半澤正司オープンバレエスタジオ

20歳の青年がヨーロッパでレストランで皿洗いをしながら、やがて自分はプロのバレエダンサーになりたい…!と夢を追うドラマ。

ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)第16話

2018-01-25 09:36:07 | webブログ
谷町開設 祝 10周年 !!!! やった~っ!

http://hanzanov.com/ ホームページ
http://hanzanov.com/official/オフィシャル ウエブサイト)
皆様、2018年12月26日(水)に私の発表会があります。
もし、良かったら出演してみませんか?バリエーションでも良いですし、
グランパドドゥでも良いですよ!もちろんコンテンポラリーでも
良いですし、オペラでも舞台で歌います?
どうぞ、どんどん出演してください。
私のメールアドレスです。
rudolf-hanzanov@zeus.eonet.ne.jp

連絡をお待ちしてますね!!

朝は11時から初中級レベルのレッスン、夕方5時20分から初級レベルの
レッスン、夜7時から中級レベルのレッスンがあります。
皆さま、お待ちしております!

Dream….but no more dream!
半澤オープンバレエスタジオは大人から始めた方でも、子供でも、どなたにでも
オープンなレッスンスタジオです。また、いずれヨーロッパやアメリカ、世界の
どこかでプロフェッショナルとして、踊りたい…と、夢をお持ちの方も私は、
応援させて戴きます!
また、大人の初心者の方も、まだした事がないんだけれども…と言う方も、大歓迎して
おりますので是非いらしてください。お待ち申し上げております。

スタジオ所在地は谷町4丁目の駅の6番出口を出たら、中央大通り沿いに坂を下り
、最初の信号を右折して直ぐに左折です。50メートル歩いたら右手にあります。

日曜日のバリエーションは「ライモンダ」より2幕から夢の場、のバリエーションです。
ローザンヌ・バレエコンクールでも課題曲になったスローな踊りですが
私も大好きなバリエーションです。皆さんと一緒に学びましょうね。
ではクリスタル・ルームでお待ちしておりますね
連絡先rudolf-hanzanov@zeus.eonet.ne.jp

ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)
第16話
依然として狭山市に住んでいるショージはそこから
電車に乗れば一時間弱で行ける新宿で、コマ劇場の
地下にあるフラメンコを見せるレストランでのアル
バイトの仕事を見つけた。厨房で皿洗いをやれば
交通費も出してくれた。時間があればフラメンコも
勉強出来るかもしれないと思ったのだ。その厨房に
働く一人の先輩の青年がジャズダンスをやっていると
言った。また、同時にタップダンスも習っているのだ
と聞かせてくれた。

先輩が誘った。「君もどう?タップダンスをやって
みないか?」ショージは早速その先輩に付いて行き、
値段の高いシューズを買ってタップダンスを習いに
行ってみた。実際タップを習い始めた初日、その
リズムと速さに圧倒されてしまい、足が付いて行けず
棒のようになってしまった。2回目に行った時は
先生から「どうやら君にはリズム感が無いようだね。
多分、君はタップダンスよりもバレエをやった方が
いいのかもしれないぞ…」と言われた。

その日の先生の言葉でショージはタップを諦めた。
リズム感を持っていない自分が情けなくも感じた。
その場で他の人にそのタップシューズをあげてしまった。
貰った方の男は飛び上るほど喜んでいた。そのシューズを
買うのにどれほどバイトしたのか。自分に全くその
才能がないと分かると惜しげもなくただで「どうぞ…」
とあげてしまったのだ。バイト先の先輩がショージに
厨房で言った。「実は六本木の「一番街」でジャズダンスを
習おうかと考えているんだ…」

ショージは以前に「一番街」ではバレエをやっている
とは聞いてはいたがジャズもやっている事をその
先輩の話から知った。

バレエとの運命の出会い!
ある日ショージはテレビでモーリス・ベジャール振付の
「ボレロ」を見た。テレビに釘付けとなった。そして
「こんな踊りの世界が存在するなんて…す、凄い!」
前衛的なモダンなダンスに完全に魅了された。そして
ルドルフ・ヌレエフと森下洋子による「ジゼル」全2幕を
見に劇場に行った。この瞬間にショージは全身の肌から
鳥肌が浮かぶほど感動した。「こ、これだ…これが僕の
やってみたい事なんだ!」

