」
目を恐ろしく吊り上げて、怖~い顔をしてショージを睨んで
いた。「もうシャプカは売れちゃってるかな…。おばちゃん、
おばちゃんは…お~っ!いるじゃん!はははっ!おばちゃん
、売れなかったんじゃんよ!よ~し、こうなったら僕も
どこかで商売道具を並べるぞ!ん?よしっ、あそこのティー
シャツを売っている人の隣に隙間が空いているから、あそこに
しよう!」

バッグからショージの選んだ、ヒット商品100選とは…
そんなには無いけれど、グッズを取り出した。そして前回と
同様に黒いバッグの外側と中側を逆さまにして底に当たる
平らな部分を上にしてグッズを並べた。歯ブラシ、歯磨き粉、
ストッキング4つ、ポケットティッシュ20個入りを4個
ずつに分けて5セット、カシオの腕時計3個、インスタント
ラーメン、カレー粉、まだまだ続いた。

並べている傍から、隣にいるティーシャツを売っているおっさんが
「おーっ!」と言いながら、自分の商売を放ったらかして
ショージの商品の前に来て、いきなり客に早変わりした。
(つづく)


ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)第108話

2020-02-28 08:32:35 | webブログ

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ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)
第108話
「よしっ、ここが客席に繋がるドアーに違いない…」重い
ドアーを開くと「おーっ!」ボリショイ劇場の舞台上では
衣裳を着けたダンサーたちの熱いリハーサルの真っ最中だ。
そして客席のドアーを渾身の力を込めて「エイッ!」と開け、
入って行くとショージはまず舞台を見てから客席に目線を
移した。

するとそこには数十人のダンサーやらスタッフがその
リハーサルを見ていた。丁度その時、舞台上にアナウンス
が入りどうやら小休止のようだ。ショージが顔をキョロ
キョロさせていると、客席の椅子から立ち上がった巨人が
「おー!なんだ、ここに来ていたのか?」と向こうの方から
声が掛かった。ショージはその巨人を見るなり、「おーっ!」

勿論誰なのかは知っていた。それは紛れも無くアンドリス・
リエパだった。このバレエ団のトップ契約のプリンシパル
(最高ランクのダンサー)に昇格したてのホヤホヤで、
西ヨーロッパでもダンスマガジンなどを賑わしている実に
素晴らしいダンサーなのだ。

彼はニーナ・アナニヤシヴィリと共にモスクワ国際バレエ
コンクールで堂々の一位に輝いたばかりで、彼も彼女も
ショージが所属しているスウェーデンのゴッセンブルグ・
バレエ団に「白鳥の湖」全幕にゲストで数回ほど来ていた
のだ。ショージとアンドリスはテクニックに更なる磨きを
加える為にリハーサルの後には必ず稽古場に2人で残り、
思考と努力を重ね、技術の向上のための開発を共にした、
いわばブラザーなのである。と多分ショージは一人合点している。

客席の椅子にはまだ沢山のアンドリスの同僚のダンサーたちが
座っているのだが、皆、一斉に同じ方向に歩き始めた。
アンドリスはショージに唐突に「あ、あのさ、これ見ろよ!」
と椅子の脇に置いてあった物を掴むと、ショージの顔の
前に高々と見せつけ、「いいだろ?買ったんだよ…。どうだ?
すげーだろ?」と自慢たっぷりのアイテムはビデオカメラ
だった。つまりハンディカメラの初期モデルであった。
偉く大きなビデオカメラだ。

その当時はまだまだソビエト連邦には普通の人の手には
絶対に持つ事の出来ない超高額電化製品で、モスクワでも
滅多に見る事の出来ない代物なのだ。彼の巨大な身体の
前では小型化のビデオカメラに見える。こんな優れ物を
持っているのはこの世界の最高峰のバレエ団の中でも
おそらくは彼のみであろう。しかし、アンドリスは
いつ見ても実に格好の良い男だ。

