Ⅲ 安全設計審査指針
2.適用範囲
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1 定義 (省略)
2 原子炉施設全般
2.1 準拠規格ならびに基準
原子炉施設における事故の防止ならびにその結果の抑制のために、安全上重要かつ必須の系および機器の設計、材料選定、製作ならびに検査については安全上適切と認められる規格ならびに基準によるものであること。
2.2 敷地の自然条件に対する設計上の考慮
(1)当該設備の故障が、安全上重大な事故の直接原因となる可能性のある系および機器は、その敷地および周辺地域において過去の記録を参照にして予測される自然条件のうち最も苛酷と思われる自然力に耐え得るような設計であること。
(2)安全上重大な事故が発生したとした場合、あるいは確実に原子炉を停止しなければならない場合のごとく、事故による結果を軽減もしくは抑制するために安全上重要かつ必須の系および機器は、その敷地および周辺地域において、過去の記録を参照にして予測される自然条件のうち最も苛酷と思われる自然力と事故荷重を加えた力に対し、当該設備の機能が保持できるような設計であること。
2.3 耐震設計
原子炉施設は、その系および機器が地震により機能の喪失や破損を起こした場合の安全上の影響を考慮して重要度により適切に耐震設計上の区分がなされ、それぞれ重要度に応じた適切な設計であること。
7非常用電源
非常用電源設備は、単一動的機器の故障を仮定しても、工学的安全施設や安全保護系等の安全上重要かつ必須の設備が、所定の機能を果たすに十分な能力を有するもので、独立性および重複性を備えた設計であること。
(解説始まり)
2.2 敷地の自然条件に対する設計上の考慮
(1)の規定について(抜粋) ②「予測される自然条件」とは敷地の自然環境をもとに、地震、洪水、津浪、風(または台風)凍結、積雪等から適用されるものをいう。
③「自然条件のうち最も苛酷と思われる自然力」とは、対象となる自然条件に対応して、過去の記録の信頼性を考慮のうえ、少なくともこれを下まわらない苛酷なものを選定して設計基礎とすることをいう。
なお、自然条件のうちのそれぞれのものは、出現頻度、程度、継続時間等に関する過去の記録を参照にして設計上適切な余裕が考慮される場合には、必ずしも異種の自然条件を重畳して設計基礎とする必要はない。
(2)の規定について、
①「事故による結果を軽減もしくは抑制するために安全上重要かつ必須の系および機器」とは、例えば周辺公衆の安全確保のための最終防壁となる原子炉格納容器等をいう。
②「自然条件のうち最も苛酷と思われる自然力と事故荷重を加えた力」とは、例えば、原子炉格納容器に関して、地震力と原子炉冷却材喪失事故後の内圧による荷重を加算して設計検討を行なうことなどをいう。
③事故荷重の継続時間が短い場合には、必ずしも事故荷重と自然条件を重畳して設計基礎とする必要はない。
① 「単一動的機器の故障」の対象には、非常用内部電源設備では、これを構成するしゃ断器、制御回路の操作スイッチ、リレー、非常用発電機等のうちいずれか一つのものの不作動や故障をとるものとする。
② 「所定の機能を果たすに十分な能力を有するもの」とは、原子炉緊急停止系、工学的安全施設等の事故時の安全確保に必要な設備を、それぞれが必要な時期に要求される機能が発揮できるように作動させうるような容量を具備することをいう。
③ 「独立性および重複性」とは、単一動的機器の故障を仮定した場合にも、要求される安全確保のための機能が害されることのないよう、非常用発電機を2台とするなどにより、十分な能力を有する系を2つ以上とし、かつ、一方が不作動となるような不利な状況下においても、他方に影響をおよぼさないように回路の分離、配置上の隔離などによる独立性の確保が設計基礎とされることをいう。
(解説終わり)
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III 用語の定義
(8) 「単一故障」とは,単一の事象に起因して1つの機器が所定の安全上の機能を失うことをいい,単一の事象に起因して必然的に起こる多重故障を含む。
(10) 「多重性」とは,同一の機能を有する系が2つ以上あることをいう。
(11) 「独立性」とは,多重に設けた機器又は系統が設計上考慮する環境条件及び運転状態に対して共通要因又は従属要因によって同時に故障状態にならないことをいう。
