半澤正司オープンバレエスタジオ

20歳の青年がヨーロッパでレストランで皿洗いをしながら、やがて自分はプロのバレエダンサーになりたい…!と夢を追うドラマ。

ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)第23話

2021-02-24 07:47:57 | webブログ

バレエ教師の半澤です!
平日は朝は11時から初中級レベルのレッスン、夕方5時20分は
初級、夜7時から中級レベルのレッスンです。
土曜日は朝11時からのレッスン、夕方6時です。ポアントもあります。
日曜日は朝10時から初級のレッスン、12時から初中級のレッスンです。
ポアントもあります。皆さま、お待ちしております!

ホームページ半澤正司オープンバレエスタジオHP http://hanzanov.com/index.html
(オフィシャル ウエブサイト)

私のメールアドレスです。
rudolf-hanzanov@zeus.eonet.ne.jp
http://fanblogs.jp/hanzawaballet3939/
1表紙.jpg
ルイースと写真.jpg






創業36年、本場博多のもつ鍋・水炊き専門店【博多若杉】


連絡をお待ちしてますね!

2020年12月23日(水)寝屋川市民会館にて
半澤正司オープンバレエスタジオの発表会があります。


Dream….but no more dream!
半澤オープンバレエスタジオは大人から始めた方でも、子供でも、どなたにでも
オープンなレッスンスタジオです。また、いずれヨーロッパやアメリカ、世界の
どこかでプロフェッショナルとして、踊りたい…と、夢をお持ちの方も私は、
応援させて戴きます!
また、大人の初心者の方も、まだした事がないんだけれども…と言う方も、大歓迎して
おりますので是非いらしてください。お待ち申し上げております。

スタジオ所在地は谷町4丁目の駅の6番出口を出たら、中央大通り沿いに坂を下り
、最初の信号を右折して直ぐに左折です。50メートル歩いたら右手にあります。

連絡先rudolf-hanzanov@zeus.eonet.ne.jp

ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)
モスクワ空港に到着
第23話
日本からは遥か遠いモスクワまでようやく辿り着いた。
国際線ロビーだと言うのに、明りが点いておらず、
薄暗いターミナルの中で8時間も次の乗り換えの
便を待たなくてはならない。初めて外国に来た
ショージはこんな極寒だとは知らずに軽装で
旅立ってしまったのだ。あまりの寒さで死にそうで
あった。

ふと見れば何故か「ラーメン」と書いてある文字が
まず目についた。おまけに日本にしかないと思って
いた料理のサンプルがガラスのケースの中に並んで
いる。「腹も減っているし、まあ美味しそうなラーメン
そうだから食べてみるか…身体も温まるに違いないし…
でも1200円はちょっと高過ぎるけど…」

ショージは「よしっ!ラーメンを食べよう!」と
レストランに入った。かなり太めの体格で青い目を
したウエイトレスが黙って椅子に座ったまま動かない。
入口から入ってカウンターに座ったショージを
じっと見ている。その姿は笑顔などなく、まるで
不貞腐れているように見えた。

ショージは「ラーメン、プリーズ!」と注文したら、
そのやる気の無さそうなウエイトレスが30分以上も
待たせてやっとラーメンを持って来た。その器の
中身を見てショージは驚いた。全くサンプルとは
似ても似つかない代物だったのだ。なんと40円で
売っている乾麺のインスタントラーメンを持って
来たのだ。中身はネギやチャーシューなどの具が
全く入っていないにもかかわらず「こんなものが
1200円もするのか!」しかも麺は完全に伸びて
しかも冷めていた。

ショージは腹が立って「これは何だ!」と声を強めて
ウエイトレスに向かって言った。今度はロシア人の
大きなウエイトレスがショージが咳き込むほどの
大声で「ラーメンっ!!」と答えた。ショージは
諦めた。その通りだからだ。

金は注文と同時であったからどうせ戻って来ない。
下手したらそのまま警察にしょっぴかれてモスクワの
凍りつく刑務所に拘留させられたりしたら堪らないと
直感したのだ。ソ連は驚くほど怖い所だと誰かに
聞いた事があった。黙って退散する方が自分のためだと
悟ったのだ。これほどまずいラーメンをショージが
食べたのは初めてであった。
(つづく)


ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)第22話

2021-02-23 07:48:52 | webブログ

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ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)
1984年 夏(20歳) 念願の航空チケット ゲット!!
第22話
旅費を貯めるのに必死なショージは必要な物は出来る
限り道で拾い集め、無駄なお金を使わないでコツコツと
貯めて行った。そして遂にショージは念願の飛行機の
片道切符を買った。またロンドンでの生活費に必要な
ごく僅かな金も貯めた。

