半澤正司オープンバレエスタジオ

20歳の青年がヨーロッパでレストランで皿洗いをしながら、やがて自分はプロのバレエダンサーになりたい…!と夢を追うドラマ。

ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!) 第94話

2023-06-24 08:34:26 | webブログ

バレエ教師の半澤です。

平日は朝は11時から初中級レベルのレッスン、水曜日、金曜日の
夕方5時20分は子供の初級、夜7時から中級レベルのレッスンです。
土曜日は朝11時からのレッスン、夕方6時です。ポアントもあります。
日曜日と祭日も朝11時から初級のレッスン、ポアントもあります。

皆さま、お待ちしております!

ホームページ半澤正司オープンバレエスタジオHP http://hanzanov.com/index.html
(オフィシャル ウエブサイト)

私のメールアドレスです。
rudolf-hanzanov@zeus.eonet.ne.jp
http://fanblogs.jp/hanzawaballet3939/

連絡をお待ちしてますね!

2023年12月24日(日曜日)枚方(ひらかた)芸術文化センターにて
半澤正司オープンバレエスタジオの発表会があります。

Dream….but no more dream!
半澤オープンバレエスタジオは大人から始めた方でも、子供でも、どなたにでも
オープンなレッスンスタジオです。また、いずれヨーロッパやアメリカ、世界の
どこかでプロフェッショナルとして、踊りたい…と、夢をお持ちの方も私は、
応援させて戴きます!
また、大人の初心者の方も、まだした事がないんだけれども…と言う方も、大歓迎して
おりますので是非いらしてください。お待ち申し上げております。

スタジオ所在地は谷町4丁目の駅の6番出口を出たら、中央大通り沿いに坂を下り
、最初の信号を右折して直ぐに左折です。50メートル歩いたら右手にあります。

バリエーションは「ライモンダ」より、ピチカートのヴァリエーションです。
男子は「ラ・シルフィード」のヴァリエーションです。
さ、やりましょう!!

連絡先rudolf-hanzanov@zeus.eonet.ne.jp

ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)
不思議な商人
第94話
そんな大金のルーブルは持ち合わせがない。「ねえ、
明日もここにいる?今日はそんなにお金を持って
いないんだ…それに、もうちょっと安くならない
かな?」すると大きなおばちゃんは目をカッと見開き、
「あんたね~、このシャプカが高い高いってさっき
から何さ!あたしゃねー!安くなんかしないよっ!
えっ、何処か安い店でも探せっつーんだよっ!
へっ!何だいさっきから…それに今日売れちまえば
明日なんかここに居るわきゃないんだよっ!
売れなきゃ居るに決まってんだろうがっ!」


おばちゃん、怖~っ!ショージは後ずさりしながら、
「そんな高い帽子は今日は売れないと思うよっ!」
と言いたいところだったが、追っかけて来そうなので
上目づかいでジ~ッと見ながら公園の入口の方へ
戻った。「そんなに怒らなくてもいいじゃん!」と
舌打ちしながら公園から出て歩きだそうとした時、
ふと横を見たらダンボール箱の汚れているのが落ちて
いて、その時に「あっ、そうだっ!」とショージは
咄嗟に閃いた。

持っている大きなバッグを氷雪の上に置いてガサガサ
と中を調べて出て来たのは「なんでもカシオの
腕ドケ~イッ!!」とドラエモンみたいにモスクワの
街中に向かって叫び、そのダンボール箱も拾った。
そう…ショージは公園の中に戻り、ロシア民間商人組合
の仲間入りをする事に決めたのだ。商品とは腕時計が2つ、
鞄の中に「もしも…」のために携えていたのだ。

これは時としてタクシー代にもなり、また飯代にも
なる。流石にトイレットペーパーの代わりにはなら
ないが。実はこの国にはトイレットペーパーがない。
公衆トイレの便器の横には10センチ四方の普通の
紙の束が置いてあるのだがショージは用を足しながら
頭を横に捻った。「これどうやってロシア人は使って
いるのだろう…これじゃ用を成さないと思うけど…」
その紙は全く吸水性がなく、しかも小さ過ぎる。
この紙がどのようにして役に立っているのかロシア人に
聞いてみたかった。

