正確にいうと「この世界の(さらにいくつもの)片隅に 」という、
ロングバージョンのほうを観ました。
それともディレクターズカットってやつかな?
とにかく168分の長い長いアニメ映画です。
まず個人的な評価として、
①面白い
②一回観れば十分
③途中で挫折
という判断基準で映画・ドラマを評価していますが、
この作品は①面白いという率直な感想です。
そもそも、自分は長い時間の映画は好きではないんです。
大体90分から100分程度がよくて、
120分を超えるのはちょっと苦手です。
特に映画館だとケツが痛くなるんですよね。
それでもこの映画は最後まで飽きずに観れました。
それだけ面白いという証左です。
なんで2019年の作品を今頃観たんだという、
素朴な問いがあるかもしれませんが、
その理由は後で説明します。
まずは自称軍事マニアとして好感が持てるのは、
正確に当時の軍艦や航空機や爆弾の性質を、
事細かに描写していることです。
例えば戦艦大和が登場するのですが、
ちゃんと昭和19年当時の姿を描いていました。
「どういうこと?」と、
思われる方もいらっしゃるかもしれません。
戦艦大和は年代によって見た目が若干違うんですよね。
一番イメージがあるのは昭和20年の沖縄特攻時の姿だと思います。
つまり昭和19年当時と昭和20年当時の見た目が違うんです。
今風にいえば「マイナーチェンジ」しているんです。
「何が違うんだ?」といった好奇心がある方は、
どんな手段でもいいですから各自調べてくださいな。
ここではちゃんと正確に描写していることだけ、
わかっていただければそれでいいかと思います。
それと呉の空襲では一瞬ですが、
夜間戦闘機の「月光」が探照灯(サーチライト)に、
照らしだされていましたね。
これが中途半端にいい加減だったら、
普通に誰でも知っていそうな「ゼロ戦」を出していたのだろうけど、
あえて海軍の夜間戦闘機「月光」を登場させていましたね。
呉といえば海軍ですから、なんとまぁ、
芸が細かいというか史実に沿った精密さというか…
もっとも、自称飛行機マニアからすれば、
「どうせなら343空の紫電21型も飛ばしてほしかったなぁ~」
なんてアホみたいな妄想をかきたてております。
それと、投下される爆弾もキッチリ描写されていましたね。
通常爆弾や焼夷弾や機雷といったものが、
単に投下され単にドッカンドッカン爆発するわけではなく、
それぞれの特徴に沿った描かれ方をしておりますから、
事前調査もキッチリしているんだなぁと感心しました。
ストーリーの展開上重要となる時限式の爆弾は特にね。
そして一番良かったと思える点はズバリ、
「押しつけがましさがなかったこと」です。
製作側がどのような意図で完成させたかは全くわかりません。
ただ、こういった戦争を扱ったジャンルの日本映画って、
いつも「戦争は悲惨だ」「戦争はするな」というような、
強烈なメッセージを説教じみたというかなんというか、
とにかく「反戦」や「平和」を押しつけてくるんですよね。
自分にとってそれは単なる「プロパガンダ」なんです。
自分は面白い映画やドラマを見たいんであって、
政治的なメッセージで扇動するようなものは、
決まって面白くないんですよ。
勿論、「反戦」や「平和」を訴えることは、
決して悪いことではないんです。
でもね、戦争を題材にした日本映画(ドラマ含む)って、
いっ~つも「戦争は悲惨だ」のオンパレードなんですよね。
これは右翼も左翼も関係ないんです。
左翼だと悲惨さの強調プラス日本軍への徹底的な嫌悪、
右翼だと特攻隊へのこれ見よがしな賛美ばっかり…
物語としてはどちらも面白くないんです、自分としては。
だからここ何十年かはまともに日本の戦争映画を見てないんです。
すぐ飽きちゃうからね…
しかし、たまたま見ることになった本作品にはそれがなかった。
最後まで飽きずにね…
「押しつけがましさ」という観点で言えば、
あえて悲惨なシーンを描かなかったことも挙げられます。
例えばネタバレになってしまうかもしれませんが、
主人公の姪が時限式の爆弾で死ぬシーン。
やっすいチープなやつだと、
瀕死の姪に一言二言しゃべらせる場面を挿入して、
いかにも「悲惨さ」を強調しそうですが、
本作品にはそういった描写が一切ありません。
呉空襲のシーンも同様です。
その反面、
最後の数十秒しか描写のない原爆のシーンが、
より衝撃的で鮮烈な印象を与えています。
たったあれだけで原爆の地獄を表現してしまった…
色々な意味で恐ろしいです。
というわけで、
この作品は個人的にはお薦めできるアニメ映画ですので、
皆様も是非ご覧になってくださいな。