IV 原子炉施設全般
指針1. 準拠規格及び基準
安全上重要な構築物,系統及び機器の設計,材料の選定,製作及び検査については,安全上適切と認められる規格及び基準によるものであること。
指針2. 自然現象に対する設計上の考慮
- 安全上重要な構築物,系統及び機器は,地震により機能の喪失や破損を起こした場合の安全上の影響を考慮して,重要度により耐震設計上の区分がなされるとともに,敷地及び周辺地域における過去の記録,現地調査等を参照して,最も適切と考えられる設計地震動に十分耐える設計であること。
- 安全上重要な構築物,系統及び機器は,地震以外の自然現象に対して,寿命期間を通じてそれらの安全機能を失うことなく,自然現象の影響に耐えるように,敷地及び周辺地域において過去の記録,現地調査等を参照して予想される自然現象のうち最も苛酷と考えられる自然力及びこれに事故荷重を適切に加えた力を考慮した設計であること。
指針3~7省略
指針8. 系統の単一故障
安全上重要な系統は,非常用所内電源系のみの運転下又は外部電源系のみの運転下で,単一故障を仮定しても,その系統の安全機能を失うことのない設計であること。
指針9. 電源喪失に対する設計上の考慮
原子力発電所は,短時間の全動力電源喪失に対して,原子炉を安全に停止し,かつ,停止後の冷却を確保できる設計であること。
ただし,高度の信頼度が期待できる電源設備の機能喪失を同時に考慮する必要はない。
(解説始まり)
長期間にわたる電源喪失は、送電系統の復旧または非常用ディーゼル発電機の修復が期待できるので考慮する必要はない。
「高度の信頼度が期待できる」とは、非常用電源設備を常に稼動状態にしておいて、待機設備の起動不良の問題を回避するか、または信頼度の高い多数ユニットの独立電源設備が構内で運転されている場合等を意味する。
(解説終わり)
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指針10~12省略
V 原子炉及び計測制御系
指針13~17省略
指針18電気系統
- 安全上重要な構築物,系統及び機器の安全機能を確保するために電源を必要とする場合には,必要な電源として外部電源系及び非常用所内電源系を有する設計であること。
- 外部電源系は,2回線以上の送電線により電力系統に接続される設計であること。
- 非常用所内電源系は,十分独立な系統とし,外部電源系の機能喪失時に,1つの系統が作動しないと仮定しても,次の事項を確実に行うのに十分な容量及び機能を有する設計であること。
(1) 運転時の異常な過渡変化時において,燃料の許容設計限界及び原子炉冷却材圧力バウンダリの設計条件を超えることなく原子炉を停止し冷却すること。
(2) 冷却材喪失等の事故時の炉心冷却を行い,かつ,格納容器の健全性並びにその他の安全上重要な系統及び機器の機能を確保すること。
4.安全上重要な電気系統は,系統の重要な部分の適切な定期的試験及び検査ができる設計であること。
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III 用語の定義
(17) 「多重性」とは、同一の機能を有する同一の性質の系統又は機器が二つ以上ある ことをいう。
(18) 「多様性」とは、同一の機能を有する異なる性質の系統又は機器が二つ以上ある ことをいう。
Ⅳ.原子炉施設全般
指針1. 準拠規格及び基準
同左
指針2. 自然現象に対する設計上の考慮
同左
指針3~10まで省略
但し、必ずしも同左でない。
指針8,9に相当する記載なし
Ⅴ.原子炉及び原子炉停止系
Ⅵ.原子炉冷却系
指針27電源喪失に対する設計上の考慮
原子炉施設は、短時間の全交流動力電源喪失に対して、原子炉を安全に停止し、 かつ、停止後の冷却を確保できる設計であること。
Ⅹ.計測制御系及び電気系統
指針48.電気系統
1. 重要度の特に高い安全機能を有する構築物、系統及び機器が、その機能を達成するために電源を必要とする場合においては、外部電源又は非常用所内電源のいずれ からも電力の供給を受けられる設計であること。
2. 外部電源系は、2回線以上の送電線により電力系統に接続された設計であること。
3. 非常用所内電源系は、多重性又は多様性及び独立性を有し、その系統を構成する 機器の単一故障を仮定しても次の各号に掲げる事項を確実に行うのに十分な容量 及び機能を有する設計であること