公園の入口付近でまず、「ものは試し…」と思い、
バッグを段ボールの上に乗せ、中側と外側を逆にした。
すると真っ黒い裏生地が現われて、その黒いゴージャス
な敷物がアクセントとしてカシオの高級腕時計を
モスクワの市民にアピールしようっていう魂胆だ。
「ヌハハハ!私は商人だ!「ベニスの商人」にも
劣りはしないし、「ユダヤの商人」にも劣らない
だろうな!」

売る者、買う者

腕時計を黒い生地の上に乗せようとした時に、既に
その行動にいち早く気付いた人が2人いた。生地に
乗った瞬間、「ちょっと見るよ!ほ~!こりゃ何処の
時計だ?珍しいな…幾らだ?あん、値段は幾らなんだ?」
ショージはその時計を取り上げた年配の男に「これは
日本と言う国のそれはそれは精巧な造りの時計で、
滅多な事では時間が狂わない素晴らしい時計だよ…」

だが年配の男はそんな説明より「幾らだと聞いている…
え、幾らなんだ?」ショージは急に金の事を言われ
値段の設定などしていなかったので、おばちゃんの
売っていた狐の帽子、「シャプカ」の値段の半分の
金額を紙に書いたら、「へっ!冗談じゃ無い!
そんな高いの買えるかっ!イディオット(馬鹿め)!」
とまで言われてしまった。

良く考えたらそりゃそうだ…この国の人の給料の
一月分ほどもする値段を書いて見せてしまったのだから、
男が怒っているのも仕方がない。ショージは年配の男を
追いかけて、「済みません、間違えちゃった!この
値段です…」とさっきの10分の1の値段…つまり帽子の
20分の1の値段にしてみたら、「ほ…そうか…
その値段か。よしっ、貰おう!」その場で商談が成立した。
金を頂くと、「スパシーバ!(ありがとう)」と礼を言い、
もう一つの時計を出して再び黒生地の上に乗せた。
(つづく)


ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!) 第93話

2023-06-23 08:17:40 | webブログ

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バリエーションは「海賊」二幕から花園より、グルナーラのヴァリエーションです。
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ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)
第93話
今、こうしてモスクワの市場を歩きながら、「シュトエタ?
(これ何?)、カクエタ、ザブートゥ?(この名前は何?)、
カク、ガバリーチ パ ルスキー?(ロシア語で何と
言いますか?)」を連発しながら、売り物に触ったり
指さして、おっちゃんやおばちゃんに聞いてみた。だが
この人たちの表情は怖かった。「あんたさ、もうちょっと
その顔どうにかならないかな?」などと言おうものなら、
彼らに半殺しの目に会わされそうなのでやめておいた。

「スコーリカ パーパストイ?」(値段はいくらですか?)
と買う気も無いのに商品を指差しながら「え…ダラゴ―イ!
(高いですよ!)」とケチ付けて、頭を横に振りながら
次の店に行った。鉛筆やノートを出して書き込むのは
ちょっとこの国では怖いので、公園の端に行き誰も見て
無さそうな所で一気に書き込んだ。そして段々とこの
市場での物価が分り始めた。

シャプカ

おじちゃんやおばちゃんたちに質問を連発しながら
この公園の一番奥まで来ると、「おっ!」そこには
テーブルがあって、そのテーブルの上に幾つかの獣の
毛が付いた商品が置いてあった。傍に寄って「これを
見せてもらっても良いですか?」とおばちゃんに
聞いてみた。おばちゃんは顔の表情を微動だにせず、
首だけを縦に振ったので、ショージはその金色に輝く
毛の付いた物を手に取ると暫し考えた。

「何じゃこりゃ?」いぶかしく思いながら、ショージが
見ていると「エト、シャプカー!シャプカーッ!」
ショージも真似して「シャプカー?何それ?」と
聞き返した。するとおばちゃんは自分の頭の上に
それを乗せ、「シャプカーッ!」これでようやく分った。
これは帽子だった。