「あのさアンドリス、お願いしたい事が…」と言い掛けた時、
「あっ、俺の出番だ!急がないと…」アンドリスは舞台
目がけて走って行ってしまった。「ああ…レッスンさせて
もらえるようにお願いしたかったのに…ま、ここに座って
いればまた会えるか…」とショージ以外には誰もいない
巨大なボリショイ劇場の客席に一人で座った。

それにしてもこうしてボリショイ劇場の中にまんまと侵入し、
途中から見始めたこのバレエのストーリーも、このバレエ
自体の名称も全く分からない。それと、はっきり言って
このバレエは全然面白くない…と、これが、一ダンサー
としてのショージの感想だった。

ボリショイならやはり古典が1番見たかった。そして
世界中にそのボリショイバレエ芸術を広めた大ヒット作の
バレエ「スパルタクス」を生で見れたら最高なのだが。
(つづく)


ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)第107話

2020-02-27 08:19:44 | webブログ

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ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)
第107話
この女性の顔をまともに正面から見れば、何処かで
見覚えのある華やかな顔立ちだった。「あっ!
こ、この人!」ショージは意を決して聞いてみた。
「あなたはリュドミラ・セメ…」すると目をパッチリと
開いてショージを見つめながら、その美女はゆっくりと
「カニヤーシュナ!ミニャ ザブートゥセメニャーカ!
ニポンメニャシュ ミニャ―?リュドミラ・セメニャーカ!」
(勿論!私の名前はセメニャーカよ!あなた、忘れて
しまったの?リュドミラ・セメニャーカよ!)

その優しい性格が表れていそうな高いトーンながらも、
鼻に掛かった甘い声が終わらない内にショージは声が
出なかった。心の中で、「ンギャ~っ!!リュ、リュ、
リュドミラ・セメニャ~カ~っ!ドッヒャ~っ!」
ショージは心臓が破裂しそうになった。ショージはこの
セメニャーカとバリシニコフの2人のキーロフバレエ団
時代のドンキのパドドゥなどをビデオで見て大ファン
だったのだ。「なんて可愛らしい人で、チャーミングな
女性なんだろう。

その憧れのセメニャーカと僕はつい今の今まで腕を
組んで歩いていたんだ!」しかし人間とはあまりに
夢の様な憧れの人が傍にいたら、と言うよりも鼻と鼻が
ぶつかりそうな近さだと案外に気が付かないものなの
かもしれない。「それともそんなのは僕だけか?」
グリーンの瞳の美しく小柄で痩せた、雰囲気の温かい
バレリーナのリュドミラは行ってしまった。

貴賓室の広間に一人取り残されたショージは、テーブル
クロスも眩しいとても大きな丸いテーブルに座って暫く
ボンヤリとセメニャーカの事を考えていたが、目の前には
巨大なイクラの山だ。巨大な銀杯の皿に鮭数十匹分の
イクラを前にして、ショージの巨大な鼻が敏感に
反応した。そして脳がショージにこう言った。
「遠慮しなくても良い…好きなだけ食べても良いのだ!
お前はイクラがこの上も無く好きではないか。涎など
垂らしていないで、頂ける時にはしっかりと頂きなさい!」

不思議なものでイクラを見たらリュドミラの事が一瞬
どこかに吹き飛んだ。ショージは小皿を持って傍に
置いてある薄いパンを取り、その上にバターを塗った。
そして大きなスプーンでガバッとイクラを乗せると口に
パクッ。そしてパクッ、パクッ!ちなみにロシア語では
食べることを「パクーシャチ」と言う。

腹は満腹になって幸せで絶頂になった。「あ~、タッパ
持ってくりゃ良かったな!」しかし、そんな卑しい考えを
していたらきっといつか罰が当たるのも知っていた。

立ち上がる巨人

口の周りをバターとイクラでベタベタにしながら、
「おっ!こんな所でグルメに浸っている場合じゃ
なかった。僕は一体何をしているんだ!」と目的を
うっかり忘れてしまっていた。慌ててその貴賓室から
出て、ボリショイ劇場のスタッフが通れる内部を
うろついた。すると「やった!」いつの間にか舞台の
裏側に来ていた。そこから正面方向に廻って客席へと
向かった。