(1)、(2)同左
4.同左
(解説の始まり)
指針27電源喪失に対する設計上の考慮
長期間にわたる全交流動力電源喪失は、送電線の復旧又は非常用交流電源設備の 修復が期待できるので考慮する必要はない。
非常用交流電源設備の信頼度が、系統構成又は運用(常に稼働状態にしておくこ となど)により、十分高い場合においては、設計上全交流動力電源喪失を想定しなくてもよい。
(解説終わり)
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第二条 この規則において使用する用語は、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律 (以下「法」という。)において使用する用語の例による。
十七 「多重性」とは、同一の機能を有し、かつ、同一の構造、動作原理その他の性質を有する二以上の系統又は機器が同一の発電用原子炉施設に存在することをいう。 十八 「多様性」とは、同一の機能を有する二以上の系統又は機器が、 想定される環境条件及び運転状態において、 これらの構造、動作原理その他の性質が異なることにより、共通要因(二以上の 系統又は機器に同時に影響を及ぼすことによりその機能を失わせる要因をいう。以下同じ。)又は従属要因(単一の原因によって確実に系統又は機器に故障を発生させることとなる要因をいう。以下同じ。)によって同時にその機能が損なわれないことをいう。 十九 「独立性」とは、二以上の系統又は機器が、想定される環境条件及び運転状態において、物理的方法その他の方法によりそれぞれ互いに分離することにより、共通要因又は従属要因によって同時にその機能が損なわれないことをいう。
(解説始まり)
3 第2項第18号に規定する 「共通要因」 とは、 二つ以上の系統又は機器に同時に作用する要因であって、例えば環境の温度、湿度、圧力又は放射線等による影響因子、系統若しくは機器に供給され る電力、空気、油、冷却水等による影響因子及び地震、溢水又は 火災等の影響をいう。
(解説終わり)
(全交流動力電源喪失対策設備)
第十四条発電用原子炉施設には、全交流動力電源喪失時から重大事 故等に対処するために必要な電力の供給が交流動力電源設備から 開始されるまでの間、 発電用原子炉を安全に停止し、 かつ、 発電 用原子炉の停止後に炉心を冷却するための設備が動作するととも に、 原子炉格納容器の健全性を確保するための設備が動作するこ とができるよう、 これらの設備の動作に必要な容量を有する蓄電 池その他の設計基準事故に対処するための電源設備 (安全施設に 属するものに限る。 ) を設けなければならない。
(保安電源設備)
第三十三条 発電用原子炉施設には、全交流動力電源喪失時から重大事故等に対処するために必要な電力の供給が交流動力電源設備から開始されるまでの間、 発電用原子炉を安全に停止し、 かつ、 発電 用原子炉の停止後に炉心を冷却するための設備が動作するととも に、 原子炉格納容器の健全性を確保するための設備が動作するこ とができるよう、 これらの設備の動作に必要な容量を有する蓄電 池その他の設計基準事故に対処するための電源設備 (安全施設に 属するものに限る。 ) を設けなければならない。発電用原子炉施設は、重要安全施設がその機能を維持するために必要となる電力を当該重要安全施設に供給するため、 電力系統に連系したものでなければならない。
7非常用電源設備及びその附属設備は、多重性又は多様性を確保し 、 及び独立性を確保し、 その系統を構成する機械又は器具の単一 故障が発生した場合であっても、 運転時の異常な過渡変化時又は 設計基準事故時において工学的安全施設及び設計基準事故に対処 するための設備がその機能を確保するために十分な容量を有する ものでなければならない。 (解釈)
第7項に規定する「十分な容量」とは、7日間の外部電源喪失を 仮定しても、非常用ディーゼル発電機等の連続運転により必要と する電力を供給できることをいう。非常用ディーゼル発電機等の 燃料を貯蔵する設備(耐震重要度分類Sクラス)は、7日分の連 続運転に必要な容量以上を敷地内に貯蔵できるものであること。
(解釈終わり)
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