そう言えばフランス語で帽子は「シャポー」、ロシアも
フランスのファッションが雪崩込んで来たために帽子
という単語がそのまま「シャプカ」になったのだろうか。
この金色の毛がふさふさしてる帽子は明らかにゴールデン
フォックス…つまり狐だ。しかしショージが今手に
とって見ているロシアの狐の帽子の形が非常に変わって
いて両耳部分が折れ曲がるように作られてあり、しかも
顔面がスッポリと隠れるように前の部分も大きく
折れ曲がるように作ってあるのだ。

吹雪の時などには良いかもしれないが、普段使う時には
前が見えるようにおでこの上で折り曲げるように作られ
ている。綺麗な真っ白の毛と輝く金色が素敵なコント
ラストだ。「何て美しい帽子なのだろう…!」そこでまた
「エト、スコーリカ リュブリー?」(これは何ルーブル
ですか?)の質問にそれまでショージがこの市場では
聞いた事の無い桁(けた)の数字をおばちゃんは答えた。

意味が分らないからこの時だけ鉛筆と小さく切った
ノートの切れ端をおばちゃんに渡し、「書いて…」
と願うとおばちゃんは驚くような高額の数字を書いた
のだ。「こ、これは高過ぎますよ~!」と書いてくれた
紙を叩きながらおばちゃんに言うと、首を横に振り
ながら「ニエーッ!アブイチシナ!ニドラガッ!」
(いいや!これは高くないっ!これが普通の
額じゃっ!)と、バシッ!と言われてしまった。

ショージは「この帽子が欲しい…この帽子、絶対に
この場で今欲しい!」だが…
(つづく)


ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!) 第92話

2023-06-22 08:39:04 | webブログ

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ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)
第92話
ショージは極限に近いマイナスの気温の中で、
その公園の中だけが群衆の吐く息で真っ白く
霧がかかったようにぼんやりと霞む中、人々が
物を売りさばく姿や、少しでも安く多くゲット
したい人たちを見ながら再び驚くのは、どの人の
表情に笑顔が全く無い事だ。厳しい顔をして
黙々とうごめいている。公園の群衆だけでなく、
道を歩いている無数の群衆もザッザッザッ…
と雪を蹴り散らしながらその誰にも笑顔がないのだ。
そこに人間の温かみなどを感じる事が出来な
かった。皆一様に暗い。ただ何処かに行き着く
事だけを考えて黙って歩く無数の恐ろしい程の群衆。

これに似た群衆をショージは見た事がある。
それはショージがサーフィンに行こうと川崎を
通った時に、おそらく競馬場だと思うが、
その催し物が終わって帰る、負け男たちの群衆が
皆、やはり一様に押し黙って、暗く重い足取りで
一定の方向に歩く姿がこのモスクワの群衆に似て
いた。競馬場の群衆は既にポケットの中の財布の
中身をスッテンテンにしてしまって、愕然として
いる事だろう。群衆の男たちの目には未来も
無ければ、希望も全く無いような…

それならばショージは理解出来るのだが、何故、
モスクワの群衆の顔には表情が無いのだろうか…?
生きるためだけの恐ろしいほどのエネルギーが
充満している市場で、今ショージ一人だけが
大きな笑顔で走り回っていた。

勉学の場

ショージにとって言葉を学ぶ最も適した場所と
言うのが市場なのだ。これはイタリアに
行った際に覚えた事であった。イタリアに初めて
仕事として行った時に数字の1,2,3も
「お早うございます、さようなら…」も全く
分らなかったショージに市場のおばちゃんや
おじちゃんが笑いながら教えてくれたお蔭で、
ショージも楽しくて、毎日のようにノートと
鉛筆を持って習った。特に魚屋は見ているだけ
でも楽しかった。何故ならばショージは魚に
大きな興味を持っていたからだ。

ショージが手に持って書き込んでいるこの
ノートは後に辞書となり手放した事はない。
ただ、文法が滅茶苦茶なのでイタリア人と
話す時には申し訳無かったと思っているが、
それでもショージの言いたい事は話せる
ようになり、向こうの言いたい事も分るように
なった。