ショージはバイト先の先輩に先駆けて六本木にある
「一番街」に行った。手ぶらだった。バレエをするに
あたって一体、何が必要なのかも知らなかったのだ。
まずは実際に目の当たりにしてからと思った。朝早く
行き、門を潜るとそこに一人の婦人が一生懸命に
掃除機で床のゴミを吸っていた。ショージは無造作に
「ねえ、おばさん、ここは何時からやっているん
ですか?」と尋ねた。

すると婦人は失礼な言葉には気を掛けずに「10時
からよ!まだ時間が早いわ!」と言った。「随分と
ガラガラ声のおばさんだな…」と思った。10時に
なった。さっき掃除をしていたおばさんが更衣室
辺りから出て来た。そのおばさんは真っ直ぐに稽古場に
入って行った。すると掃除をするどころか、皆が
一斉におはようございます!と頭を下げた。ショージは
「あっ!?」と驚き、口がふさがらなかった。その
おばさんが“一番街”の主宰者である小川亜矢子先生
である事に気が付いた時、ショージは目眩がした。
ショージは大先生に向かって「おばさん!」と呼んで
しまったからだった。「知らぬが仏…」とはこういう
事だった。
(つづく)

ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)第15話

2018-01-24 09:32:26 | webブログ
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ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)
第15話
何とか無事に高校を卒業した後、ショージはある日
ミュージカルを見てとても感動した。劇団四季だ。
そして強く想った。「この劇団に僕も入る事は
出来ないだろうか…」幸い友人が劇団四季で働いて
いる事を思い出し、ショージはその友人にどうしたら
良いか相談をした。彼女はまず、バレエを習う事を
勧めた。「六本木にある“一番街”という名前の
スタジオに小川亜矢子先生という素晴らしい先生が
いるから、そこへ行ってバレエをならってみてはどう
かしら?ミュージカルをやりたいならまずはバレエよ!
そして四季に入りたいのなら小川亜矢子先生!」と。

これまでショージはバレエなど見た事もなかったので
その存在自体も知らなかった。そしてクラッシック
バレエが、ミュージカルと一体どう関連しているのか
さえ、見当が付かなかった。劇団四季を見た日から
「音楽、歌、そして踊って芝居をする事はとても
素晴らしい…僕もそんな世界を知ってみたい…」自分の
知らない世界を知った。

ある日、ショージはチラシを見て、何処かの劇団が
ミュージカルの出演者を募集しているのを知った。
それはテレビでもよく見かける人気歌謡グループの
ゴダイゴが歌う「孫悟空」、「モンキーマジック」
というミュージカルであった。しかし、そこに入る
ためにはオーディションがあった。即興で自分を
アピールする試験があるのだ。その試験のために
ショージは警視庁に働く従兄から本物の日本刀と
同じほどの重量のある模擬剣を借りた。自分で勝手に
武士らしい振りを付けて、武田信玄の「風林火山」の
歌詞を付け派手な袴(はかま)を着て模擬剣を抜刀して
歌ったのだ。

試験に立ち会った審査員たち全ての人が目を丸く
しながらショージの踊りに見入った。なんとショージは
オーディションに合格した。このミュージカルに出演
している人々はジャズダンサーが多かった。だが
ショージはジャズダンスなど全く習った事がない。
また芝居の勉強もした事がなかった。きちんと台詞も
言えず、歌も歌えず、この劇団の足を引っ張っていた
張本人だったと自分でさえ思った。

この劇団が行うミュージカル「モンキーマジック」には
有名人がたくさん出演した。「ジェットストリーム」で
名を馳せた城達也もいた。ラッキー池田と言う変わり
種のタレントもいた。いよいよ劇団は公演のための
リハーサルに入った。ショージの無能さに団員たちは
手こずった。ダンス指導のチーフは頭に手をやり「この
男は果たして本番に使えるだろうか…」

そして本番を迎え、十数回に及ぶ舞台の日々の中で
チーフはショージに向かって言った。「君はミュージ
カルよりもバレエをやった方が良いのじゃないかと
思う…」ショージはこの劇団と一緒にリハーサル、公演と
やった中で、楽しいと言う実感が湧かなかった。むしろ
こう言うのは自分には向かないと言う事を知った。
自分の無能さを痛感したのだった。
(つづく)


ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)第14話

2018-01-23 09:31:06 | webブログ
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ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)
1980年 (16歳)最愛の人
第14話
ショージは小学校1年の時から高校生になるまで
新聞配達をしていた。中学生になってからは、朝の
新聞配達の他に、夕方になると近所にある「スカイ
ラーク」と言うレストランで皿洗いのアルバイトも
していた。自分の手で金を稼ぐ事は母親を助けること
にもなるからだった。

ショージは母親の勧めでピアノと日本舞踊を幼少の
折からずっと続けて来た。舞踊を習うために2時間半
も掛けて東京の新宿まで毎日のように通ってもいた。
だが高校生になった時から、段々と舞踊を習う事が
重荷になって行った。そして悩んだ。「僕にとって
これから先も続けて行く事に意味があるのか、この
道が本当に僕に合っているのか、それとも僕のまだ
知らない全く違う世界があるのか…」と。しかし
この悩みに終止符を打つ日が来た。

ショージの意思で辞めなくても辞めざるを得ない
出来事が生じてしまったのだ。高校に入って暫くした
時に最愛の母親が突然、水臓がんと言う恐ろしい
病気で亡くなってしまったのだ。しかしショージには
この事実を受け止める事がどうしても出来なかった。

人間はあまりにも悲し過ぎる事が起きると涙さえ
零れなくなる。ショージにはこれから先、一体誰を
頼りに生きて行ったらいいのか解からなかった。
母親は今までショージにピアノと踊りを習わせるために
寝る時間も惜しんで必死に働いた。働きまくって
挙句の果てに水臓の中に赤ん坊の頭と同じ程の
大きさの腫瘍が出来てしまったのだ。それでも母親は
子供たちの事を心配した。病院の一室で母親は自分の
死が近いと悟ったのか息子をベッドの傍まで呼び寄せた。

もう喋る事さえ出来ないほど弱りきっていた母親は
ショージに紙と鉛筆を持って来させた。震える手で
紙に書かれた文字はぐにゃぐにゃに曲がってしまったが
母親は必死に書いた。「あなたは踊りを生業として
生きて行きなさい…ただ妹の事が心配でならない…
まだ小さな女の子なのに…私が死んでしまったら…」
と書いてあった。ショージは母の両手を握りしめ、
どうして良いのか分からないほどの悲しみに耐えていた。

ほどなく母親が亡くなった。ショージは母の存在の
大きさを改めて感じた。だが、折角母がショージの
ためにいつも言っていた「芸は身を助けるのだからね…」
と諭してくれたピアノや踊りまでも辞めてしまったのだ。 
「これからは自分で生活の道を切り開いて行かねば
ならない、生きて行かなくてはいけないのだ…」
と決心した。
(つづく)

ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)第13話

2018-01-21 08:41:46 | webブログ
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第13話
厨房から叔父さんや板前さんたち、お運びの女性たち
までも次々にたくさん出て来た。ショージは今まで
この人たちとは会った事は無かった。清子の甥っ子が
遥々狭山市から訪ねて来た事を知った店で働く全ての
人が厨房から出て来てショージを見つめた。「こんなに
沢山の人が働いているのか…」ショージは驚いた。
しかし、その人々の中には兄らしき人の姿はなかった。
清子が再び、大きな声を出して厨房にいるはずの悟を
呼ぼうとしたその時、途中から涙で声が出なくなって
しまった。ショージは皆が呆然と見ている中、一人厨房に
入って行った。そこが想像以上に広い厨房なのでビックリ
したが、奥に兄の悟が立っているのがはっきりと分かった。

自分より遥かに大きく、横顔には昔の面影が残っていた。
しかし兄はこちらには背を向けて下を向いているので
あった。ショージは兄の傍まで寄ろうとした。すると
兄はようやくショージを見た。兄の眼が赤くなって
涙を零しながら瞬きもせずにショージをじっと見つめて
いる。ショージがゆっくり…ゆっくりと近寄って行く。

ショージも口は開く事が出来なかったが心で兄に喋り
掛けた。「一体、どれほどの時が過ぎたんだろうね…」
ショージが兄のいる傍まで近づいて行けば行くほど兄の
真っ赤な両目からボトボトと涙が零れ出た。