日本でさえもバイト先を見つけるのが大変困難な事で
あったがイギリスに渡ってから直ぐにバイトが
見つかるはずも無いと思ったのだ。英語が出来ない
不安も大きかったのは事実ではあったが、それよりも
夢が実現する方が勝っていた。大きく勝っていたのだ。
飛行機は、給油するために一度シベリアに停まり、
再び給油のためにモスクワに寄ってからロンドンに
向かった。ショージはソ連の航空会社の「アエロ
フロート」の片道切符を買ったのだった。当時
航空会社の中で一番安い切符であった。

「アエロフロートは飛行機が落ちるから止めておいた
方が良い…」と周りの人たちが言っていたが、
ショージには「絶対にアエロフロートは落ちない!
これ以上の貯金は無理だ…これに乗って僕は自分の
夢を実現するんだ!」と決めた。

成田空港からロンドンまでの間、飛行機の中で眼鏡を
かけた日本人の中年の男がショージの隣の座席に
座った。最初にショージの方から男に話しかけてが
男は面倒がっていた。しかしショージが初めて外国に
行く事を知ってからは少しずつロンドンがどう言う所
なのかを話した。

ショージは緊張しながら眼鏡の男の話に聞き入った。
だが男はあまり良い顔はしてはいなかった。いわゆる
仏頂面でショージの話などには興味が無い様子だった。
(つづく)


ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)第21話

2021-02-21 07:54:32 | webブログ

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ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)
第21話
トボトボと暗い坂道を下がり歩いて来たショージは
坂の下を通る道の反対側を見た。数件のスナックが
見えた。道を渡り、スナックの並びの前に立った。
「多分駄目かもしれないな…ま、駄目元で聞いて
みようか…」そしてクラブ「愛」と言う字に惹かれ
重そうなドアーを開いた。中は満員のようであったが、
「こんなに忙しい状況で僕の話など聞いてはくれない
だろう…」ショージは開いたドアーの手を放そうとし、
店から去ろうとしたその時だ。

直ぐに綺麗な和服姿の主人と思わしき女性がわざわざ
ドアーの外まで出て来てくれたのだ。ショージの格好は
よれよれの服であった。ましてスナックなど未成年の
ショージには知らない世界であった。酒など飲まない
ショージは怖くて中に到底入る事など出来なかった。
店の外まで出て来てくれた和服姿の女性はショージの
姿を見て「はて…子供かしら?」ショージは躊躇する事
無く直ぐにその女主人にバイトを募集していないかと
聞いた。しかし、女主人は残念そうに「今はもういる
ので…」と断りかけた。

だが、ショージは「踊りを続けて行かなければならないし、
食べて行けなくなるのでお願いですから私を雇って
いただけませんか!」と懇願したのだ。女主人は「踊り
ですって?何の踊り?」と聞いた。ショージも躊躇わずに
「バレエです!僕はバレエダンサーに成りたいのです!」
と率直に答えた。

すると女主人は一瞬考えてから「明日から来なさい!
黒いズボンと白いワイシャツ、ネクタイを持っている
かしら?」ショージは頷き、「必ず明日には全て揃えて
持って来ます。どうぞ宜しくお願いいたします!店の
中を覗いた時に確かにカウンターの中に男が一人バーテン
として働いていた。彼が女主人を補佐しているのだろう。

女主人は「もう人手は足りているから雇えない…」と
言っていたのに何故か主人は意思を変えてまでショージは
次の日から雇ってもらう事が出来るようになったのである。
この水商売の世界では女主人をママと呼ぶ。ショージが
店で働き始めてから「愛」のママは、ショージがバレエの
レッスンが長引いて店に来るのが遅くなっても、ただの
1度も叱ることはなかった。店の従業員たちは怒った。

「おい、お前は本来なら必要のなかった男なのに雇って
貰っておきながら遅刻するなんてどう言うつもりだ!」
ホステスも同感だった。だが一人主人だけは違った。
むしろ周りに従業員がいない所にショージを呼んで、
「あなたは将来バレエダンサーになるのでしょう?
だったら何を置いてもバレエを優先しなさい。この
仕事はその次で良いのです。自分の夢を優先するの
です。」そしてバイト代も倍以上、ショージに払って
くれたのだ。

そして正しい言葉使いや作法、他にもショージが知らな
かったたくさんの事を教えた。ショージは心がとても
温かくなって行くのを感じるようになって行った。それから
ショージはこの「愛」で働かせてもらいながらロンドンに
行く夢を膨らませ、益々、バレエに夢中になって行った。
ママにはいくら感謝しても感謝仕切れない気持ちで
いっぱいのショージだった。
(つづく)


ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)第20話

2021-02-20 08:02:30 | webブログ

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ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)
1983年 春(19歳)六本木クラブ「愛」
第20話 
ショージは今までアルバイトとして勤めていた鉄板焼き
「アキ」を辞めてしまった。その理由はショージが
友人の女子ダンサーからある相談を受けた事からだった。
「仕事をしないと家ではもう助けてもらえないの…でも
今まで仕事なんてした事がないし、どうやって探せば
いいのかも分からないの…」そこでショージは自分が
働いている鉄板焼きの店「アキ」の店主に掛け合って
みる事にした。