スウェーデンでも同じようにして言葉を
学ぼうと思ったのだが、北欧の市場を見た
時には唖然とした。寒さのせいなのか、魚も
肉も鶏肉も野菜も、イタリアの物と比べたら
大人と子供くらいの差がありミニチュア
サイズのようなものに値段だけはイタリア
よりもずっと高いからだ。これでは興味も
失せてしまう。人間というのは面白いもので
自分が学ぼうなどと思わなくても、それを
している事で実に楽しい、充実感がある、
やりがいがある!と思える時は脳が勝手に
学んでくれるようだ。
(つづく)


ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!) 第91話

2023-06-21 08:17:51 | webブログ

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ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)
第91話
もちろんロシア語で書いてあり、ロシア語を読むのが
苦手なショージは「ん?ラ…イ…モ…ダ?あーっ
ライモンダだっ!やった~っ!見るに決まってる
じゃーん!」はしゃぎながら大きなダルマのような
おばちゃんの列の後ろに並びチケットをゲットした。
バレエ「ライモンダ」はボリショイが本家本元だ。

…とある公園に

「んー、あんなに爺ぃたちのガードが堅かったら、
容易に劇場内には入れないな…でも、折角この
モスクワまで来ておいて、ボリショイのレッスンを
受けないで帰るのは王将ラーメンに来て餃子を食べ
ないよりも悲しい事だし…。何か手立てを考えなきゃ
いけないな。どうしよう…」独りで道を歩きながら
ぶつぶつと呟いた。

時間を潰すためにレストランに入った。だが中は
暗く誰も人がいない。「やっているのか?」
ウェイターが一人だけいた。「やってます?」
「いややってはいない…」「ドルで支払いますが…」
「やっているよ!」手の平をぽんと返した受け応えだ。
そのレストランでシャンペンとボルシュチスープ、
ストローガノフとライスの付け合わせを完食するとドルで
支払いを済ませた。

まだ劇場で「ライモンダ」が始まるまでにはかなりの
時間がある。しかし、外は人間が気軽に散歩できる
ような温度ではない。「何処か暖房が利いていて
時間が潰せる場所を探そう。」道を歩きながら
ボリショイ劇場から遠ざからないように歩いていると
公園の前まで来た。「ん?何でこの公園はこんなに
人がいっぱいいるんだ?」ショージは興味に
駆られ公園内に入った。と、のっけからおばさん
たちが大声で何か怒鳴っている。

そのおばさんたちの前には簡易の小さなテーブルが
置いてあり、その上に紙袋がたくさん積んであった。
「あれは何だろう?」大勢の人たちがその公園に
いるのは、間違い無く、物々交換か個々に仕入れた
何かの商品を売っているのだろうと判った。
ショージはこういう情景を見ると体内の血が燃えて
来る。

群衆の顔

公園の中に物凄い数の群衆がひしめき合い、その雑踏
の中にショージも進んで入って行った。群集は生活の
ために自然に出来た市場なのだ。ここは金で物を
買う人もいれば物々交換している人もいる、何とも
迫力のある光景であった

この市場の中でショージを驚かせたのはただ単に
ガチャガチャと人が集まっているのではなく服を
売っている個々の店が集まったブロック、肉屋や
野菜の食品のブロック、または家具や家電製品の
ブロック…と、それぞれが整然とそれぞれの分野に
分かれていて、好き放題に勝手な場所で売っている
訳ではないという事だった。

考えてみれば服を売っている人の傍に肉の切り身や
ミンチなどを売っていたら服に肉片が付いても
嫌だろうし臭いが漂っても嫌なのであろう。ま、
自然な事でこれに驚いているショージ自身が
おかしいのかもしれない。
(つづく)


ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!) 第90話

2023-06-20 08:12:04 | webブログ

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ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)
4人の爺さんたち
第90話
兎に角、この劇場の関係者入口の二重ドアーを
入った瞬間にその劇場内の温度が予想以上に温かく、
寒さが限界にまで達していたショージの身体中の
先端が急激な温度差によって痺れた。だが、人間、
どのような場面に遭遇してもタイミングというのが
非常に大切なものだ。

イレク・ムハメドフ氏が中に入った時に、その
どさくさに紛れて一緒に入ればもしかしたら門番は
気が付かないかも…と、甘い考えで一緒に門を入り、
イレク・ムハメドフ氏の挨拶も終わらない内に
ショージは爺さんたちからの死角になる、ムハメ
ドフ氏の斜め背後を歩いて顔を少しだけ下に俯き
ロシア語で挨拶をしたのだ。