「ねえ、お兄ちゃんは我慢して、声も出さずに、絶対に
泣くまいとしているんでしょう?お兄ちゃん、僕も
お兄ちゃんと一緒の気持ちだよ…言葉なんていらない
よね…会いたかったよ、ずーっと会いたかったよ…

僕は、何年か前に一度、病院でお兄ちゃんの顔を見る事が
出来た…だからこれで2回目だよね…でもお兄ちゃんは
昏睡状態だったから、母さんの顔も妹の顔も僕の顔も
分らなかったんだね…。

お兄ちゃんにしてみれば、あの最後の別れの日、玄関で
俯いて(うつむいて)声を押し殺して泣きながら、
固まって動かなくなったあの日からずーっと、母さんや
僕、そして妹とも会えなかったんだよね…。

長かった、本当に長かったね…みんな3人とも
元気だよ…お兄ちゃん、こんなに立派に大きくなって 
どこから見ても立派な板前さんじゃないか…生きていて
くれたからこそまた会える事が出来たんだよ、お兄ちゃん、
本当に会えて嬉しいよ…。」

そう心の中で話しかけながら、兄の手を取り、2人で
背中を震わせ泣いた。「ねえお兄ちゃん…みんな厨房の
入口で、叔母さんも板前さんたちも全員が僕たち2人の
再会を喜んで泣いてくれている…ああ、お兄ちゃん、
生きていてくれて本当に嬉しい…!」
(つづく)



ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)第12話

2018-01-20 10:24:22 | webブログ
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ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)
兄を探し出し再会!
第12話
小学5年生になったショージはある日、どうしても兄や
父に会いたくなった。昔、家族がまだ一緒住んでいた頃の、
米軍の航空基地となっている入間川の稲荷山のふもとに
ある長屋まで自転車で行ったのだ。だが、そこには兄の
悟も父親ももう住んではいなかった。「兄と父は一体、
何処に引っ越してしまったのだろうか…」その時、
ショージは思い出した。

父親の姉、つまり叔母にあたる人が入間川に住んでおり、
割烹料理屋の「いろは寿司」をやっていることを!
そこで自転車をこいで記憶を頼りに店まで行ってみた。
店はそっくり消えていた。その店は数年前に引っ越しの
ために無くなったのだと店の近所の人から聞いた。

「すみません、その店の経営者は一体何処に引っ越して
しまったのでしょうか?実は私の叔母なのです!」と
近所の人に尋ねた。「確か、東京の端っこの方だったと
聞いたが…あ、そうだ思い出した!青梅って聞いたな。
青梅市で新たに店を開いたって聞いたよ。」ショージは
その街の名前を頭に刻み込んだ。「青梅って一体、何処
なんだろう…」

それから2年後、ショージは中学生に進学した。兄の
行方を遂に探し当てたのだった。それは、電車で行っても
2時間も掛かる遠い場所であったが、自転車で丸1日を掛けて
会いに行った。どうしても会いたかったのだ。そして
たくさんの人に道や店の事を聞きながら、とうとう探し
当てた。「や、やった!遂に店を発見した…!」兄はその
叔母にあたる人の所に住んでいたのだ。

叔母は東青梅市で再び割烹料亭「いろは寿司」を営んで
いた。ショージがガラガラ…と音を立てて引き戸を開けた。
叔母の清子はこんなまだ早い時間に客が入って来たのか?
と入口を見た時、飛びあがって驚いた。そしてそれが客
ではなく自分の甥っ子であると言う事を直ぐに分かったのだ。
清子は喉に唾を突っかからせながら大きな声で言った。
「何よ!あんた、しょーちゃんじゃない!本当に驚かされ
たわね!あんたのお兄ちゃんは今、そっちの厨房にいる
のよ!」と言いながら厨房に向かって叫んだ。
「さとちゃんっ!ちょっと、さとちゃんたら~っ!誰が
来たと思う?ほら~っ!こっちに早く出ていらっしゃい
よ~っ!!しょうちゃんが…」

叔母が咳き込むようにしながら「しょうちゃん、よくこの
場所がわかったものねー、それでどうやってここに来たん
だい?電車の乗り換えも大変だったでしょう?」ショージは
叔母に向かって頭を横に振り、電車ではなく自転車で来た
事を告げた。「な、なんだって!?自転車だって!?
あんた、狭山から自転車なんて信じられないわよ!車でさえ
遠いのにさ!どんなに時間が掛かった事か…」
(つづく)