音がジャンジャカ鳴っているところを見ればどうやら
舞台上ではリハーサルが行われているのであろう。
リュドミラも「私、今からリハーサルに行かなきゃ
いけないから…」と言っていた。「じゃあ、きっと
彼女も舞台上にいるのかな…」
(つづく)


ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)第106話

2020-02-26 08:19:49 | webブログ

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ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)
第106話
 女性バレリーナはショージの顔の前に顔を近付け
ながら、「でも今日はどうしてここにいるの?」
ショージは茫然としながら、「グ、グリゴローヴィチ氏に
会いに来たんですが…」ショージの返答も良く考えたら、
おかしなものであった。全く見ず知らずのそこら辺の馬の
骨が約束も取り付けていないのに、バレエ界の神様と崇め
られている世界のグリゴローヴィチ氏に会いに来た…
と言っているのだ。

しかし、ショージの目の前の美女は「あら、そうなの?
でもマエストロは今日は劇場にはいないのよ。残念ね…でも、
私が中を案内するわ、私と一緒に来て!」そう言いながら
ショージの右手の肘の中に彼女の腕がスルッと入り、まるで
カップルの様にショージをその「帝王の門」…ならず
「芸術監督の門」から劇場内へと入れた。グリーンの瞳…
ショージより明らかに年配だがロシア人にしては小柄で
絶世の美女だ!「ああ、とうとう僕はボリショイ劇場の
内部に入るのか…」

赤い宝石

ショージはと言えば、左手で大きく黒いバッグを持ち
ながら、「これは夢か…?」と、頬っぺたをつねりたく
なった。このような摩訶不思議な事はショージに取って
生涯で1度しか起こらない幸運を超えた奇跡としか
言いようがなかった。「エンジェルよ、ありがとう!」
暗い廊下を歩きながら、このボリショイ劇場の地下内部に
バレリーナがショージの右腕に彼女の腕を組んで誘導して
くれている。

ボリショイ劇場の地下には様々な部門があり、鍛冶屋
みたいに鉄を打っているセクションやシューズの生地や
底の皮を大量に保管してあり、そこでもトゥシューズや
バレエシューズを作っている人々、大工のように足場を
組んで大道具のセットなどを作っている巨大なスペースの
場所もあった。驚いた事に劇場のスタッフが買い物出来る
スーパーマーケットのような店までもあるのだ。「一体、
ここは要塞か!?」

もし国の有事(戦争)があったとしても、この中だけで
暮らしていけるんじゃないかと思わせるような驚くほどの
設備がギッチリと抱え込まれているのである。ショージの
腕に自分の腕を組ませて歩き続ける美しい年配のバレリーナ
は細く長い廊下をぐねぐねと曲がっては折れ、そしてまた
歩き続ける。ショージはこの複雑なルートをもう覚えて
いない。ただただ、この美女に誘導されるがままだった。

そしてパーティー広間のような場所に来た。そこには
数十台の丸いテーブルに白いテーブルクロスが敷かれ、
その上にはなんと、相撲の優勝祝いの時に総理大臣から
渡される銀の大杯の様な皿がドーンと置いてあり、
山の様に赤い物が積んであった。

女性に手を引かれて傍まで行くとそれは無数の赤い宝石…
つまりイクラが山のように盛ってあるのだ。「げ~っ!?
これ全部イクラじゃんっ!」この大広間は劇場のスタッフ
だけでは無く、関係するVIPの客人も入る事の出来る広間だ。
するとグリーンの瞳の美女は「私はこれからリハーサルに
行かなきゃ…じゃ、ね…」名残惜しそうな目線でショージに
告げた。その時になってショージは「ハッ!」と気が付いた。
「こ、この美女こそが…」
(つづく)