そのまま止まらずに廊下を歩く事、7歩…「お、
やった…やったね~!」と、その瞬間、背後から
ガバーっと羽交い締めにされてしまったのだ。
「うわ~っ!」と驚き、後ろを見ると、門番の
爺さんの4人の内の一人が得意そうに「クトエタ~ッ!
クトエタッ~!?」(誰だこいつは!誰だ
こいつは~っ!?)と爺ぃ特有の甲高い声で
叫んだ。ショージはその手を振りほどきたかったが、
とんでもない強い力で放そうとしない。

ショージは「よっしゃ~っ!爺さん、偉いっ!
よくやったぞ!君はとうとう門番という大事な
仕事をやってのけたのだ!部外者の侵入を阻止
するのが君の役目だ!それが任務であり、使命
なのだっ!そして君は自分にもその侵入者を
捕まえる事の出来る力がある…と言う事をとうとう
立証したのだ…やれば出来る…この歳になっても
そう捨てたものじゃないさ…と今なら豪語しても
良いのだ!僕と言う部外者を捕まえた君に今
贈りたい言葉は、おめでとう…爺さん、
おめでとうっ!」などとは口が裂けても言わない。

ショージの口から出た言葉は「ちっきしょ~!
惜しかった~っ、後もうちょっとだったのにな~!
爺ぃめっ!」

ショージはその4人の門番に囲まれてドアーの
外まで連れ出された。背後からも横からも羽交い
締めのままで爺ぃたちはドアーをギ~と開くと
「そーらよっ!」ポーンとまるで罠で捕まえた
ドブネズミのように劇場から外に放り出されて
しまった。「げ~っ!さ、寒過ぎ~っ!こんな
温かな場所を体感しちゃったその後で、又、
地獄の寒さに戻らなきゃなんないのか!?」
しかし人間とは考える動物。ショージの脳が
フル回転し始めた。

門番の怒り炸裂!

まだ5秒も経ってないのに即、また二重ドアーを
開いて中にまるで初めてのように入って行くと
案の定、「こ、この馬鹿、またお前なのかっ!
何しに入って来たのだ!出て行け~っ!聞こえないのか、
出て行け~っ!」また4人の内の一人が椅子から
立ち上がりショージを目がけて寄って来たが、
ショージは頓着せずに「あ、違いますよ、ちょっと
聞きたい事があるから入って来たんですよ…」
すると、門番の爺さんは「何?聞きたい事だと…?
何だ、言ってみろ!」と鼻息も荒く、怖そうな形相で
ショージを睨んでいる。「そんなに興奮すると血が
濁りますよ…」とショージは教えてあげようかと
思ったが、そんな爺ぃの人生はどうでもいいか…
と捨ておいて、「あーあのね、今、何時かな…って
思ってさ!」

するとショージを睨んでいた爺さんの顔が見る見る
真っ赤な鬼のような形相に変わったのだ。爺さんは
震えながら「そ、そんな事知った事か…!この野郎、
出て行かないと…」拳まで上げている。

ショージを見つめワナワナと爺さんは震えていたが、
次々に楽器を抱えたオーケストラの奏者や、ダンサーたち、
また劇場関係者が入口の中に入って来た。そして
ようやく正気を取り戻したのか、それとも時間だけ
なら…と思ったのか、「お前の顔の前に時計がある
だろ…見たらさっさと出て行け…」

ショージは「あっそう…もうこんな時間なのか…
じゃ、行こうかな…今日はバレエの公演は無いの
かい?」すると違う爺さんが、「そんな事は正面
玄関で自分で調べろっ!早く去れ~っ!」
ショージはニヤニヤと笑いながら、「チャオ~」
と偉い剣幕の爺さん4人にちゃんとイタリア式の
挨拶をした。が、爺さんたち4人はこっちを
見ようとはしない。ショージは「チェッ!」と
舌打ちしながら、言われた通りに正面玄関に
廻り人でごった返しているチケット売り場で
今日の催し物を確認した
(つづく)