それまで田園風景の中や山間の緑の中を走り、山間では眼下に時折只見川を見下ろしながら走ってきた只見線だったが、早戸駅はそれまでの駅とは違った。
駅は只見川の川べりにあるのだ。駅の前に、広い只見川が流れているのが見えた。
只見線は、早戸駅のあとは小出駅まで続いてゆくのだが、今回の私の下車駅は早戸駅だったので、その先の只見線のことはわからない。それに関しては、いずれ行く機会があれば、またの機会にすることにして。
ただ、早戸駅の先の線路も只見川ぞいを走ってるように見えたから、この先は只見川と只見線は併走しているのかな?
駅の少し先には、只見川の遊覧船乗り場が見えた。予定では翌日の朝、あの船着き場から船に乗る予定だったのだが・・。
早戸駅は無人駅で、小さな小屋みたいなものがあるだけ。
↑早戸駅からは、只見川の渡し舟乗り場が見えた。
↑早戸駅の駅舎。小さな小屋みたいな駅舎。駅は無人駅。
駅の前にはこの日の宿「鶴の湯」の送迎車が迎えにきてくれていた。
早戸駅から鶴の湯までの距離は歩いて10分ちょい。だから歩いても苦ではないたろう。
車ならあっという間に宿に到着した。
つげさんも滞在したことがある、「つるの湯」に。
入口からエレベーターを使い地下2階へ降りると、受付があった。
↑早戸温泉「つるの湯」到着。受付はエレベーターに乗って地下2階にあった。
↑つげ作品の中ではこの湯治宿は「鶴の湯」と書かれていたが、正確な名称は「つるの湯」。写真表面の入り口を入ると、そこは受付。
この宿は、どちらかというと立ち寄り湯がメインであり、休憩室にはそこそこのお客さんがいて休んでいた。
宿泊施設もあるが、泊まりの場合は基本は自炊になる。湯治場なのだ。
とはいえ、私のように自炊ではない客もいて、そういう客のためには館内に食事処もある。
そこでは、数種類の食事を頼むこともできる。
メニューは、ラーメン類、カレーライス、ソースカツ丼、おにきりなど。
宿の受付では、私がこの宿にこだわった理由をスタッフに話した。
その理由とは、私が敬愛する漫画家つげ義春さんが旅イラストに描いた宿のひとつがここだったので、来てみたかったということ。
つげさんが描いた旅イラストの風景が今はどうなっているのかを確かめるために。
この宿を描いた、つげさんのイラストのコピーを私は持参して行ったので、そのイラストをスタッフに見せ、イラストに描かれた場所がどこなのかを聞いてみた。
すると、つげさんが描いたイラストの場所は特定してくれたが、イラストに描かれた通りの風景はもう残ってなかった。
なにせ、つげさんがこの宿を訪れたのは、多分昭和40年代あたりだと思われるし、そのイラストからはすでに何十年という年月が過ぎ去っている。なので、イラスト通りの景観は残ってないのは仕方ないとは思った。
とはいえ、地形そのものは当時と変わってないので、「このへんからのアングルをイラストに描いたんだな」ということは、わかった。
イラストのコピーは2種類あったのだが、もう1種類の館内のイラストの景観は、もうその建物がないので、現在は存在していない。
その代わり、それに近い景観は敷地内で見つけたので、念の為に写真は撮っておいた。
↑つげ義春先生が描いた「つるの湯」のイラスト。つげ先生がこの地を訪れたのは、昭和40年代だったろう。さて、この場所は今どうなってるか。
↑つげ先生が描いた風景は今、こうなっていた。イラストに描かれた建物はもうない。できればもっと川沿いに立って写真を撮りたかったが、そうすると今は女性用の露天風呂が丸見えになってしまうことになるらしいので断念!ちなみにこの記事のトップ写真も、ほぼ同じアングルで撮ったもの。
↑宿の人の話によると、この通路は川べりの浴槽に向かう通路。今はその浴槽のある建物も、そこに続くこの通路もない。
↑上のイラストの通路はもうなかったかわりに、それに近い通路を見つけたので、撮っておいた。この写真の通路は、湯治棟に向かう通路。
宿の人は、つげさんのことは知らなかったらしく、私がつげさんのイラストを見せたら、少し驚いていた。
私が「ほら、つげさんがこの宿のことをイラストに描いているのです」と言って見せたら、宿のスタッフは「あら、ほんとだ!」との反応。
てっきりご存知かと思ってたので、意外だった。でも、そんなものなのかもね。
つげさんの作品の舞台になった宿の中には、つげさんが訪れて作品の舞台にしたことを「売り」にしてる宿もあるくらいなのに。私が宿の主人なら、売りにするかもね(笑)。
↑つるの湯の看板。
その後、宿の周辺を少し散歩。宿の源泉の近くには温泉神社もあった。
その後、川べりを散策。
↑湯治棟の建物。私の泊まった部屋は、この棟の中の1室。
↑温泉神社に向かう坂道。
↑温泉神社が見えてきた。
↑温泉神社。
↑温泉神社のそばにあった、早戸温泉の源泉。
↑只見川は、かなり大きな川だった。
↑川べりの散策路に降りてゆく。
↑宿の裏側。
↑川霧さくら遊歩道を歩いてみた。
↑遊歩道は続く。
↑遊歩道には川べりコースと、山まわりコースの2種類あった。
↑遊歩道からは、只見川が目の前に見えた。
ひととおり散策路を歩いた後、宿の前まで戻り、喫煙所で一服。
ネットでこの宿のことを調べた時、この宿は禁煙であることが明記されていた。
宿に滞在している間、煙草は吸えないのか・・と思ってたのだが、とりあえず宿の入り口付近に屋根付きの喫煙所があったので、少し安堵。
↑つるの湯の駐車場には、ご覧の喫煙小屋が用意されていた。椅子もあれば、自販機もあった。
↑客室から喫煙小屋を見下ろしてみた。
その後宿坊の方に行き、やっと部屋でひとやすみ。
ひとやすみしてたら、無性に一服したくなった。だが、館内禁煙の宿だったので、吸うとなったらさっき立ち寄った喫煙所まで行かないといけないのだろう、でもそれはめんどくさいなあ。部屋からあの喫煙所までには少し距離があるし、行くには靴をはいて1度外出しなければならなくなるから。
ダメ元で館内案内を見てみたら・・なんと!