店主は目を丸くしてショージに言った。「君一人でも、
本来ならいらなかったんだがね…ならばこうしよう。
私がこの女の子を雇うとする。だがその代わり君に
辞めてもらわなければならない…」今度はショージが
目を丸くした。「僕はまた仕事を探せばそれで良い。
だけど彼女をなんとか救ってあげたい…」店主に言った。

「では今日まで本当にありがとうござました。お蔭で
本当に助かりました。では由美ちゃんの事をどうぞ
お願い致します…」女の子はこれで救われた。
ショージは新しいバイトを探すために必死に六本木中を
歩き周ったが、働ける場所は見つからなかった。
働き口がないと言う事はバレエのレッスンがもう
出来なくなるだけではなかった。食っていけない事
であり、飢え死にする事だった。アパートの家賃も
2カ月分たまっていた。家主に言われた。「今週中に
家賃を払えなければここから出て行ってもらう!」

家賃をバレエのレッスン費に回してしまったのだ。
「今日中になんとか仕事を探し出さないと本当にまずい
事になってしまう…」必死になって探した。それで
も見つからなかった。そんな折、ある店のガラスに
「従業員募集」とチラシが張ってある。

「あ、ここが良いかも…」どうやら怪しいホスト
クラブだった。クラブがまだ始まっていない時間帯に
店の中に入って行った。中には自称マネージャーと
呼んでいる30代の怖そうな顔つきの男と面談した。
「ここで働きたいだと?お前は幾つだ?それにスーツ
を持っているか?」ショージはスーツなど1着も
持っていなかった。それよりもこんな恐ろしそうな
男の元では安心して働く事は無理だと思った。
ショージはそのホストクラブの店を出て来て道を
歩きながら途方に暮れた。


頭をだらんと垂れながら六本木から麻布十番への
坂を下って来ると、その坂の下から見えた一つの
小さな看板が目に留まった。それはクラブ「愛」
だった。ここでショージの人生の上で最も大切な
師であり、母のような大きな存在であり、また
ショージがバレエを続けていくに当たって最高の
応援者である人に出会う事になる。ショージの生涯の
大恩人であり、生きる強さを教えてくれた人だ。
(つづく)


ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)第19話

2021-02-19 07:49:04 | webブログ

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第19話
ショージは20歳になろうとしていた。そんなある日、
通っている六本木のバレエスタジオの皆からけんも
ほろろに言われた。「お前、馬鹿じゃない?お前の
様な者がロンドンに行ってどうなるの?お前よりも
素晴らしくて子供の頃からバレエをやってきた先輩の
ダンサーたちでさえヨーロッパに行っても全然通用
しないというのに、技術もスタイルも持ち合わせて
いない様な男がヨーロッパに行ってどうしたいの?
馬鹿らしくて話にならない…」とまるで相手に
されなかった。

ショージは自分の目で本物のダンサーというのは
どんなものなのかを知りたくなったのだった。本物の
ダンサーたちの身体から絞り出される汗の香りや、
同じ空気を吸いたかった。

「何を指して本物と言うのかそれを知りたい…それに
親ももうこの世にはいない…東京にいてもどうしようも
無い…。それだったらいっそ僕は日本にいるよりも夢に
見たイギリスに行って、ロイヤル・バレエがどんなもの
なのか絶対に見てみたい…!出来る事なら学校に入れて
もらいたい…」

そう心に思いついた時からショージの運命は変わり
始めたのかもしれない。それまで灰色にしか見えな
かったこの世の全てが全く今までとは違うように見え
始めたからだ。ショージは必死で朝方まで働き、
バレエも1日に3回ものレッスンを休まずに受け、
コツコツと飛行機代を貯めた。バイトの金で生活し、
バレエのレッスンを3回もしながら金を貯めるのは
とても大変なことである。食事もギリギリ死なない
程度に制限していた。働いたお金はバレエに使い、
残れば全て貯金にまわした。お金は使ってしまったら
最後残らないからだ。

イギリスに行くためには高い航空券代を稼ぎ、貯金も
しなければならなかった。毎日腹が空いて仕方が
なかったが、決して諦める事はなかった。ショージの
夢だからだ。夢が無かったらどうやって生きていったら
いいのかショージには分からなかった。

「ああ…神様!本当にもし神様がいるのなら、夢を
実現出来るのならば、私は長生き出来なくても良いから
私の夢を叶えてください、お願いです!一生にたった
1回だけで良いから僕のこの夢を叶えてくださいませんか…
お願いです!」そう言って空きっ腹をさすったのだった。
(つづく)