宿坊にも喫煙所があることが判明!しかも私の泊まる部屋とは同じフロアで、しかも近い。
談話室みたいな部屋が館内にはあり、喫煙所はその談話室の向こうにあるではないか。
その喫煙所は、屋外ではあるのだが、談話室をすり抜けて行けるようになっており、喫煙所に出てドアを閉めれば煙草の煙は館内には入らない。
しかもその喫煙所は、館外ではありながらも屋根はあるし、イスもあるし、テーブルもある。
いちおう館外ではあるので、外気に浸りながら一服できる。こりゃ助かる(笑)。
なので、この宿に宿泊予定のある方で喫煙派の人には、宿自体は禁煙ではあるものの、喫煙所はちゃんとあるので、そのへんはご安心を。
↑湯治棟内の談話室。長逗留の湯治客たちは、自炊した料理をここで食べる。
↑談話室の奥に喫煙所への入り口が。
↑湯治棟の喫煙所。半屋外になっており、イスもテーブルもあった。屋根はあるが、半分屋外なので外気が通り抜け快適だった。
↑湯治棟の調理室。湯治客は、用意した食材をここで調理して、談話室で食べる。
その後、いよいよ入浴。
湯はけっこう熱い。なので、あまり長時間は入り続けられなかった。湯は川べりで、温泉に浸かりながら只見川を眺めてボーっとすることができた。
癒やされた。
後で感じたことだが、この温泉の泉質はかなり良い。
風呂から出た後は、夜中になっても体がポカポカし続け、まったく冷えなかった。さすが、旅の達人つげ先生が気に入っただけのことはある。
風呂から出たあとは夕飯。自炊する気はなかったので、宿内の食事処に行って、この日の夕飯を注文。
食事処のラストオーダーは夕方6時までなので、急ぐ必要があった。
私が頼んだのは辛し味噌󠄀ラーメンとミニソースカツ丼の組み合わせ。
実に美味かった。
↑食事処のメニューのひとつ、つるの湯独自の「つるの湯ラーメン」。塩味。
↑食事処でオーダーできる辛味噌ラーメン。美味かった。
↑食事処では、ソースカツ丼もオーダーできる。これはミニソースカツ丼。
それと、翌日の朝飯用におにきりを作ってもらっておいた。この宿は基本自炊なので、朝飯も夕飯も出ない。
食事するなら、食事処にいってメニューを注文するか、自炊するしかない。
しかも食事処の営業は昼から。そうなると朝飯は、前の日に食事処でおにぎりを作っておいてもらうしかない。
↑朝もやのかかる早戸温泉。
↑あたりが明るくなってきた。
↑宿から早戸駅へは歩いて10分くらいか。ルートの途中には、早戸温泉郷トンネルが。
さて翌日。あいにくの雨だった。
実はこの日の朝に、只見川の遊覧船を予約しておいたのだが、雨足が強まる中で舟の出港はできるのか不安だったので、あらかじめ調べておいた船頭さんの携帯に電話して、出港か欠航かを聞いてみた。船頭さんは一応船着き場には向かってくれたみたいだ。
でも、雨足が強まってるので、こちらの判断でキャンセルを決断するしかなかった。
雨が原因での欠航なので、キャンセル料は発生しなかった。
ただ、せっかくの只見川の川船に乗るチャンスだったのに、残念無念だった。
↑雨が降ってなければ、あの渡し舟に乗るつもりだったのに。
会津若松に戻る為の只見線が早戸駅につくのは、午前9時。それを逃すと、次は昼過ぎまでない。
前述の通り、小出駅と会津若松駅を繋ぐ只見線は1日に3往復便しかないのだ。
絶対に乗らねばならない。
やがてほぼ定刻通りに会津若松行の只見線がやって来た。
それに無事に乗って、私は会津若松駅方面に戻っていった。
↑早戸駅。ご覧のとおり、小屋のような駅舎があるだけの無人駅。
↑霧のかかる早戸駅近辺。風情がある。
↑只見線の時刻表。1日の本数が極めて少ない。遅刻したりしたら、その日の予定が大幅に狂うことになるのて、要注意。
↑只見線からの眺め。霧の只見川。まさに秘境鉄道、ここにあり。
↑山間のエリアを抜け、平野を走る只見線からは、おむすびみたいな山が見えた。名のある山なのかな?
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